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グローバル企業のリスク管理 日本企業が直面するグローバル・コンプライアンス上の課題

(月刊誌『会計情報』2018年6月号)

本稿では、2018年にグローバル経済や金融で起こり得る事態を、特にリスク管理という視点から考えます。

著者:リスク管理戦略センター長 大山ᅠ剛

コンプライアンス・リスク隆盛の時代
ここ数年世界中で深刻なコンプライアンス・リスクが次々と顕現化している。コンプライアンスとは狭義に解釈すれば、法令等遵守となるが、最近では必ずしも法令等に明記されていなくても、世の中からフェアでないと指弾される行為(いわゆるミスコンダクト)も広義のコンプライアンス・リスクに含まれるようになってきた。つまり、ありとあらゆるタイプのコンプライアンス・リスクが、大企業の経営を脅かすようになってきたのだ。特に最近はサイバー・セキュリティの問題が深刻化している。また米国や英国等では、改めてセクハラの問題も出てきた。さらには、不公正競争やダンピングの問題も相変わらず多い。グローバルにビジネスを展開する企業にとっては、常に悩みが尽きない状況だと言えよう。

こうしたコンプライアンス・リスクは、従来であれば一企業の問題にとどまっていたが、最近では、一部中央銀行や国際機関の高官から、新たなグローバル経済危機のトリガーとなるかもしれないとまで言われるようになってきた。たとえば、これまでの世界株高を引っ張ってきたFANGやFAMGAと呼ばれるイノベーションの先頭を走る成長企業群、すなわち世界経済の勝ち組に対し、世の中の反感が強くなっており、足許では一斉に規制強化の方向が打ち出されている。SNSやプラットフォーム独占型の企業に対して社会の見る目が厳しくなり、EU一般データ保護規制(GDPR)のような規制が出てくることで、これまでの株高を引っ張ってきたイノベーション系企業の評価が一気に崩れる可能性が出てきたことが、危機のトリガーとなることへの懸念が増している背景だ。このようにコンプライアンス・リスクは、自らに発生するリスクのみではなく、他社に発生したリスクがマクロ経済を大きく動かすような側面まで考慮する必要が生じるほど重要性が高くなってきた。

既述のとおり、コンプライアンス・リスクには、ミスコンダクト等が含まれるようになっており、金融等の世界では今や最大のリスクと化しつつあるコンダクト・リスクも含む広い概念となりつつある。こうした広義のコンプライアンス・リスク、或いはコンダクト・リスクに関しては、一部国では当局主導で一定の業界におけるリスク管理強化をリードしているのだが、実はしっかりとした定義があるわけではない。当局が明確な定義を示してしまうと、業界はこのリスクを狭義に解釈してしまうことを恐れたためとも言われている。それでも、例えばコンダクト・リスクに関しては、一般的に以下のような概念がその定義として用いられていることが多い。

「株主・顧客・市場・環境・社会・従業員等に悪影響を与える行為により、これらのステークホルダーの利益を侵害し、又は当該企業の企業価値を毀損するリスク」
すなわち、ステークホルダーの利益を侵害してしまう、あるいはステークホルダーの期待を裏切るようなこと、これがコンダクト・リスクとなる。ステークホルダーには、株主から始まり、一般債権者、格付機関、顧客、さらには監督当局や従業員等、様々な主体が含まれる。通常最低限の期待の順守はルールや法律・レギュレーション等に示されているが、そこに含まれていないようなものも含めて、ステークホルダーの期待を大きく裏切ることが、結果的に企業活動のリスクを招くこととなる。本稿ではこうしたリスクを、コンダクト・リスク、或いは広義のコンプライアンス・リスクと呼ぶこととする。

※続きは添付ファイルをご覧ください。

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