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勝ち組企業は事業を売っている

記事:事業売却(1)

セルサイドからの企業売却を考察。M&Aが行われる際に「買収される側」は後ろ向きに捉えられがちだが、GEなど、真の勝ち組企業は様々な事業や部門を売却することで巨大コングロマリッド企業になっている。事業売却・企業売却は持続的成長の源泉となりうる。

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セルサイド視点からM&Aを考察する。

M&Aは「合併(Merger)及び買収(Acquisition)」と訳すことができる。そのため、とかく買収企業にスポットライトが当たりやすい。しかし、買い手がいるからには、当然ながらその反対側には売り手がいる。売却企業もM&Aの重要な当事者である。にもかかわらず、一般的には「M&A=買収」の印象が強い。これは、「企業買収は前向き」に対して、「企業売却は後ろ向き」と捉えられているからではないだろうか。

買収企業は、会社や事業を買収して、規模を拡大したり、新たな事業領域・地域への進出したりすることで、買収によるシナジーを発揮し、成長・発展していく。M&Aにより、大きく強くなって、グローバルで戦っていくというシナリオは、いかにも前向きだ。

では、売却企業はどうか。象徴的な言葉として、業績不振で行き詰った会社が別の会社に買われる際に使われる「身売り」、あるいは「撤退」という言葉がある。そこには、経営が行き詰まり、自力では立ち行かなくなった企業が生きながらえようとする姿が見え隠れする。「倒産して会社がなくなることに比べれば、まだまし」。事業売却・企業売却に対して、そうした負のイメージを持つ人は少なくないだろう。

確かに、長年育ててきた事業の売却は、明るい気持ちだけでできるものではない。共に働いてきた従業員を第三者に譲り渡すのは身を切られる思いだろう。こんなに業績が悪くなる前に、もっとできることがあったのではないか、と過去の判断を悔やむかもしれない。時代の変化を、景気の低迷を嘆くかもしれない。「事業売却をするような会社にはなりたくない。」そうつぶやく経営者がいてもおかしくない。

では、事業を売却する企業は負け組なのか。現在、勝ち組と言われる企業は事業買収だけで大きくなってきたのか。
答えは否である。

例えば、米ゼネラル・エレクトリック(GE)。電気機器メーカーとして創業したGEは、現在「インフラ、金融、メディア企業」を標榜する巨大コングロマリット企業である。その過程においては、様々な事業や部門を売却しており、日本においては、破綻した東邦生命保険を買収して、GEエジソン生命保険とした後、AIGに売却した一連の取引が有名であろう。
GEは現在でも、電気機器に関連する事業を営んでいるが、「インフラ、金融、メディア企業」からは、「電気機器メーカー」という印象を受けない。GEは、ビジネスの存続条件を、その分野の1位か2位であることとしていると聞くが、不採算ならば創業事業を売ることも厭わない、徹底した選択と集中の結果なのであろう。この点、多くの企業において、創業事業がコア事業であり続ける日本の状況とは大きく異なっている。

このように、勝ち組企業は、ためらうことなく不採算事業を売却し、事業の新陳代謝を行っている。彼らは拡大目的の買収M&Aを行う一方で、ノンコアと判断した事業からは速やかに手を引いているのである。(まさに、選択と集中のメリハリを効かせている。)メーカーが時代に合わせて製品ラインナップを変えていくように、事業ポートフォリオを変える。事業売却を持続的成長の源泉としているのである。

「共倒れ」という言葉がある。弱い事業に固執するあまり、強い事業に経営資源がいきわたらなくなり、結局、いずれも良い結果を残せない。こういう事態を回避する手段が事業売却への決断である。

事業売却・企業売却は決して「後ろ向き」な行動ではない。むしろ、将来の成長を見据えた「前向き」な行動として経営判断の選択肢に加えるべきものである。

※本文中の意見に関する部分は私見であり、法人の公式な見解ではない旨申し添える。 

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デロイトトーマツグループの事業売却の実績は下記をご覧ください。

■ 実績:事業売却

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