ナレッジ

ケースでわかる事業再生 第13回

事業再生における収益性改善の事例

事業再生のためには窮境に陥った原因によりその対応方法も異なりますが、ほとんどのケースにおいて収益性改善が必要とされます。収益性を改善するためには、その余地がどの程度あるかを見極めるとともに、改善施策を検討・実行することができる組織力が不可欠となります。第13回では事業再生に成功した事例と上手く進んでいない事例をとおして収益性改善に取り組んだ結果と、その要因について考えていきます。

収益性向上による事業再生事例:製造業A社

製造業のA社はいわゆる長寿のファミリー企業であり、長年の内部留保により純資産は潤沢だった。ところが、社員の社内不祥事の発覚により数十億円の損失を計上せざるを得ない状況となり、他の含み損失とあわせて実質債務超過に陥った。当時のA社の経常利益水準は数億円しかなく、関係者の誰もが再生までの長い道のりを覚悟した。

A社では早速、全社を挙げて収益改善施策の実行に着手し、赤字販売の解消と人員削減以
外のあらゆるコスト削減に取り組んだ。なかでも、特に効果が大きかったのは赤字販売の解消であり、「値上げ要請に応じてもらえない場合は取引を解消する」との経営者の強い意思は従業員にも伝播して、「売上規模だけを気にする組織」から「収益性を考える組織」へと改革することに成功した。

その結果、不祥事が発覚した翌々期には過去最高益を計上するまでに収益性が改善し、その後も高い利益水準を維持し続けている。
 

成功のポイント

A社が窮境を乗り切れた主な要因を振返ってみると、

  • 赤字販売の取引が多数あったことなど、収益改善余地が十分にあったこと
  • オーナー社長の「リーダーシップ」と、従業員の「仲間意識」が強固だったこと

と考えられる。

現在では、純資産が不祥事発覚前の水準を上回って実質無借金となり、従業員に対しては通常賞与に加え業績賞与を支給するまでになった。「不祥事が発覚した時は会社がこの先どうなるのか不安だったが、不祥事を契機にして以前よりも良い会社になった」と言う役員・従業員が多数いる。

 

事業再生が上手く進んでいない事例:製造業B社

製造業のB社は大手電機メーカーに製品Xの部品を供給しており、製品Xの市場拡大とともにB社も成長してきたため、売上高に占める当該部品の割合は90%を超えていた。ところが、製品Xの代替品が登場したことにより市場自体が縮小し、売上高は5年間で10分の1にまで減少した。

B社としては危機意識を持って人員削減や設備売却などの施策を断続的に実行したものの、売上高が減少するスピードがあまりにも早く、対応が後手に回ってしまい体制を立て直す余裕はなかった。

もともと製品Xの市場拡大に合せて設備投資を行ってきたため、製品Xの市場が縮小した後は、過剰な設備と銀行借入だけが残った。工場統廃合などの抜本的な財務再構築を検討したものの実務面での課題が多いため実行には至らず、借入金の元本返済をストップして利息相当の資金を何とか捻出する状態が続いている。
 

対策の問題点

B社が事業再生できていない主な要因としては、

  • 一通りのコスト削減は実行済みであり、それ以上の収益改善余地がほとんどなかったこと
  • 大幅な人員削減を断続的に実施したことにより組織が弱体化していたこと

などが考えられる。
 

事業再生に必要な知見

収益性を根本的に改善するには、製品Xの部品に代わる売上高を創出するしかなく、営業力を強化して別製品の受注数量を増加させ、工場の生産性を改善するしかない。残念ながらB社にはそのための知見がなく、実行するための組織力も十分ではなかった。

なお、過去において暫定的なリスケジュールの金融支援を受けたものの、そのステージから脱却できていない会社は、社内に収益改善のための施策を十分に検討する知見がなく、組織も弱体化していることが多い。その場合には、ハンズオンの外部専門家を活用して営業力強化や生産性改善などに取り組むのも対応方法の一つである。

執筆者

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
リストラクチャリングアドバイザリー
シニアヴァイスプレジデント 岡野 定一

(2018.1.25)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

記事全文[PDF]のダウンロードはこちら



Download PDF:336KB

関連サービス

企業再生に関する最新情報、解説記事、ナレッジ、サービス紹介は以下からお進みください。

 企業再生:トップページ 

記事、サービスに関するお問合せ

>> 問い合わせはこちら(オンラインフォーム)から

※ 担当者よりメールにて順次回答致しますので、お待ち頂けますようお願い申し上げます。

お役に立ちましたか?