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フィンテック 税務上の留意点

フィンテックに関連する税制のトピック

フィンテックだけ特有の税制というものはなく、最新の税務上の取扱いや優遇措置の中からフィンテックに関連があるものを検討する必要があります。デロイト トーマツ税理士法人で金融機関のM&Aおよび組織再編等の税務を担当する長谷川芳孝と、移転価格を担当する山田真毅から解説します。

フィンテック税務に関連するトピック

昨年12月に国税庁から「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」が出されました。その中で、ビットコイン等の仮想通貨にかかる個人所得税の扱いが雑所得と
して明示されました。税率や損失の繰越ができないことなど、現行税制が新しい経済活動に追いつかない課題があるものの、今まで明示されていなかった扱いが明確になったという点はひとつの進展です。仮想通貨にかかる消費税については、去年の税制改正において、プリペイドカードと同じような決済手段として非課税取引となりました。仮想通貨の発行体については、どのように取り扱われるのかはまだ明確にはなっていません。今後、仮想通貨の業者の存在感が増すにつれ、税務の面でも話題となっていくでしょう。

フィンテック関連のサービスでは、日本に物理的に支店が所在していなくても国外からデジタルでサービスを提供できるものがあります。伝統的な税制の下では、恒久的施設が国内にないとみなされ、収益を挙げていても課税の対象とはなりません。これは世界的にも問題と見なされており、OECD(経済協力開発機構)でもBEPS(税制浸食と利益移転)プロジェクトが立ち上げられ、手当すべき問題とされています。日本でもBEPSにあわせて平成30年度税制改正において改正が予定されています。例えば海外の通販業者が日本に倉庫を持っている場合、従来のように保管渡しの場所として課税の対象にならないのは、「その活動が非居住者等の事業の遂行にとって準備的又は補助的な機能を有するものである場合に限る」ものとなりました。ロボットなどで倉庫の自動化が進み、物理的に人がほとんどいない場合でも、恒久的施設と見なす範囲を広げて対応するということです。加えて、例えば施設倉庫と販売拠点の場所を分けているような場合でも、それを一体としてとらえて補助的な機能かどうかを判断することになりました。施設が分割されていても一体としてとらえた時に補助的でなければ恒久的施設をみなし課税の対象となります。外国法人が日本で事業をする場合に、支店の有無にかかわらず、日本で挙げた収益に対しては幅広く課税するという方向での税制改正となります。

フィンテックは将来的に移転価格税制との関係が深くなってゆくものと考えられます。フィンテックによって金融業にIT産業的な要素が加わり、いわゆる無形資産の代表といえるテクノロジーが価値創造に大きく影響することになります。先ほど挙げたOECDのBEPSプロジェクトにおいては、価値創造のあるところに利益を配分すべきという原則を掲げています。バリューチェーンを分析した上で、利益の獲得に対して大きな役割を果たしているところに利益を配分しなければならないということです。さらに、利益の源泉として、無形資産と共にリスクの負担についても移転価格の算定において重視されることになり、誰が事業の利益獲得においてリスクを判断し負担しているのか、また、無形資産の開発において誰がリスクを判断し負担しているのかといったことが注目されるようになっています。例えば、海外のスタートアップを買収する場合には、そこに無形資産があれば、その対価を将来的にどう帰属させるかを検討する必要があります。フィンテックによってテクノロジーやテクノロジーのプラットフォームが収益機会の拡大といった利益の源泉となる可能性が高まりますので、移転価格税制の下でどのような税務対応をするのかといった点を前もって検討しておくことは、金融機関にとってポイントになってくるでしょう。

フィンテック投資に関連した税額控除制度

平成30年税制改正では、情報通信投資への支援を税制面からも後押ししていこうと、情報連携投資等の促進に係る税制が創設されました。いわゆるコネクティッド・インダストリーズ税制と呼ばれるもので、データ連携・利活用、セキュリティ、生産性向上といった分野について税額控除を受けることができる制度です。第四次産業革命への強化を狙っており、フィンテック分野にも関係してくるものです。大企業の税制控除はあまり例がないものですので、対象となる分野に今後設備投資の計画のある企業にとっては非常に価値のあるものとなるでしょう。税額控除を受けるためには「革新的データ活用計画」が認定される必要がありますが、対象設備の例としては、IoT関連としてデータ収集のセンサーや、自動化を可能にするロボット、サーバやAIといったデータ連携・分析に必要なシステム、サイバーセキュリティなどが含まれています。この優遇税制を受けるためには、前提として、3%以上の賃上げや最低5,000万円の投資が条件となっています。この条件を見ると、企業のキャッシュフローが増えた分については労働者に賃金として還元するか、日本国内で設備投資をするようにと、安倍内閣の目玉の施策を促す税制にもなっています。

フィンテック企業への投資ストラクチャー(インバウンド)

税制改正には、日本企業の買収についての優遇措置も含まれており、今後フィンテック関連のM&Aが活発化する中で注目しておくべきでしょう。具体的には、TOBをしやすくする税制改正となっています。今までのTOBでは、対象会社の株が買収者の株に置き換わる際に、対象会社の株について税務上は価値が実現したとみなされ、課税されていました。株主にとっては、現金流入を伴わない価値の実現であっても、現金で税金を支払う義務が生じることになっていたのです。これが、認定を受けたTOBについては、課税が繰り延べられることになります。計画の認定は経産省によって受けられます。事業としては、新市場開拓として、自動運転などの移動革命、サプライチェーンの次世代化、フィンテック、健康寿命の延伸、快適なインフラ・まちづくりなどが想定されているようです。さらに、多角化している大企業が選択と集中を目指して再編し、中核的事業を強化するといった大規模再編についても支援されます。前述のコネクティッド・インダストリーズ税制と同じで、大幅な優遇措置が取られるものの、いずれも平成33年までの期間を区切った時限立法です。特定の分野について期間内に集中的に支援しようとする政府の姿勢が表れているといえるでしょう。

フィンテック企業への投資ストラクチャー(アウトバウンド)

今後フィンテックを進めるにあたって、海外、特にアメリカのスタートアップを買収するケースが出てくることがあるでしょう。その際の税務上の留意点を見ておきましょう。アメリカではパートナーシップやLLCといった、会社法人ではなく組合となっている場合、通常は事業体への課税ではなくパートナーや組合員への課税となり、それがパススルー課税と呼ばれています。このような事業体への投資には課税上いくつかの問題があると議論されています。ひとつは、国外ではパススルーとして扱われていた事業体であっても、日本では法人扱いとなる場合があるということです。そして、その場合には外国子会社合算課税、いわゆるタックスヘイブン税制の対象になるかも議論の分かれるところです。さらに、現地でかかった税額について、日本の税金から控除する制度として外国税額控除が適用できるか、また、現地での利益を日本に配当する際、日本において源泉課税できるかということもポイントになります。また、昨年の12月22日に成立した米国税制改正の影響も見なければいけません。例えば、アメリカの法人税が大幅に減税されることで、今までタックスヘイブン扱いではなかったSPCなどへの出資が今後はタックスヘイブン扱いとなる可能性が出てきています。

パススルービークル投資についての日本での課税問題
パススルービークル投資についての日本での課税問題
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