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シリーズ「監査報告書の透明化」(4) 我が国における対応─監査基準の改訂に向けた企業会計審議会監査部会の動向
(月刊誌『会計情報』2018年5月号)
監査報告書の記載事項である監査上の主要な事項(Key Audit Matters:KAM)の導入及び適用に当たって各国においては、監査基準及び監査実務指針の改訂が行われている。シリーズ4回目では我が国におけるKAM導入に関する監査基準の改訂に関して解説を行う。
著者:公認会計士 結城 秀彦
前回(シリーズ3回目)の「先行する各国の動向」において解説したように、監査報告書の記載事項である監査上の主要な事項(Key Audit Matters:KAM)の導入及び適用に当たって各国においては、監査基準及び監査実務指針の改訂が行われている。
我が国においても、監査報告書においてKAMの記載を求めることとするのであれば、まず監査基準の改訂を行い、これに対応した監査実務指針の改訂を図ることが必要となる。
シリーズ4回目では我が国におけるKAM導入に関する監査基準の改訂に関して解説を行う。
1.監査部会における議論と主要な論点
我が国におけるKAM導入に関する監査基準の改訂の嚆矢は、2017年6月の金融庁により公表された「監査報告書の透明化について」(http://www.fsa.go.jp/news/29/sonota/20170626.html)であり、今後の方向性として、透明化の具体的検討と大手監査法人によるKAM試行の取組みが提言され、この提言を受けて2017年10月から企業会計審議会監査部会(以下、「監査部会」という。)において、議論が進められている。
2017年10月監査部会においては、まず、監査報告書の透明化の意義・効果として、会計監査の透明性を向上させ、監査報告書の情報価値を高めることにより、(1)財務諸表利用者の会計監査や企業の財務諸表に対する理解が深まるとともに、企業との対話が促進され、(2)財務諸表利用者や監査役等が、会計監査の品質を評価するための情報となり、(3)監査人・経営者・監査役等の間のコミュニケーションの更なる充実により、コーポレート・ガバナンスの強化や、会計監査上のリスク認識の共有による適切な監査の実施につながることが確認・共有されている。そして、続いて、2017年11月から2018年1月の監査部会において、監査法人による試行の取組み結果の報告が行われ、さらに、以下の主要な論点について議論が進められている(http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/top_gijiroku.html)
- 監査報告書におけるKAMの位置付け(追記情報同様の監査意見と独立の情報提供か)
- 適用範囲・対象(会社法との関係・単体との関係)
- 企業による開示との関係(企業の開示とKAMの記載との関係・企業が開示していない事項と守秘義務との関係)
- 無限定適正意見以外の場合のKAMの記載(その要否)
- 経営者・監査役等・監査人の対応等(センシティブ情報の開示等、経営者・監査役等の対応等、監査人の対応等)
- KAMの記載以外の監査報告書の記載等の見直し(記載順序、継続企業の前提、その他の記載内容)
- 適用時期
本稿においては、紙幅の都合から、上記の論点のうち、委員から多数の言及があり、特に関心が高いと考えられる事項についてその内容を要約して紹介する。なお、以下の記載は、監査部会において行われた議論を上記の論点ごとに取りまとめたものではなく、複数の論点に亘るものを組合わせ、さらに本稿において必要と考える情報を補足して要約していることを予めお断りしておく。
※続きは添付ファイルをご覧ください。
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