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上場インフラ市場創設に向けた動きと会計上の論点

本稿では、東京証券取引所が2015年度までに上場インフラ市場を整備することが予定されている中で、インフラ投資の現状や市場整備に向けた動き、更に会計上検討が必要と考えられる論点について検討しています。

1. 背景

現在、日本においては2020年のオリンピック開催へ向けたインフラ整備や老朽化したインフラ設備の更新需要等のため、多額の資金が必要とされる状況にあり、補助金や交付金を元に自治体独自でインフラ整備を行うという従来の手法から、PPP/PFIによる民間のノウハウや資金を活用する動きへシフトしつつありますが、更なる民間資金の活用が急務となっています。

 金融・資本市場活性化有識者会合の「金融・資本市場活性化に向けて重点的に取り組むべき事項(提言)」においても、財政負担を抑える一方で、潤沢な家計の金融資産をインフラ投資等の成長資金へ向ける必要性及びインフラファイナンス市場の整備・発展を促していく必要性が記載されています。

2. インフラ投資の現状

(1)世界のインフラ投資

インフラ投資には、インフラ資産への直接投資、インフラ事業を行う企業への投資、インフラファンドへの投資等がありますが、諸外国では、上場インフラ市場が整備され、以下のとおり複数の銘柄が上場しており、その後も市場規模を拡大しています。

 また、インフラ投資は企業サイドにとっては、投資規模が多額で、回収までに長期を要することから長期資金の調達ニーズが強く、一方、投資家サイドにとっても、一般にキャッシュフローが長期的に安定しており、債券よりも利回りが高いことから、海外では年金基金によるインフラ投資も多額となっています。

 

(2)日本のインフラ投資の現状

日本では未だ上場インフラ市場は整備されておらず、日本及び世界のインフラ関連株式や債券へ投資する証券投資信託を通じた投資等が行われています。

 また、2014年2月に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が㈱日本政策投資銀行及びカナダ・オンタリオ州公務員年金基金(OMERS)との共同投資協定に基づきインフラ投資を行うことが発表されており、今後年金基金による投資が増加していくものと考えられます。

 (年金基金によるインフラ投資については、こちらもご参照下さい。)

3.上場インフラ市場創設に向けた動き

1)東京証券取引所

 

上記のとおりインフラ市場整備が急がれる中、東京証券取引所では上場インフラ市場研究会にて審議を行い、2013年5月に「上場インフラ市場研究会報告」を発表しています。これによれば、個人投資家を含めた幅広い投資者からの投資対象となるという上場市場の特性を踏まえ、投資対象資産については、以下の観点から対象範囲を整理することを検討しています。

 

1.投資適合性・・利用料金等の収受が可能か、合理的な方法等により価格算定が可能か

2.投資資産性・・運営者(オペレーター)が代替可能か

3.その他・・・・一定の公益性・公共性を有するか 

 

また、組成形態についても、J-REITとしての実績がある投資法人・投資信託をはじめ、受益証券発行信託やインフラボンド等の各種形態についても検討を行っています。

 なお、インフラ資産はオフィスビル等と比べて、法制度等に依拠していることやオペレーターの影響が強いこと、また、投資対象としての実績が乏しいこと等のリスクがあります。そのため、十分な情報開示を求めるとともに稼働状況をモニタリングすることの必要性やオペレーターの適格性を確保し、利益相反を防止する仕組みを整備することを検討しています。

 

(2)法令改正

 

投資法人及び投資信託が主として投資対象とすることができる資産は特定資産として定められていますが、インフラ資産をこれに含めるため、2014年6月に「投資信託及び投資法人に関する法律施行令の一部を改正する政令(案)」が公表され、投資信託及び投資法人に関する法律施行令、投資信託及び投資法人に関する法律施行規則、投資法人の計算に関する規則、特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令等の各法令等の改正案が提示されています。

 

具体的には、再生可能エネルギー発電設備及び公共施設等運営権(コンセッション)を特定資産に追加する案となっていますが、これらは客観的な評価が可能であり、継続的にキャッシュフローを生み出す資産であるといった要件を満たすものとして選定されています。

 

また、投資法人の計算に関する規則の改正案では、損益計算書に再生可能エネルギー発電設備の賃貸収入や公共施設等運営権の運営収入及び運営事業費用並びにこれらの売却損益等が追加されています。

 

なお、特定有価証券の内容等に関する内閣府令の改正案では、有価証券届出書に、有価証券及び不動産以外の特定資産について、当該特定資産の概況その他重要事項を分かりやすく記載することが追加されています。改正案に明示されている資産の概況や資産価値の評価に関する事項、収益の内容等とあわせて、法規制や許認可並びにオペレーターに関する事項等の開示も検討する必要があると思われますが、ガイドライン等一定の方向性を示す指針が作成されることが望まれます。

4. 会計上の論点

インフラ資産についても期末時点での市場価格や営業損益等に基づき減損の要否を判定する必要があります。市場価格については、オフィス等の不動産と同様にDCF法等の収益還元法に基づいた評価等が考えられますが、再生可能エネルギー発電設備については、固定価格買取制度による調達価格(調達期間後の単価をどのように考えるか等)や発電量の適切な見積りといった点も考慮する必要があります。

 また、透明性のある評価を実施できるよう、不動産鑑定評価基準のような評価基準が整備されることが必要と考えます。

 

 

 

(おわりに)

官民一体となって上場インフラ市場の創設と発展に尽力する必要がありますが、関連法規制の整備や会計処理・開示についても今後検討が進められていくものと思われます。

 

金融インダストリーグループ 高島 香里

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