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「企業会計準則 第21号 リース」の改訂公開草案

『デロイト トーマツ チャイナ ニュース』(月刊誌『会計情報』2018年6月号)

中国の会計基準設定主体である財政部は、2018年1月8日に、企業会計準則 具体準則の「第21号-リース」の改訂版の公開草案を公表しました。本稿では、本公開草案の概要、日本企業に与える影響、また中国子会社が新リース会計基準を適用するにあたっての留意事項について解説しています。

著者:公認会計士 中村 剛

1.概要

中国の会計基準設定主体である財政部は、2018年1月8日に、企業会計準則(以下、「新準則」)具体準則の「第21号-リース」(以下、「本準則」)の改訂版の公開草案(以下、「本公開草案」あるいは「本改訂準則」)を公表した。以下、本稿では、本公開草案の概要、日本企業に与える影響、また中国子会社が新リース会計基準を適用するにあたっての留意事項について解説する。

今回の「企業会計準則 第21号-リース」の改訂は、財政部から公表されている起草説明文書において、国際財務報告基準(IFRS)との同等性を維持することを目的としていることを明言しており、近年の中国企業会計準則の一連の改訂の流れに即したものである。したがって、本公開草案の内容は、次のように、「国際財務報告基準第16号 リース」(以下、「IFRS16」)の考え方を全面的に取り入れたものとなっている。

〈本公開草案の概要〉

  • リースの識別や借手と貸手の双方の財務諸表上の取扱いに関する包括的なモデルを規定している
  • リースの借手と貸手の会計モデルが非対称である
  • 借手は、短期・少額のリースなど一部の例外を除き、本準則で識別されたすべてのリースについて、オンバランス処理が要求される
  • 貸手にとっては、従来のファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分を維持したため、本改訂準則導入による影響は借手ほど重大ではない
  • 現時点で、適用時期については明言されていない

本改訂準則適用による最大の変更点は、オペレーティング・リース取引における借手側の会計処理の変更であり、その主な影響については、次のようなものがあげられる。

〈本改訂準則による借手側への主な影響〉

  • 従来、オフバランス処理されていた使用権資産、リース負債が、本改訂準則適用によりオンバランスされることにより、貸借対照表に重大な変化をもたらす可能性がある
  • 従来、オペレーティング・リース費用は期間定額により認識されていたが、本改訂準則適用後はリース負債にかかる金利費用が早めに多く認識されるため、リース期間の前半において費用負担がより重くなる
  • リース費用の表示区分は、従来、営業費用から、減価償却費と財務費用(利息費用)に変更される

以下、本改訂準則の具体的な内容について、個別に説明する。

2.適用範囲

本改訂準則は、原則として、すべてのリース取引について適用するとされているが、借手が使用許諾契約を通じて取得した映画、シナリオ、特許、著作権等については、「企業会計準則 第6号-無形資産」が適用される。また、貸手が授与する知的財産権の使用許可については、「企業会計準則 第14号-収益」が適用される。

3.リースの識別

契約の開始時に、企業は、当該契約がリース契約又はリースを含んだ契約であるか否かを評価しなければならない。特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合には、当該契約はリース又はリースを含んだ契約に該当する。

4.リースの分離

契約にリース構成部分と非リース構成部分が含まれている場合には、借手及び貸手は当該契約に含まれるリース部分と非リース部分とを区分しなければならない。

5.リース期間

リース期間は、借手が特定の資産を使用する権利を有する解約不能期間をいう。借手が当該リースを延長するオプションを有し、かつ当該オプションを行使することが合理的に確実である場合には、リース期間には当該オプションの対象期間が含まれる。また、借手が当該リースを解約するオプションを有し、かつ当該オプションを行使しないことが合理的に確実である場合には、リース期間には当該オプションの対象期間が含まれる。

6.短期リースと少額資産リース

短期リースとは、リース開始日において、リース期間が12か月を超過しないリースをいう。また、少額資産リースとは、単独の対象資産が新品としての資産時価が少額のリースをいう。短期リースや少額資産リースについては、借手は、使用権資産、リース負債を認識しないことを選択できる。

7.借手の会計処理

リース開始日において、借手はリース契約について使用権資産とリース負債を決定し、認識しなければならない。

(1) 使用権資産の取得原価は次のもので構成される。
 ①リース負債の当初測定金額
 ②リース開始日以前に支払ったリース料、ただし、受け取ったリース・インセンティブは控除する
 ③借手に発生した当初直接費用
 ④借手が、リース契約条件で要求されている資産の解体、除去等、原状回復等の際に発生することが予想されるコスト
(2) リース負債の当初測定は、リース開始日において支払われていないリース料の現在価値による。なお、現在価値の計算に際しては、リースの計算利子率を使用する必要があるが、計算利子率が入手困難な場合、借手の追加借入利子率を使用しなければならない
(3) リース開始後、借手は、企業会計準則第4号「固定資産」に従い使用権資産の減価償却を行う。なお、リース期間終了時に借手が当該資産の所有権を取得することが合理的に確実な場合には、借手は使用権資産の開始日から当該資産の耐用年数の終了時まで減価償却しなければならない
(4) 借手は、企業会計準則第8号「資産の減損」に従い、対象資産に減損が生じているかどうか判断し、減損している場合には、減損損失を認識する必要がある
(5) リース開始後、借手は、実効金利法によりリース期間内の各期の利息費用を計算し、各期の損益に計上する

8.貸手の会計処理

今回の改訂により、貸手の会計処理は、従来のファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分及び従来の会計処理方法を維持したため、本改訂準則導入による影響は小さいといわれている。

9.適用時期

本公開草案の公表に際して、財政部は適用時期を公表していないが、IFRS16の適用時期と歩調を合わせるために、原則適用日は2019年1月1日となることが予想される。
同時に、既に施行されている「企業会計準則 改訂第14号-収益」や同 第22号等(金融商品関係)の適用時期が、原則としてIFRS15「顧客との契約から生じる収益」及びIFRS9「金融商品」と歩調を合わせながらも、中国国内企業に配慮して以下のように段階適用していることから、「改訂準則 第21号-リース」も同様に段階的に適用されることが予想される。

※続きは添付ファイルをご覧ください。 

(531KB, PDF)
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