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市場リスク管理における証券業界の動向

証券業における市場リスク管理手法の動向について

自己ポジションを用いて運用を行っている証券会社においては、大規模な損失の可能性を回避するためのリスク管理が求められる。特にマーケットの運用においては市場リスクをとっていくことになり、市場リスク管理が求められる。本稿においては、証券業における市場リスク管理手法の動向について整理する。

証券業における市場リスク管理

自己ポジションを用いて運用を行っている証券会社においては、大規模な損失の可能性を回避するためのリスク管理が求められる。特にマーケットの運用においては市場リスクをとっていくことになり、市場リスク管理が求められる。
一般の金融機関の市場リスク管理においては、バリュー・アット・リスク(VaR)が中心的な管理指標となっており、市場リスクに割り当てられた資本に対してVaRが上回らないように管理していた。
証券会社でもこのような仕組みが用いられており、管理においてVaRは重要な位置づけを占めるものと考えられた。
しかし、2007年から2008年の金融危機において、このVaRの信頼性が大きく崩れた。国際的な大規模金融機関がVaRにより管理を行っていたものの、VaRが想定しないマーケット変動が生じ、思わぬ大規模損失が発生し、経営に重大な影響を与える事態が発生した。その結果、他社との合併を余儀なくされた投資銀行もあった。
これは、VaRというのは多くの前提・仮定に基づいたモデルにより算出された1つの値であり、それのみに頼って経営を行うというのは極めて危険ということを世に知らしめた。それ以前は、VaRを積極的に管理に用いていくことが望ましいと考えられており、自己資本規制においても内部管理上のVaRを規制資本算出に用いることが可能であり、さらに一定の要件を満たした(内部モデル管理方式の採用)金融機関においては、資本を削減できるというインセンティブがあった。 

ストレステスト

金融危機後VaRに代わって注目されたのは、ストレステストであった。ストレステストは、ブラックマンデーやリーマンショックといったような過去の事象の発生、諸外国において経済状況が悪化した等の各シナリオ毎の自らのポジションへの影響を分析するものである。このような管理手法を拡充することによりVaRに頼らない市場リスク管理を進めるべきという風潮になった。ただ、ストレステストによって上記のようなシナリオに対する損失額はわかるが、そのシナリオがどの程度発生する可能性があるのかという情報は得られない。結局は、VaRもストレステストも含め、完全な管理ツールは世の中には存在しないのだから、様々な管理ツールにより総合的に管理することが重要ということになる。
また、金融危機の影響は自己資本規制比率にも及ぶ可能性がある。ポジションに乗数をかけて自己資本規制比率を算出する標準法が大多数の証券会社では用いられているが、これを見直す動きがある。この検討は銀行の自己資本比率の検討と軌を一にしており、現在は銀行系を除く大手証券会社が直接の対象として議論されているが、今後はすべての証券会社に対し影響があるかもしれない。非常に複雑な算出プロセスとなるので、そのまま国内すべての証券会社に適用するのか、(大手証券会社(最終指定親会社)を除く)国内の証券会社には適用しないのかは当局が判断することになろう。いずれにせよ、今後注視が必要な領域である。 

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