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IASBは改訂概念フレームワークを公表する

IAS Plus 2018.03.29

国際会計基準審議会(IASB)が公表した改訂「財務報告に関する概念フレームワーク」は、測定、認識の中止、表示及び開示の新しいガイダンスとともに、改定された資産と負債の定義も含んでいる。

国際会計基準審議会(IASB)は、改訂「財務報告に関する概念フレームワーク」を公表した。これには、測定、認識の中止、表示及び開示に関する新しいガイダンスとともに、改訂された資産と負債の定義も含まれている。プロジェクトが2004年に最初に立ち上げられた際に当初意図されていたように、新しい概念フレームワークは、文書の実質的な改訂を構成するものではない。その代わり、IASBはこれまで扱っていない、または対処する必要がある明確な欠陥を示しているトピックに焦点を当てている。
 

背景

「概念フレームワーク」は、1989年に導入されて以来、大部分は変更されていない。2004年に、IASBと米国財務会計基準審議会(FASB)は、概念フレームワークを見直し改訂することを決定した。しかし、優先順位を変更し、当初の共同プロジェクトのフェーズA(目的及び質的特性)のみを2010年9月に最終化し、既存のフレームワークに第1章及び第3章として導入した後、2010年にプロジェクトの進捗の遅滞によりプロジェクトを中止するに至った。フェーズD(報告企業)は、ディスカッション・ペーパーと公開草案が公表されたが、最終化はされなかった。両審議会は、かなり広範にフェーズB(構成要素及び認識)及びC(測定)を議論したものの、協議文書は公表されず、フェーズE(表示及び開示)、F(目的及び位置づけ)、G(非営利企業への適用)、H(残りの論点)は大部分が手をつけられなかった。
2011年のアジェンダ・コンサルテーションでは、多くの参加者が、多くの現行のプロジェクトで、多数のオープンとなっている概念上の論点に直面していることを考慮し、概念フレームワーク・プロジェクトを再開し最終化することをIASBに求めた。その結果、IASBは2012年9月に、本プロジェクトを再度アジェンダに正式に追加した。今回はIASBのみのプロジェクトであり、フレームワークの実質的な改訂を目的とするものではないが、これまで扱っていない(例えば、表示及び開示)、または対処する必要がある明確な欠陥を示しているトピックに焦点を当てている。最初のステップとして、2013年7月にフレームワーク・プロジェクトのすべての側面を対象とするディスカッション・ペーパー が、続いて2015年5月に包括的な公開草案(デロイト トーマツのWebサイト※1)が公表された。
 

概念フレームワークの主な概要

2018概念フレームワークは位置付けについての最初の説明および概念フレームワークの目的、8つの章および付録から構成されている。
 

トピック
  目的及び概念フレームワークの位置付け
一般目的財務報告の目的
有用な財務情報の質的特性
財務諸表と報告企業
財務諸表の構成要素
認識及び認識の中止
測定
表示及び開示
資本及び資本維持の概念
付録 用語集



各章の主な内容は以下に要約される。

目的及び概念フレームワークの位置付け

最初の章は、概念フレームワークの目的が、首尾一貫した概念を基礎とするIFRSを開発及び改訂する際にIASBを支援すること、基準が扱っていないまたは会計方針に選択肢がある領域について、作成者が首尾一貫した会計方針を策定することを支援すること、そしてすべての関係者にIFRSを理解し解釈するのを支援することであると記載している。概念フレームワークが特定のIFRSに優先するものでないことは、維持されている。IASBがフレームワークと矛盾する新しいまたは改訂された基準等 を公表することを決定した場合、IASBはその事実を強調し、離脱の理由を説明する。

第1章-一般目的財務報告の目的

これは、2010年にFASBとの共同プロジェクトの一部として最終化された2つの章の最初の章であるため、変更は限定的である。この章は、一般目的財務報告の目的が、現在の及び潜在的な投資者、融資者及び他の債権者が企業へ資源の提供に関する意思決定を行う際に有用な、報告企業についての財務情報を提供する ことであるとしている。これは、企業の経済的資源と報告企業に対する請求権に関する情報とともに、報告企業の経済的資源及び請求権を変動させる取引及び他の事象の影響に関する情報として識別される。 新たにこの章では、情報が、利用者が企業の経済的資源に係る経営者の受託責任を評価するのに役立つものであることを強調している。

第2章-有用な財務情報の質的特性

これは、2010年にFASBとの共同プロジェクトの一部として最終化された2つの章の2番目の章(2010年概念フレームワークの第3章として公表)である。やはり、変更は限定的である。この章では、有用な財務情報の基本的な質的特性(目的適合性及び忠実な表現)と補強的な量的特性(比較可能性、検証可能性、適時性及び理解可能性)を説明し、コストの制約を言及している。重要性は、目的適合性の企業固有の一側面である。本章では、慎重性の概念の明示的な言及を再導入しており、慎重性の行使は中立性を支えるとしている。慎重性は、不確実性の状況下で判断を行う際に警戒心を行使するものとして定義されている。新しいものとして、忠実な表現は、法的形式のみを示すのではなく経済現象の実質を示すことを意味することを明確化している。

第3章-財務諸表と報告企業

この章は、財務諸表の目的(財務諸表利用者が企業の将来の正味キャッシュ・フローの見通しを評価し、企業の資源に係る経営者の受託責任を評価する際に有用である、企業の資産、負債、資本、収益および費用についての情報を提供すること)を記述し、継続企業の前提を示している。ここでは2つの計算書のみを明示的に記述している、すなわち、財政状態計算書および財務業績計算書(後者はこれまでの包括利益計算書)であり、残りは「その他の計算書および注記」である。本章では、財務諸表は所定の期間について作成され、比較情報と一定の状況下で将来予測的な情報を提供することを示している。概念フレームワークにとって新しいことは、報告企業の定義と報告企業の境界である。本章では、一般的に連結財務諸表は、非連結財務諸表よりも財務諸表利用者に有用な情報を提供する可能性が高いというIASBの確信も記載している。

第4章-財務諸表の構成要素

この章の主な焦点は、資産、負債、持分ならびに収益および費用の定義に関するものである。定義を以下に引用する 。

資産-資産とは、企業が過去の事象の結果として支配している現在の経済的資源である。経済的資源とは、経済的便益を生み出す潜在能力を有する権利である。
負債-負債とは、企業が過去の事象の結果として経済的資源を移転する現在の義務である。
持分-持分とは、企業のすべての負債を控除した後の資産に対する残余持分である。
収益-収益とは、持分の増加を生じる資産の増加または負債の減少(持分請求権の保有者からの拠出に関するものを除く)である。
費用-費用とは、持分の減少を生じる資産の減少または負債の増加(持分請求権の保有者への分配に関するものを除く)である。

新しいことは、経済的資源の独立の定義を導入し、経済的便益の将来フローへ参照を、資産および負債の定義の外に移動したことである。単に「資源」でなく「経済的便益」という表現は、IASBはもはや資産を物理的実体 としてではなく権利のセット として考えていることを強調している。資産および負債の定義も、もはや「期待される」イン・フローまたはアウト・フローを参照していない。かわりに、経済的資源の定義は、経済的便益を生み出す/移転することを要求する負債/資産の潜在能力を参照している。負債と持分の区分は新しいフレームワークの一部ではないが、資本の特徴を有する金融商品に関するIASBのリサーチ・プロジェクトに移管されている。

第5章-認識および認識の中止

概念フレームワークは、資産、負債または持分の定義を満たす項目のみが財政状態計算書に認識され、収益または費用の定義を満たす項目のみが財務業績計算書に認識されると記述している。しかし、この認識は2つの要件に左右される。すなわち、その認識が、財務諸表利用者に、(1)資産または負債、および収益、費用または持分の変動についての目的適合性のある情報、及び(2)資産または負債、および収益、費用または持分の変動の忠実な表現を提供することである。フレームワークは、コストの制約についても記述している。フレームワークにとって新しいことは、認識の中止の議論である。フレームワークに示されている認識の中止の要求事項は、2つの目的により導かれている。すなわち、認識の中止となる取引または他の事象の後に保持される資産及び負債が、忠実に表示されなければならず、また、当該取引または他の事象の結果としての資産及び負債の変動も忠実に表示されなければならない。本フレームワークは、両方の目的を達成する可能性がない場合の代替案も記載している。

第6章-測定

この章は、異なる測定基礎(歴史的原価および現在価値(公正価値、使用価値/履行価値および現在原価))、それらが提供する情報、およびそれらの長所と短所を記述している。現在原価は、学術文献にて広く主張されてきたことから新たに「概念フレームワーク」に導入されたものである。様々な測定基礎が提供する情報を概観する表が提供されている。本フレームワークは、測定基礎を選択する際に考慮すべき要因(目的適合性、忠実な表現、補強的な質的特性およびコストの制約、当初測定に固有の要因、複数の測定基礎)を設定し、財務報告の目的、有用な財務情報の質的特性及びコストの制約の考慮が、異なる資産、負債ならびに収益及び費用項目に対する異なる測定基礎の選択をもたらす可能性が高いことを指摘している。本フレームワークは、特定の測定基礎がいつ適切になるかについての詳細なガイダンスは提供していない。なぜなら、特定の測定基礎が適切であるかは事実と状況により異なるからである。持分合計は直接的に測定されないものの、持分について、本フレームワークはいくつかの限定された議論を提供している。依然、本フレームワークでは、有用な情報を提供するために、直接に個々の持分のクラスまたは持分の構成要素を測定することが適切である場合があることを維持している。

第7章-表示及び開示

この章では、本フレームワークは財務諸表に含まれる情報を決定する概念と、その情報の表示及び開示方法について議論している。包括利益計算書は、新たに「財務業績計算書」と名付けられているが、この計算書が単一の計算書と2つの計算書のいずれかで構成されるのかはフレームワークでは特定しておらず、単に純損益についての合計または小計を提供しなければならないことのみを要求している。また純損益計算書は、報告期間の企業の財政業績についての情報の主要な源泉であり、「例外的な状況」においてのみ、収益または費用がその他の包括利益に含まれることをIASBは決定するかもしれないことが記述されている。注目すべきは、本フレームワークでは純損益を定義していないため、何が純損益に含まれ、何がその他の包括利益に含まるべきかに関する質問は未回答のままとなっている。

第8章-資本および資本維持の概念

この章の内容は現行の概念フレームワークから引き継がれており、(貨幣資本と実体資本の)資本の概念、(貨幣資本と実体資本の)資本維持の概念、利益の決定とともに資本維持修正について議論している。IASBは、資本と資本維持の概念の議論の更新はフレームワークの完了を著しく遅らせると決定した。IASBは、このような改訂が必要であると考える場合には、将来、資本維持の記述と議論を改訂することを検討するかもしれない。

「概念フレームワーク」には、発効日が記載されておらず、IASBはこれを即時適用する予定である。
 

概念フレームワークへの参照

改訂概念フレームワークとともにIASBは、「IFRS基準における概念フレームワークへの参照の修正」も公表した。本文書には、IFRS第2号、IFRS第3号、IFRS第6号、IFRS第14号、IAS第1号、IAS第8号、IAS第34号、IAS第37号、IAS第38号、IFRIC第12号、IFRIC第19号、IFRIC第20号、IFRIC第22号とSIC第32号の修正が含まれている。すべての修正ではないが、これらが改訂「概念フレームワーク」を参照するように、フレームワークからの参照および引用について基準を更新している。そのうちいくつかの基準等はどの版の概念フレームワーク(2001年にIASBが採用した国際会計基準委員会(IASC)のフレームワーク、2010年のIASBのフレームワーク、または2018年の新しい改訂フレームワーク)を参照しているかを示し、または基準における定義が改訂概念フレームワークで開発された新しい定義に更新されていないことを示すようにのみ更新されている。

本修正は、2020年1月1日以後開始する事業年度から適用される。


※1≫ IFRS in Focus「IASBが改訂概念フレームワークの公開草案を公表」(デロイト トーマツのWebサイト)


さらなる情報

IASBウェブサイトのプレスリリース(IASBのWebサイト-英語)
IASBのウェブサイトのfeedback statement(240KB,PDF:IASBのWebサイト-英語)
新フレームワークに関するFactsheet(123KB,PDF:IASBのWebサイト-英語)
概念フレームワーク・プロジェクトに関するIAS Plusのページ(IAS Plus-英語)
EFRAGのステイタスレポート(IAS Plus-英語)
ASBJウェブサイトのIASBのリリース(ASBJのWebサイト)

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