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少額短期保険業者の保険金額と保険会社化について

2005年改正保険業法、当該経過措置の終了間近

保険業法等の一部を改正する法律により、2016年3月で10年が経過します。また、現在適用されている経過措置は2018年3月末で終了予定です。今回は、少額短期保険業者の保険金額と保険会社化について詳しく解説します。

1. はじめに

保険業法等の一部を改正する法律(2005年法律第38号、以下「2005年改正保険業法」)により、2006年4月から導入された少額短期保険業制度は、2016年3月で10年が経過します。少額短期保険業者の保険金額には経過措置が適用されていますが、当該経過措置は2018年3月末で終了する予定です。(2015年12月末現在の法令に基づく)
本稿では、少額短期保険業者の保険金額と保険会社化に関して以下の項目を述べます。

(1)少額短期保険業者制度の概要
(2)少額短期保険業者の保険金額の上限(原則および経過措置)
(3)経過措置が終了した場合の少額短期保険業者の対応
(4)少額短期保険業者が保険会社化する際の課題
(5)まとめ(今後の見通し)

なお、本稿に記載された意見に関する部分は筆者の私見であり、所属する法人の公式見解ではないことをお断りしておきます。

2. 少額短期保険業制度の概要

「少額短期保険業」とは、保険業のうち、一定の事業規模の範囲内において、保険金額が少額(1被保険者あたり原則1,000万円)、保険期間1年(損害保険については2年)以内の保険の引受けのみを行う事業です。(ただし、保険金額については、経過措置があります。3.参照)

少額短期保険業制度は、前項のとおり、2005年改正保険業法で導入されましたが、その経緯については、デロイト トーマツ グループWEBサイト「認可特定保険業者の決算対応と今後について」の「2.「根拠法のない共済」から認可特定保険業者に至る道筋」をご参照下さい。 

3. 少額短期保険業者の保険金額の上限(原則および経過措置)

(出典:一般社団法人日本少額短期保険協会WEBサイト「少額短期保険業とは」に基づき筆者作成」)

4. 保険金額の経過措置が終了した場合の対応

上表のとおり、保険金額の経過措置は、2018年3月31日までの間とされています。当該経過措置は、一旦は2013年3月31日までの間とされていたものが延長されたものです。再延長の可能性もありますが、その場合は法律(2005年改正保険業法附則第16条第1項)の改正が必要となります。

経過措置が再延長されず終了した場合には、少額短期保険業者の取りうる対応としては、以下のようなものが考えられます。

(1)保険会社化(生命保険業免許または損害保険業免許を取得)
(2)原則どおりの保険金額で販売
(3)保険会社の商品とのセット販売(たとえば、保険金額1,000万円までの部分は少額短期保険でカバーし、1,000万円を超過する部分は、免責金額1,000万円の保険商品でカバーする)
 

5. 保険会社化における課題

上記4.で述べたとおり、経過措置が終了した場合には、保険会社化がその対応として考えられます。一方、最近の生命保険業免許および損害保険業免許取得事例では、準備期間(準備会社の設立から免許取得)に概ね1~2年程度は要していることから、保険会社化を目指す少額短期保険業者は、準備に着手している可能性が想定されます。(なお、2015年12月末現在、保険会社化した少額短期保険業者は1社のみ)

少額短期保険業者が保険会社化する場合、下記のような点が課題になると考えられます。

(1)資本金、会計監査人
少額短期保険業者は最低1,000万円の資本金で設立可能ですが、保険会社は最低10億円の資本金が必要で、会計監査人の設置も必要になります。(資本金3億円未満の少額短期保険業者は、会計監査人の設置が不要です。)
(2)審査
少額短期保険の商品内容でそのまま生命保険業免許または損害保険業免許を得られるわけではなく、改めて当局審査を受けることになります。
(3)保険募集人
少額短期保険募集人はそのまま生命保険募集人または損害保険代理店として認められるわけではなく、試験の受験等により所定の条件を満たしたうえで、改めて、生命保険募集人または損害保険代理店としての登録が必要となります。
(4)保険計理人
生命保険会社または損害保険会社の保険計理人の資格要件は少額短期保険業者の保険計理人より厳格です。たとえば、公益社団法人日本アクチュアリー会の準会員は、少額短期保険業者の保険計理人に就任することが可能ですが、生命保険会社または損害保険会社の保険計理人に就任することは不可能です。(公益社団法人日本アクチュアリー会の正会員であることが必要条件であるため)また、保険会社の保険計理人は、ソルベンシー・マージン比率の確認が求められる等、少額短期保険業者の保険計理人に比べ広範な役割が求められています。
(5)ERM、内部統制等
ORSA(リスクとソルベンシーの自己評価)をはじめ、保険会社には、少額短期保険業者より高度なERM(統合的リスク管理)、内部統制等の態勢構築が求められると考えられます。

6. まとめ

上記4.で述べたように、少額短期保険業者に対する保険金額の経過措置は、2018年3月に終了する可能性があり、その場合の対応として、保険会社化が考えられますが、上記5.で述べたような課題が存在します。

一方、デロイト トーマツ グループWEBサイト「認可特定保険業者の決算対応と今後について」の「6.今後の見通し」で述べたように、認可特定保険業者の法制についても、法改正(2011年5月13日施行)から、2016年5月で5年が経過することになり、見直しも含めて検討されるものと考えられます。

今後は、少額短期保険業者および認可特定保険業者の法改正の動向ならびに保険会社化する少額短期保険業者の動向が注目されるところです。
 

著者 : 有限責任監査法人 トーマツ 金融インダストリーグループ
相原 浩司

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