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IASBが、資本の特徴を有する金融商品についてのディスカッション・ペーパーを公表

IAS Plus 2018.06.28

IASBは、現行IAS第32号の分類を根本的には変更しない、タイミングと金額の2つの特徴を基礎とした金融負債と資本性金融商品の分類原則を定義するディスカッション・ペーパー「資本の特徴を有する金融商品」を公表した。コメント期間は、2019年1月7日に終了する。

国際会計基準審議会(IASB)は、ディスカッション・ペーパーDP/2018/1「資本の特徴を有する金融商品」を公表した。本ディスカッション・ペーパーは、現行のIAS第32号の分類結果を根本的に変更することなしに、金融負債と資本性金融商品の分類についての原則を定義している。IASBが選好するアプローチ案は、タイミングと金額の2つの特徴を基礎とし、特定の金融負債からの費用及び収益のその他の包括利益における独立表示及び開示を通じた追加の情報の提供が付属している。コメント期間は、2019年1月7日に終了する。

背景

資本の特徴を有する金融商品についてのプロジェクトは、当初、負債と資本の区分を取り扱うIASBとFASBの共同プロジェクトとして開始された。共同プロジェクトは、2008年2月に公表されたディスカッション・ペーパー「資本の特徴を有する金融商品」(ASBJのWebサイト-※1)となったが、2010年11月の合同会議において、IASBとFASBは本プロジェクトのさらなる作業を延期することを決定した。2012年12月、アジェンダ協議2011年(ASBJのWebサイト-※2)への対応の一環として、IASBは、IASBのみのリサーチ・プロジェクトとして本プロジェクトを正式に再開した。

主要な目的は、金融商品を資本または負債商品のいずれとして分類するべきかについての特徴を識別することである。どのため、本プロジェクトは、IAS第32号「金融商品・表示」の現行の要求事項を改善することができるかどうかを探求している。IASBは、表示及び開示の要求事項も検討した。

本プロジェクトは、「概念フレームワーク」と関連しており、負債と資本の区分をめぐる問題の複雑性により「概念フレームワーク」を改訂するプロジェクトからこれを除外することとなった。2018年3月に公表された改訂フレームワーク(デロイト トーマツのWebサイト-※3)には、したがって、改訂された負債の定義と新しいサポートするガイダンスが含まれているが、持分(資本)の定義は変更されておらず、本リサーチ・プロジェクトで見直される。

 

主要な提案の要約

最初に、IASBが選好するアプローチが適用される場合、IASBは、現在のIAS第32号の分類結果の多くは変更されないものと予想している。

IASBが選好するアプローチ案に従って、金融負債の特徴が満たされない場合、資本は引き続き残余である。そのため、契約上の条項に以下の回避できない債務が含まれる場合、金融商品は金融負債に分類しなければならない。

(a) 清算時以外の特定の時点で現金または他の金融資産を移転する。(タイミングの特徴
及び/または
(b) 企業の利用可能な経済的資源と独立の金額(金額の特徴

タイミングの特徴の分析は、企業が満期においてその債務を満たすのに必要な経済的資源を保有しているのかどうか、特定の時期における経済的資源の必要性を含む、流動性とキャッシュ・フローの評価を可能にする。時期の特徴は、例えばクーポン日または金利支払日のような異なる日である固定日として特定することができる。

一方、金額の特徴は、貸借対照表のソルベンシー及びリターンの評価を支援する。これは、企業が、金額の観点から債務を満たすために十分な経済的資源を保有しているかどうかの問題に特に関連する。発行者の利用可能な経済的資源の価値の変動が債務の金額を限定しないことが、金額の特徴の中心である。単純な例としては、満期においてローンを支払う債務がある。借手がどのように経済的資源を発展させているかに関係なく、この債務には価値があり、金額に関するものである。そうであっても、債務の金額が変動する場合もある。例えば名目上の金額が為替レートにより変動する場合が該当する。

IASBの見解では、IAS第32号においてすでに知られているコンポーネント・アプローチは、資本と負債の両方の要素を含む複合金融商品(compound financial instruments)について、維持するべきである。そのため、デリバティブではない金融商品の発行者は、それが負債と資本の双方の要素を含んでいるかどうかを評価しなければならない。

IAS第32号におけるプッタブルの例外によるプッタブル金融商品は、タイミングの特徴と金額の特徴を伴うIASBの選好するアプローチを適用する場合、金融負債の定義に該当する。そのため、プッタブルの例外は、IASBの選好するアプローチにおいて引き続き要求されることとなる。

企業自身の資本に対するデリバティブは、その全体について分類されることになる。そのようなデリバティブは、その全体について、資本性金融商品、金融資産または金融負債に分類される。交換の個別のレグは、別個に分類されない。企業自身の資本に対するデリバティブは、以下の場合には金融資産または金融負債に分類される。

(a)デリバティブが、清算時以外の特定の時点において純額について、企業に現金または他の金融資産を引き渡すことを要求する、及び/または現金を受け取る権利を含んでいる。(タイミングの特徴)
(b) デリバティブの「純額」が、企業の利用可能な経済的資源に独立した変数に影響される。(金額の特徴)

選好するアプローチ案は、非支配株主持分(NCI)プットを含む償還の債務、及びデリバティブ要素を含む複合金融商品(例、転換社債)について、首尾一貫した会計処理を要求している。首尾一貫した負債と資本の分類が類似する契約上の権利及び義務について達成されるため、IASBは、これを財務諸表の有用性の改善と考えている。

IASBの見解では、他のIFRSの基準における現在の表示及び開示の要求事項が流動性及びキャッシュ・フローの評価を促進する十分な情報を提供しているため、タイミングの特徴についての追加情報は不要である。一方、金額の特徴についての追加開示は、財務諸表の利用者により包括的な情報を提供することが要求される。ソルベンシー及びリターンの評価を促進するために、より詳細な内訳が、貸借対照表、損益計算書及び再評価剰余金(その他の包括利益)について要求される。IASBは、部分的に独立するデリバティブ(partially independent derivatives)とともに、企業の利用可能な経済的資源に依存する金融負債及びデリバティブ金融資産またはデリバティブ金融負債からの収益及び費用について、その他の包括利益において独立の開示を提案している。これらの金額は、事後に純損益に振り替えられない。

さらに、ディスカッション・ペーパーは、清算事象における金融負債と資本性金融商品の順位付けのような、発行した金融商品の特徴についてのより包括的な情報を提供することを提案している。

ディスカッション・ペーパーの付録には、IASBが議論した2つの代替的なアプローチ(いずれも、2つの特徴のうち1つのみを基礎とする)の議論、及び選択された金融商品の分類についてのIAS第32号とIASBが選好するアプローチにおける比較が含まれている。

 


さらなる情報
下記リンクを参照:

IASBのプレスリリース(IASBのWebサイト-英語)
IASBプレスリリースの日本語訳(ASBJのWebサイト)
ディスカッション・ペーパーDP/2018/1「資本の特徴を有する金融商品」(IASBのWebサイト-英語)
資本の特徴を有する金融商品プロジェクトに関するIAS Plusのページ (IAS Plus-英語版)

 

※1》「IASB、資本の特徴を有する金融商品に関するディスカッション・ペーパーを公表する」(ASBJのWeb サイト)
※2》「IASBが、3年ごとの公開協議の結論を受けての将来の作業プログラムを策定」(ASBJのWeb サイト)
※3》「IFRS in Focus 2018.05.14「IASB が、改訂版の「概念フレームワーク」を公表」」(デロイト トーマツのWebサイト)

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