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フィデューシャリー・デューティー実践のポイント

~2017年3月公表「顧客本位の業務運営に関する原則」を踏まえて~

2017年5月17日に、株式会社セミナーインフォ主催「FINANCE FORUM ~金融規制下のガバナンスとリスク管理~」が開催され、有限責任監査法人トーマツより「フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の実践」の講演を行いました。アフターレポートを公開します。

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フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の実践

貯蓄から投資へと言われて久しいが、日本の家計金融資産の過半は未だ現預金が占めており、株式や投資信託等の割合や資産の伸び率は、米英に比べ低水準に留まっている。金融庁は、国民の安定的な資産形成の実現を重要課題と捉え、家計金融資産のポートフォリオのリバランスを目指すべく、各主体に対して様々な施策を行ってきた。

例えば、家計に対するNISAの改善普及や投資教育の促進、機関投資家や上場企業に対するスチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの制定等はその一環と言える。そして、金融機関に対して求めているのが、顧客の利益を最優先する「顧客本位の業務運営」、すなわちフィデューシャリー・デューティーの確立と定着だ。

この言葉は、2014年に金融庁が公表した金融モニタリング基本方針の中で、資産運用管理会社のみならず、商品開発や販売を行う金融プレーヤーにもその役割や責任が及ぶと明記されたことをきっかけに国内での関心が高まり、大手金融機関を中心に「宣言」等の公開が続いている。

しかし、「宣言」等を行った金融機関であっても、販売手数料目当ての回転売買や、分配金を売りにした投資信託の販売が継続している現状から、金融庁は、国民の安定的な資産形成にはつながっていないとの危機感を抱いてきた。

この状況を受け、金融庁は本年3月に「顧客本位の業務運営に関する原則」を公表した。これは、法令が事実上の最低基準となることで、形式的で横並びの状況に陥る傾向にあるルールベースでの運用ではなく、何が顧客のためになるかを金融事業者自らが真剣に考える、プリンシプルベースのアプローチの発想に基づき策定されたもので、金融事業者が具体的な施策を検討する際に軸とすべき、7つの原則が示されている。

顧客本位の業務運営の確立と定着のためには、この原則を、経営層、マネジメント層、現場等、それぞれのレベルにまで落とし込んで検討することが重要だ。

「顧客本位の業務運営に関する方針の策定・公表」の原則については、金融機関としてあるべき姿を目指すため、経営方針、行動規範、事業計画やアクションプランの作成および進捗状況の確認等、組織全体での取り組みが欠かせない。現状とのギャップ分析を行う際は、内部だけでの検討に留まらず、顧客目線からの分析も有効と言える。

また、体制を見直す場合は、既存の組織や規定に屋上屋を重ねるのではなく、効率化の視点に立ち再構築することも大切だ。

「顧客の最善の利益の追求」、「利益相反の適切な管理」、「従業員に対する適切な動機づけの枠組み」の原則については、マネジメント層による計画の策定やフォローアップ、ルールや枠組みの浸透に向けた取り組み、定着度合を評価するためのKPI設定とモニタリング等がポイントとなる。

顧客の利益を害さないという「顧客保護」の発想から、顧客の利益を増進するという「顧客本位」への発想転換を図るため、効果的な人材育成体制、規定や評価体系を構築し、組織に定着させることが求められる。

「手数料の明確化」、「重要な情報の分かりやすい提供」、「顧客にふさわしいサービスの提供」の原則については、現場の行動レベルにまで落とし込まなければならない。手数料は何に対する対価なのか、合理的な金額なのかを、顧客に説明することが当然だという意識を持ち、また、投資判断に必要な情報を特定し、顧客の理解度に合わせて確実に説明できるスキルが、今後一層求められる。

そして、これらすべてが効率的に運営されるよう、経営トップによるリーダーシップの下で、所管部を中心とするPDCAサイクルを、いかにして構築できるかがポイントとなる。

 

※上記は株式会社セミナーインフォ「FINANCE FORUM 金融規制下のガバナンスとリスク管理(アフターレポート)」からの抜粋です。他の講演を含めたアフターレポート全文は以下よりご確認ください。

 

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