ナレッジ

証券会社の内部監査態勢とリアルタイム性

リスク管理に寄与する内部監査

リスクの変遷が早い証券業界にあって、「リアルタイム」は、特に重要な視点であると考えています。本稿においては、内部監査態勢の重要なプロセスのうち、「リアルタイム」というキーワードに係る内部監査態勢整備上の重要なポイントを抽出し整理してみたいと考えています。

リアルタイムでの金融機関、金融システムの実態把握

「平成26事務年度金融モニタリング基本方針(監督・検査基本方針)」において、当局は、大規模証券会社グループ等に対し、「金融機関・金融市場の動向についてリアルタイムの実態把握」を行うとし、また中小の証券会社に対しても、「問題の早期発見・早期対応に努める」としています。

この視点は、リスクの変遷が早い証券業界にあって、特に重要な視点であると考えています。

また金融モニタリング基本方針では、折りに触れて内部監査態勢が触れられ、引き続き金融庁は内部監査を重視しています。

このため、本稿においては、「リアルタイム」というキーワードに係る内部監査態勢整備上の重要なポイントを抽出し、以下のように整理しています。

1. 内部監査対象領域の特定

現在の業務分掌等から業務の洗い出しを行い、今年度の内部監査対象領域としている会社が多いと認識しています。しかしながら、現在の業務分掌等に含まれていない業務、今後販売が予定されている商品、今後改正が予定されている法・規制等により新規に対応が必要な領域及び新規事業戦略により開始する施策等において、リスクが顕在化してしまうおそれがあり、リアルタイムという観点からは十分な対応ということはできません。

上記のように今後の事業環境等の変化を把握し、漏れなく内部監査対象領域として特定することは、今後、内部監査としてリスクをリアルタイムにモニタリングしていくために重要と考えます。

2. リスクアセスメント及び内部監査計画

1年に1度リスクアセスメントを実施し、内部監査計画を策定している会社が一般的だと認識しています。しかしながら内部監査計画の策定後、新たにリスクが発生し識別された場合に、このリスクに係るリスクアセスメントの実施が、リスクの顕在化後では、リアルタイムという観点からは十分な対応ということはできません。

内部監査部門としても速やかにリスクを識別し、リスクアセスメントにつなげ、そのリスクの重要度に応じて内部監査計画の見直しを行うためにも、継続的なオフサイト・モニタリングの枠組みの整備が重要であると考えます。

3. 往査(検証アプローチ)

往査における内部監査のアプローチとしては、規程・マニュアル等に記載されたルールどおりに業務が行われているかという準拠性の観点から保証を行うという手法が一般的と考えますが、新たに識別されたリスクに対しては、そもそもコントロールの設計も十分に行われていないことが予想され、規程・マニュアル等が十分に整備されていない場合が多いと認識しています。規程・マニュアル等が整備されるのを待って内部監査を実施するのでは、やはりリスクが顕在化してしまうおそれがあるためリアルタイムという観点からは十分な対応ということはできません。

このような場合には、コントロールの設計やルールの策定時に十分な検討が行われ、必要なプロセスが踏まれているかという観点で検証するほか、進行中のプロジェクト等では、情報収集に主眼をおき施策の所管部署に情報提供を行う等準拠性以外のアプローチを試みることも有効であると考えられます。

4. 監査結果報告

往査終了後、報告書の取りまとめを行うこととなりますが、記載の内容につき被監査部署や関連部門との調整を行うことが少なからずあり、重大な指摘であればあるほど、この調整に時間を要する場合が多いと認識しています。調整の結果、報告書の発行に時間を要し、経営陣に報告するのが遅くなってしまっては、その間にリスクが顕在化してしまうおそれがあり、リアルタイムという観点からは十分な対応ということはできません。

重大な指摘であれば経営陣も速やかに対応につき検討することが求められるため、調整中であることを明示しつつも報告を行うプロセスを整備することが重要であると考えられます。

5. フォローアップ

いくらリスクを早期に識別し、内部監査において指摘したとしても、被監査部署の改善に向けたアクションが早期にとられない場合にはリスクが顕在化してしまうおそれがあるため、リアルタイムという観点からは十分な対応ということはできません。

重要な指摘であれば、改善に係るアクションが適切にとられていることを確認し、その進捗状況についてモニタリングする枠組みが重要となります。

経営陣にとって、貴社の内部監査態勢がリスクに対しリアルタイムであるかを把握することは、内部監査態勢の整備状況を理解する上で大変重要と考えています。内部監査態勢の外部評価を通じ、リアルタイムの観点から内部監査態勢の整備状況を確認されてはいかがでしょうか。

お役に立ちましたか?