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標準責任準備金の標準利率の算出方法の変更について

平成26年6月に金融庁の告示改正が公布され、標準利率の算出方法が変更されましたので、その変更内容とその影響について述べます。

1.はじめに

著者: 金融インダストリーグループ 大屋 雅彦

平成26年6月に金融庁の告示改正が公布され、標準利率の算出方法が変更されましたので、その変更内容とその影響について述べます。

また、本稿に記載された意見に関する部分は筆者の私見であり、所属する法人の公式見解ではないことをお断りしておきます。

2.告示改正の背景と内容

ここで言う告示改正とは平成8年大蔵省告示第48号の一部を改正する告示のことです。当該改正はパブリックコメントを経て平成26年10月1日から適用されることになりました。その背景について、金融庁の報道発表資料(平成26年4月1日)で次のように述べています。

 

【背景】

  • 平成8年の保険業法改正において、保険金の支払を確実なものとするため、責任準備金の積立方法(標準責任準備金制度)を告示において定めている。

 

  • 標準利率は、当該制度に基づいて責任準備金を計算する際に用いる運用利回りの前提であり、年1回、10年国債利回りの3年平均と10年平均のいずれか低い方を参照して決定しているところ。

 

  • 今般、制度創設当時(平成8年)と比べると、

 

一時払い終身保険など貯蓄性の高い商品の取扱いの増加、

超長期国債の流通量の増加など保険会社の運用手段の多様化、

貯蓄性の高い商品の負債特性に対応した資産運用手法(ALM)の高度化

等、状況の変化が認められることから、告示を改正し、標準利率の改定方法の見直しを行う。

 

出典:金融庁の報道発表資料(平成26年4月1日)(「保険業法第116条第2項の規定に基づく長期の保険契約で内閣府令で定めるものについての責任準備金の積立方式及び予定死亡率その他の責任準備金の計算の基礎となるべき係数の水準(平成8年大蔵省告示第48号)の一部を改正する件(案)」の公表について)

 

 

改正内容の概要は次のとおりになります。また、平成27年4月1日以降締結の標準責任準備金対象契約に対して当該改正内容が適用されます。

 

【改正内容の概要】

  • 標準責任準備金対象契約の中に「第1号保険契約」、「第2号保険契約」の契約群団(それぞれ、「一時払終身保険」、「一時払養老保険」等を想定)を定義し、それらに対しては過去3ヶ月平均と過去1年平均の国債利回りのいずれか低い方を参照することとし、特に「第1号保険契約」については10年国債利回り以外に20年国債利回りも参照することとなりました(詳細については下表をご参照ください<表1>)。

<表1>標準利率の計算方法

<表2>対象区分の利率と安全率係数

3.本件の告示改正による影響

  • 標準利率の特性

第1号保険契約・第2号保険契約について、標準利率は現行と比べて、次のような特性が現れると考えられます。

 

国債利回りデータについて、より直近のデータを参照することとなるため直近の経済環境を反映した標準利率が設定される反面、データの対象期間が従前よりも短くなるためその変動幅が大きくなると考えられます。

四半期ごとに3か月平均のデータを取得して標準利率を計算するため、季節要因の影響を受ける可能性があります。

なお、告示改正の適用は平成26年10月1日からですが、計算方法に従って国債利回りから遡及して過去の基準利率を算出した場合(下表をご参照ください<表3>)、短期的には上昇が観測されており、現行よりも一時払商品の標準利率の上昇が実現しやすいものとなっていることが考えられます。

 

  • 営業保険料算出

標準利率を改定しても営業保険料率まで改定することは法令上必要とされていませんが、標準利率の改定により保険会社の責任準備金の積立負担が増減し、その増減を吸収するために経営判断で営業保険料の料率改定を行うことが実務上想定されます。具体的には、標準利率に営業保険料算出用の予定利率を近づけることで増減を吸収します。

それゆえ、今回の改定により標準利率改定が頻繁になり、より直近の経済環境を反映して計算されるならば、一時払商品のような貯蓄性の高い商品について、生命保険会社に対して、より経済実態に近い予定利率を設定することを促し、たとえば、金利上昇による影響をすぐに予定利率上昇に反映し営業保険料が安くなるなどの効果を経て、保険契約者の利益につながる面を期待できると考えられます。

 

  • システム対応

料率改定に伴うシステム対応の頻度も高くなり、また、同一商品でも、保険期間等の契約内容に応じて第1号・第2号保険契約の適用区分が変わることがあり得るため、効率のよい契約データ管理方法についても検討が必要になることが想定されます。

 

  • ALM(*)

直近のデータ・保険期間の長短に対応したデータを使用することにより、以前よりも資産負債のマッチングが容易になることが想定されます。

(*) “Asset and Liability Management”の略で、資産及び負債の総合管理

<表3>

4. まとめ

以上のように、告示改正の概要とその影響を中心に概括しました。

一時払商品を中心に今後、予定利率の変更を伴う保険料改定が案内される可能性があるため、生命保険各社の動向に関心を持つ必要があるのではないかと考えられます。

 

以上

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