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「証券検査基本方針及び証券検査基本計画」を読み解く

内部管理態勢の高度化に活用するために

証券取引等監視委員会は毎年「証券検査基本方針及び証券検査基本計画」を公表しています。証券検査における「重点検証事項」を概説の上、内部管理態勢の高度化の観点から活用するポイントをご紹介しています。

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内部管理態勢の高度化に活用するために

証券取引等監視委員会は毎年「証券検査基本方針及び証券検査基本計画」(以下、「基本方針」という」)を公表し、「検査対象先の特性に応じた重点検証事項」を明らかにしています。

デロイト トーマツ グループでは、「基本方針」や「検査対象先の特性に応じた重点検証事項」をコンプライアンス施策、自主点検及び内部監査等(以下、「内部監査等」という)に活用し、内部管理態勢の高度化の契機とすることをお勧めしています。

本稿では特に「平成26年度証券検査基本方針及び証券検査基本計画」に記載された「重点検証事項」のうち、証券会社に係るポイントを整理しています。

①業態その他の特性に着目した検証

金融商品取引業者等の市場仲介機能に係る検証

ここでは特に市場を悪用・濫用する者の参加を未然に防止するゲートキーパーとしての機能が重要とされています。
改正犯罪収益移転防止法の施行を受け、取引時確認(特に、口座開設時の取引目的や職業確認、なりすましの疑いを検知し再確認するプロセス)及び疑わしい取引の届出の的確な履行に係る態勢の整備が求められています。
加えて、反社会的勢力との関係の遮断においては、組織的対応を基本とし、経営陣の適切な関与の下、一元的な管理態勢の構築が求められています。
また、新規上場時の公開引受に係る適切な審査態勢の機能確保も重要です。

法人関係情報の管理(不公正な内部者取引の未然防止)等に係る検証

インサイダー取引は、過去より重点検証事項として検証されている領域であるものの、直近の検査指摘事項等においても散見され、また大きなレピュテーション上の影響もあることから引き続き重要と考えられています。
上場企業による公募増資等の法人関係情報に係る登録・情報隔壁、内部者取引に関する売買の審査、情報の不適切な伝達及び利用の防止等係る態勢の整備が重要です。

公正な価格形成を阻害するおそれのある行為への対応状況の検証

インターネットやDMAを通じた電子媒体取引を取り扱う証券会社においては、顧客の注文が直接市場に取り次がれるといった特質を考慮のうえで、不公正取引の防止の観点から売買審査態勢の構築が求められます。
特に、公募増資価格の値決め日等の特定日、大引け間際等の特定の時間帯又は市場の価格形成に影響を与えるような大量の発注等局面に応じたスクリーニング態勢が重要となっています。

投資勧誘の状況に係る検証

少額投資非課税制度(NISA)の開始、高齢顧客に対する勧誘・販売に関するトラブルの発生等を受け、顧客保護の観点から、証券検査において特に重視されている項目と認識しています。また本項目は銀行窓販等の拡大により、登録金融機関においても留意することが求められます。
適合性の原則に係る態勢整備については、さまざまなガイドラインが示されているものの、各社の考えに依拠しているところが多く、法・規制や各種ガイドライン等に照らして現状が妥当であるか、内部監査等を通じ検証することが重要と考えられます。
また苦情等を収集・分析し、顧客対応、説明態勢や募集資料等の広告管理態勢の見直しにつなげるプロセスを整備することも重要と考えられます。

②内部管理態勢・財務の健全性等に係る検証

内部管理態勢等に係る検証

内部管理態勢及びリスク管理態勢の整備は、経営陣の責任であり、積極的に関与することが求められます。一方で経営陣がこれらの整備状況を把握するためには内部監査等を活用することが重要と考えられます。

システムリスク管理態勢に係る検証

個人投資家の間にインターネットを通じた証券取引やFX取引への参加が定着し、業務運営におけるITシステムへの依存度が高まる中、ITシステムの安定性の確保及び危機管理が極めて重要と考えられています。特にシステム障害への対応等は顧客取引に直接影響を及ぼすことから、顧客保護の観点からも重点的に態勢の整備を行うことが重要と考えられます。
経営陣は、誤発注等がシステムに起因する重要なリスクであること、外部委託先等の管理責任は当社にあることを認識し、ITシステムに係る投資や運営、リスク管理などに主体的に関与することが求められます。 

財務の健全性等に関する検証

顧客資産の分別管理・区分管理は、顧客保護に直結する規制であることから引き続き重視されています。また、指摘事例等においては、自己資本規制比率の算出誤りが散見される状況がありますが、経営陣は、健全性を把握する上で自己資本規制比率が正確に算出されていることが重要であることに留意し、態勢の整備を行うことが求められます。

経営陣には、ビジネスモデルに相応しい内部管理態勢やリスク管理態勢等の構築が求められますが、「証券検査基本方針及び証券検査基本計画」を踏まえた内部監査等を通じ、態勢の整備状況について検証し、内部管理態勢の高度化に活用されてはいかがでしょうか。 

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