ナレッジ

ISSBの気候関連開示の公開草案

IAS Plus 2022.03.31

ISSBの議長及び副議長は、TRWGのプロトタイプを基礎とする公開草案「気候関連開示」を公表した。コメント提出の期限は、2022年7月29日である。

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の議長と副議長は、同じ名称の技術的準備ワーキング・グループ(TRWG)のプロトタイプを基礎とする公開草案「気候関連開示」を公表した。成果物としての基準は、ISSBの最初のテーマ別の基準となるコメント提出の期限は、2022年7月29日である。
 

背景

2021年11月(デロイト トーマツのWebサイト-※1)、IFRS財団は、投資者の情報ニーズを満たす高品質なサステナビリティ開示基準の包括的なグローバルのベースライン開発の任務を負う新しい国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の創設を発表した。

技術的準備ワーキング・グループ(TRWG)は、ISSBの開始を容易にするために2021年3月(デロイト トーマツのWebサイト-※2)に創設された。ISSBの組成の発表と同時に、TRWGは「気候関連開示のプロトタイプ」(デロイト トーマツのWebサイト-※3)を公表した。

2022年3月の臨時会議において、デュー・プロセス監督委員会(DPOC)は、ISSBが定足数に達する前に、TRWGのプロトタイプを基礎とするISSB議長と副議長が、公開草案「気候関連開示」を公表することに反対しないことを確認した。

本日公表されたサステナビリティ関連の開示に関する全般的な要求事項に関する基準案は、サステナビリティ関連開示に関するの全般的要求事項をカバーする基準の公開草案(デロイト トーマツのWebサイト-※4)を伴っている。

主要な提案

公開草案ED/2022/S2「気候関連開示」における主要な提案は、プロトタイプの提案を反映し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標のTCFDの4つの柱により構成されている。いくつかの開示要求の追加とともに、特定性及び明確性の改善のために、いくつかの変更が行われている。1つの顕著な変更は、特定の法域に参照していた指標の国際化の考慮である。提案は、気候関連開示の以下の側面をカバーしている。

  • 目的: 本基準の目的案は、企業の一般目的財務報告の利用者が、企業の企業価値に対する重要な気候関係のリスク及び機会の影響を評価することができ、どのように企業の資源の利用が重要な気候関連リスク及び機会への企業の対応をサポートするかを理解することができ、また重要な気候関連リスク及び機会に適応する企業の能力を評価することができるような、気候関連のリスクと機会に対するエクスポージャーに関する情報を開示することを企業に要求することである。
  • 範囲: 本基準は、物理的リスク及び移行リスクを含む、企業が晒される気候関連のリスク、企業が利用できる気候関連の機会に適用される。
  • ガバナンス: 基準案により、企業は、気候関連のリスクと機会をモニタリング及び管理するために使用するガバナンスのプロセス、コントロール及び手続を、一般目的財務報告の利用者が理解できるようにする情報を開示する。これには、気候関連リスク及び機会を監督するガバナンス機関に関する情報、気候関連リスク及び機会に関する経営者の役割の記述が含まれる。
  • 戦略: 企業は、気候関連のリスク及び機会に対処するための戦略を、一般目的財務報告の利用者が理解できるようにする情報を開示する。これには、以下の情報が含まれる。
    ・ビジネス・モデル、戦略及びキャッシュ・フロー、ファイナンスへのアクセス及び資本のコストに影響を与えることが合理的に見込まれる重要な気候関連リスク及び機会
    ・重要な気候関連リスク及び機会のビジネス・モデル、バリュー・チェーン、戦略及び意思決定、財政状態、財務業績およびキャッシュ・フローに与える影響
    ・重要な物理的気候リスク及び重要な移行リスクに対する戦略の気候のレジリエンス(弾力性)
  • リスク管理: 企業は、気候関連のリスクがどのように識別、評価、管理されているかを、一般目的財務報告の利用者が理解できるようにする情報を開示する。これには、以下に関する情報が含まれる。
    ・気候関連リスク及び機会、及びリスク管理目的での気候関連リスクを識別するのに使用するプロセス
    ・気候関連の機会を識別し、評価し、優先順位付けをするのに使用するプロセス
    ・気候関連リスクをモニタリングし、管理するために使用するプロセス
    ・気候関連リスクの識別、評価及び管理プロセスが、企業の総合的なリスク管理プロセスに及び企業の総合的な管理システムに統合されている程度及びどのように統合されているか
  • 指標及び目標: 企業は、気候関連のリスク及び機会を測定、モニタリング及び管理する際の企業のパフォーマンスを、一般目的財務報告の利用者が理解できるようにする情報を開示する。これには、産業横断的指標、産業に基づく指標、目標に対する進捗を測定するために取締役または経営者が使用する他の指標、及び企業が気候関連リスクを緩和または適応するまたは気候関連の機会を最大化するために設定した目標が含まれる。それにより、一般目的財務報告の利用者は、企業がパフォーマンス及び設定した目標に対する進捗をどのように評価しているかを理解することができる。

これらの提案に対するコメントの提出期限は、2022年7月29日である。ISSBは、公開草案における提案に回答する際に、コメントレターの代替手段または追加として利害関係者を支援するサーベイも開発している。 

 

経過措置及び発効日

本基準は将来に向かって適用となる。比較情報は、企業が基準案を適用する最初の期間に開示することは要求されない。
ISSBは、公開後に発効日を決定する予定である。早期適用は認められる。
 

さらなる情報

以下のさらなる情報が、ASBJ、IFRS財団のウェブサイト及びIAS Plusから入手可能である。


プレスリリースでは、ISSBの提案について、4月28日の英国時間の午前9時と午後5時に2回のライブのウェビナーを開催することも示している。
最初の2つの公開草案の公表に加えて、ISSBは、SASB基準を踏まえて、SASBの産業別の基準開発アプローチをISSBの基準開発プロセスに組み込む計画についての文書も公表した。本文書は、基準開発に対する産業別のアプローチ、本日公表された公開草案にSASB基準を含めること、SASB基準の国際的な適用可能性を改善するコミットメント、ISSBの産業別の要求事項の出発点、および現在のSASBのプロジェクトについて議論している。本文書は、作成者及び投資者が移行フェーズにおいてSASB基準に対する全面的な支援の提供とSASB基準の使用を継続することを、ISSBが積極的に推奨することも示している。
IFRS財団のウェブサイトの本文書の全文(IFRS財団のWebサイト-英語※ 5)へのアクセス

 

※1》IAS Plus「IFRS財団は、新しいサステナビリティ基準審議会を創設する」(デロイト トーマツのWebサイト)
※2》IAS Plus「IFRS財団の評議員会は、サステナビリティ・ワーキング・グループを発表」(デロイト トーマツのWebサイト)
※3》IAS Plus「気候関連開示のプロトタイプ」(デロイト トーマツのWebサイト)
※4》「サステナビリティ報告の全般的要求事項に関するISSB公開草案」(デロイト トーマツのWebサイト)
※5》 ‘ISSB communicates plans to build on SASB’s industry-based Standards and leverage SASB’s industry-based approach to standards development'(IFRS Foundation-英語) 

お役に立ちましたか?