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金融商品の時価に係る統制の課題と高度化対応

金融機関に期待される「時価の算定に関する会計基準」等に伴い整備された統制の高度化

「時価の算定に関する会計基準」等の適用により、金融商品の時価に係る統制の整備が進展する中、時価の定義及び算定方法の明確化、開示事項の追加に加え、金融庁から公表された「モデル・リスク管理原則」等の対応も踏まえつつ、プロセスの見直しや内部統制の構築が進められています。時価に係る統制について各要素の重要性や検討ポイントを再評価しつつ、より高度なリスク管理や業務改善の意思決定を実現することが可能となります。

国際的な比較可能性を向上させる「時価」の導入に伴い金融商品の時価に係る統制の整備が進展

2019年7月4日に企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」等(以下、「本会計基準等」)が、2021年4月1日に開始する事業年度期初から適用開始されております。本会計基準等は、国際的な会計基準との整合性を計る目的で、IFRS第13号「公正価値測定」の定めを取り入れる方針で開発されました。本会計基準等により金融商品の時価の定義及び算定方法の明確化、および開示事項の追加に伴い、図1左部のような金融商品の時価に係る様々な既存プロセスの見直しや内部統制の新規構築が行われました。一方で、図1右部に例示されるような領域の検討をプロセスを通して行うといった、より高度なリスク管理や業務改善の意思決定を実現する情報を得るための課題には十分対応できていません。

金融商品の時価に係る統制の要素ごとに検討する高度化の展望

金融商品の時価の考え方及び開示事項の明確化に加えて、金融庁から公表された「モデル・リスク管理に関する原則」やxVAの導入に伴い、内部管理目的のみならず世間からの注目度が高まっています。本会計基準等で示された時価の考え方に基づくと、時価に係る統制は「評価モデル」、「インプット・パラメータ」、「評価調整」の3要素に大別され、3つの構成要素を踏まえて「レベルの分類」が判定されます。金融商品の時価に係る統制を要素ごとに掘り下げると、図2のような内部統制が想定されますが、それぞれ検討すべきポイントは多く、高度化の余地が多いと考えられます。時価に係る統制の各要素の重要性や検討ポイントをあらためて見直すことで、図1右部に例示される領域の検討を可能にし、高度な内部管理の実現へつながります。

金融商品の時価に関する高度化対応例

本会計基準等の対応を経て構築された金融商品の時価に係る統制を改めて見直し、内部統制を含む金融商品の時価に係る課題に早い段階で対応を行い、リスク管理を高度化することが望ましいと考えられます。また、時価統制を導入した当初の担当者がいなくなり、時価統制に精通した人材が減ってしまっている状況も多く見受けられ、金融商品評価に係るナレッジの醸成、導入時からの変化に対する適時な対応が求められます。

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