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事業売却で会社は成長する

記事:事業売却(2)

事業売却により、手にした現金をコア事業に投下できるのならば、事業売却が競争力・成長力の向上に貢献すると言えよう。事業ポートフォリオを常に見直し、成長が期待できる事業に投資を行う。成長が鈍化している事業があれば、速やかに売却・撤退して、得られた対価を成長事業に振り向ける。そうして、企業の成長にドライブをかける。このサイクルの継続こそが現在の経営者に求められるのである。

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セルサイド視点からM&Aを考察する

厳しさを増す事業環境の中で、「今後は、業界No1でなければ生き残れない。そのためには、M&Aを積極的に行う」と発言する経営者は少なくない。ここで言うM&Aは事業買収の意味で使われることが通常である。では事業売却についてはどうか。
「事業の選択と集中を行って、コア事業に特化する」は、言外に事業売却をにおわせている。しかし、「不振事業はためらうことなく売却・撤退する」と発言する経営者はほとんど見受けられない。その理由は、従業員のモチベーション維持のためかもしれないし、自社内外のしがらみがあるからかもしれない。はたまた、不振事業を立て直したい経営者の意地なのかもしれない。いずれにせよ、売却よりは買収の方が旗を振りやすいのであろう。

コア事業とノンコア事業に対する戦略
コア事業:
積極的な展開 (例)工場新設、人員増強、他社との資本・業務提携、M&A

ノンコア事業:
リストラに近い展開 (例)コスト削減、人員削減、事業分野の絞り込み、工場・拠点の統廃合

では、事業売却は競争力・成長性の向上に貢献する戦略ではないのか。
事業売却により、企業は事業を手放す。しかし、その対価として手にするものがある。それは、多くの場合、現金だ。
手にした現金をいかに扱うかは、それぞれの企業が置かれた状況により異なるが、コア事業に投下できるのならば、事業売却が競争力・成長力の向上に貢献すると言えよう。事業売却により、限られた経営資源の再配置が可能となるのである。

むしろ、将来性の低いノンコア事業を続けることは、経営資源を無駄にしているに等しい。そのような無駄な投資は、生き残りをかけた競争がグローバル規模で起こっている今日において、許されざる行為とすら言える。

事業ポートフォリオを常に見直し、成長が期待できる事業に投資を行う。成長が鈍化している事業があれば、速やかに売却・撤退して、得られた対価を成長事業に振り向ける。そうして、企業の成長にドライブをかける。このサイクルの継続こそが現在の経営者に求められるのである。

ここで、事業売却による経営資源の再配置が、企業の業績、ひいては企業価値に与える影響について検討したい。例えば、次の2つの事業を営んでいる会社を想定する。

 A 事業:コア事業。利益率5%。
 B 事業:ノンコア事業。利益率1%。

両事業の売上、利益の金額が全く同額であるならば、連結ベースの全社利益率は(5%+1%)÷2=3%と算出される。コア事業の利益率は5%であるのに、ノンコア事業を抱えているため、全社ベースでは2%も低くなっている。このことは、ノンコア事業を売却することにより、全社利益率を改善できる可能性を示唆している。

上記のように、数値に直接的な効果に加えて、次のような間接的な企業価値向上効果も期待できる。
ノンコア事業の売却は、社内外に対して、「我が社のコア事業はA事業である」という経営陣の意思を伝えるメッセージでもある。コア事業を明確にし、当該事業の将来像を具体的に描ければ、従業員のモチベーションの向上、取引先との関係強化、投資家へのアピールが期待できる。

さらには、ノンコア事業の売却は、グループマネジメントの機動性を向上させる。例えば、コア事業とノンコア事業の利益が相反する事項を決断しなくてはならない場合やノンコア事業を営む子会社に少数株主がいる場合には、関係者調整に時間を要し、迅速な意思決定が阻害される可能性がある。このような場合、刻一刻と変わる環境変化に適宜に対応できないだろうことは想像に難くない。スピードが求められる現代において、意思決定の遅れは命取りとなる。

「成長のための事業売却」という言葉が一般的になる日も、そう遠くないかもしれない。

※本文中の意見に関する部分は私見であり、法人の公式な見解ではない旨申し添える。


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