ナレッジ

IASB、料金規制対象活動に関する新基準を提案  

IAS Plus 2021.01.28

2021年1月28日、IASBは、IFRS第14号「規制繰延勘定」を置き換えることを意図する、新基準「規制資産及び規制負債」の公開草案を公表した。コメントの提出期限は、2021年6月30日である。

国際会計基準審議会(IASB)は、IFRS第14号「規制繰延勘定」を置き換えることを意図する新基準「規制資産及び規制負債」の公開草案を公表した。コメントの提出期限は、2021年6月30日である。


背景

IASBは、すでに供給されている財またはサービスの結果として顧客に請求する将来の料金を決定する際に、料金規制対象企業に対して、金額を増加する増分の権利及び金額を減額する増分の義務に関する情報を提供することを要求する会計モデルを開発している。 

現在、料金規制対象活動に関する会計を取り扱う IFRS における具体的なガイダンスはなく、企業は、料金規制の影響を報告するために、異なる会計モデルを使用している。その結果、異なる国及び企業間の料金規制の影響を比較し、理解することは困難である。

本日公表された公開草案は、2014年9月に公表され、顧客が料金規制の対象である財またはサービス企業から購入する以外に選択肢がほとんどまたは全くない特定のタイプの料金規制を検討したディスカッション・ペーパーDP/2014/2「料金規制の財務上の影響の報告」(デロイト トーマツのWebサイト-※1)に続くものである。

DP/2014/2 の公表の前に、IASB は2014年1月に、IFRSをまだ適用していないが従前GAAPの下で規制繰延勘定残高を認識している料金規制対象企業に対して、短期的で暫定的な解決策を提供する限定的な範囲の基準であるIFRS第14号「規制繰延勘定」を公表した。これは、ガイダンスの欠如がそのような企業にとってIFRS基準の適用の障壁である可能性があるという懸念に対処するためのものである。本公開草案の確定後、IFRS第14号は廃止される。

 

主な提案内容

公開草案ED/2021/1「規制資産及び規制負債」の主な提案内容は、以下のとおりである。

  • 目的:新基準は 、規制資産及び負債に関する新しい包括的会計モデルを導入することにより、IFRS第14号「規制繰延勘定」 を置き換える。
  • 範囲:本基準は、企業が、顧客に提供する財またはサービスに対して請求できる規制料金を決定する、規制上の取決めの当事者である場合に適用される。
  • 認識:ある期間に提供された財またはサービスに対する合計許容報酬の一部または全部が、異なる過去または将来の期間に顧客に請求されるような方法で規制料金が決定される場合に、規制資産及び負債が生じる。規制資産及び負債を認識することは、規制収益及び費用につながる。
  • 測定:規制資産及び負債は歴史的原価(historical cost)で測定され、将来のキャッシュ・フローの金額と時期の更新された見積りを使用することにより事後測定について修正される。規制資産または負債の見積り将来キャッシュ・フローは、規制金利を使用して現在価値に割引かれる。当初認識の後、規制資産または負債の帳簿価額は、各報告期間の末日に存在する条件を反映するために、各報告期間の末日に更新される。
  • 表示: 財務業績の計算書において、企業は、すべての規制収益及び費用を、収益のすぐ下の独立の表示科目として表示する。財政状態計算書において、企業は規制資産及び負債についての表示科目で表示する。
  • 開示:公開草案には、これらの目的を達成するための、いくつかの開示目的及び詳細な要求事項が含まれている。

コメントの提出期限は、2021年6月30日である。


代替的見解

公開草案の結論の根拠には、メアリー・トカー理事の代替的見解が含まれている。トカー氏は、企業の収益と費用との関係の理解に焦点を当てること、規制収益及び規制費用の特定の項目をその他の包括利益に表示する、及び関連負債及び関連資産のIFRSに基づく測定を参照して一部の規制資産及び規制負債を測定するという関連する提案のため、公開草案の公表に反対した。彼女はまた、本基準の範囲の提案にも同意していない。


発効日及び経過措置

IASBは、その再審議の完了時にのみ発効日を決定するため、公開草案には発効日案は含まれていない。現在、本基準は、最終版として公表後、約18か月から24か月後に発効する予想である。
本基準は、1つの経過措置とともに遡及的に適用され、早期適用は認められる。

 

 さらなる情報

IASBのプレスリリース(IASBのWebサイト-英語)
公開草案へのアクセス(PDF:299KB- IASBのWebサイト-英語)
インクルージョンの基礎へのアクセス(代替的見解を含む)(PDF:354KB-IASBのWebサイト-英語)
設例へのアクセス(PDF:354KB-IASBのWebサイト-英語)
IASBのSnapshotドキュメント提案の要約(PDF:234KB-IAS Plus-英語)
》IAS Plusのプロジェクト・ページ料金規制対象活動 -包括的プロジェクト(IAS Plus-英語)


※1》「IFRS in Focus-IASBが、料金規制に関するディスカッション・ペーパーを公表」(デロイト トーマツのWebサイト)

 

 

 

 

 

 

お役に立ちましたか?