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ケースでわかる事業再生 第1回

事業再生というと財務的な痛み度合いが激しく、私的整理または法的整理における抜本的な金融支援をイメージしがちですが、そこに至る窮境原因に目を向ける必要があります。本シリーズでは、事業再生に取り組むに至った要因およびそのリカバリーの仕方についていくつかのパターンごとに事例を紹介していきます。

事業再生の類型

事業再生というと財務的な痛み度合いが激しく、私的整理または法的整理における抜本的な金融支援をイメージしがちであるが、そこに至る窮境原因に目を向ける必要がある。ひとつの側面からの見方ではあるが、(1)資産価値下落型、(2)収益力低下型、(3)(1)と(2)の複合型に整理できると思われる。それぞれのパターンの特徴は以下のとおりであり、最近では(2)と(3)のパターンが増えてきていると思われる。以下では(1)と(2)のパターンについて説明したい。

(1) 資産価値下落型

過去の過剰設備・過剰投資やコア事業以外への投機的な投資などにより、保有資産の価値が下落し、純資産の毀損と有利子負債の増大を招いているケース。典型的には、金融商品や為替デリバティブなどを購入し含み損を抱えてしまったケースや、本業以外への多角化を目指して投資用不動産を購入し、その後価値が下落したケースなどが挙げられる。このような窮境要因の結果、有利子負債が過剰となってしまっている場合が多く、純資産の毀損の程度によって取引金融機関による何らかの金融支援が必要となることが多い。なお、金融支援には、借入金元本のリスケジュール、金利減免、DDS(デット・デット・スワップ、債務の劣後化)、DES(デット・エクイティ・スワップ)、債務免除などがあり、資産処分による有利子負債の圧縮可能性や将来の収益力を勘案したうえで必要な措置が取られることになる。

(2) 収益力低下型

もともとの脆弱な経営基盤に為替動向や海外市場の変調、消費税率の引き上げなど外部環境の悪化を契機に収益力の低下が顕在化していることが中堅・中小企業中心に増えてきていると思われる。これまでのビジネスモデルが通用しない、また変化する外部環境に対して変革を怠ってきたツケが回ってきているようなケースが多く、これまでの事例からその背景には以下のような要因が隠れていると思われる。

  • どの商品(サービス)を売っていくら儲かるかなど基本となる数値管理が不十分であるため、利益回復のための効果的な施策が打てない。
  • 資金管理能力が不足しているため、売上が右肩下がりになった途端に資金繰りが苦しくなるが、金融機関からの運転資金の調達が従前どおりできている限りは危機感が薄く、結果として資金不足の要因分析が後手に回っている。
  • 経営者において自社の強み・弱みや事業環境の先行きの見通しが不十分なため、経営のビジョンや戦略が不明確で、窮境に際しての対策が場当たり的となっている。
  • 経営課題に対する改善施策を策定しても実行できるだけの人材が欠如していたり、これまでのやり方に固執する人に対し方針転換や意識改革を促すだけの人材教育ができていない。
  • オーナー企業の場合、往々にして経営陣と現場従業員の意識が乖離していて、収益改善に向けたベクトルが合わない。抽象的な改善施策に終始し、組織風土の改革など抜本策まで踏み込めないなどの問題がある。

また、足元の収益力の低下を決算操作等で覆い隠すことで問題を先送りし、結果として傷口を広げ、それがコア事業のターンアラウンドの遅れにつながるケースも多々見受けられる。仮に金融支援を受ける必要があるとしてもその前提として、コア事業の収益力回復が前提であることは言うまでもない。

本シリーズでは、事業再生に取り組むに至った要因およびそのリカバリーの仕方について、次回以降いくつかのパターンごとに事例で紹介していきたい。


デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
パートナー 伊藤雅之

(2015.09.25)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

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