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よくわかる「IASB概念フレームワーク」シリーズ(5) 第5回 測定

(月刊誌『会計情報』2019年3月号)

今回は、2018年版フレームワークの第6章「測定」の内容について説明します。

著者: 公認会計士 藤原 由紀

1.はじめに

国際会計基準審議会(IASB)は、2018年3月29日に「財務報告に関する概念フレームワーク」の改訂版(2018年版フレームワーク)を公表した。よくわかる「IASB概念フレームワーク」シリーズでは、概念フレームワークの内容及び今回の改訂における主要な変更点について、IASBで客員研究員として概念フレームワークプロジェクトの最終段階に実際にかかわった筆者がわかりやすく解説する。シリーズ第5回目の今回は、2018年版フレームワークの第6章「測定」の内容について説明する。2010年版フレームワーク(及び1989年版フレームワーク)は、測定に関するガイダンスをほとんど含んでおらず、この章は今回の改訂で全面的に刷新・追加されたものである。

2.測定基礎

測定(measurement)とは、財務諸表の構成要素に関する情報を貨幣的に数量化するプロセスである。ただし、2018年版フレームワークは直接「測定」という用語を定義していない。2018年版フレームワークの記述をそのまま用いれば、以下のようになる。

財務諸表に認識される要素は貨幣的に数量化される。そのためには測定基礎の選択が必要である。資産又は負債に測定基礎を適用することにより、当該資産又は負債、及び関連する費用又は収益の測定値が生み出される。

これを理解するためには、まずは測定基礎という用語の説明が必要だろう。測定基礎(measurement basis)とは、いわゆる歴史的原価、公正価値、あるいは履行価値といった、測定される要素の特性である。測定値(measure)とはこれを適用した結果得られた数値である。たとえば「ある資産に歴史的原価を適用した結果100万円という測定値が得られた」といったような表現になるが、読者の理解においてはこれは「ある資産の歴史的原価(あるいは取得原価)が100万円である」というのと同じであると思っていただいて差し支えない。したがって、上述の記載を誤解をおそれず平易な言葉に言い換えるならば、

財務諸表に計上するためには金額を確定する必要がある。そのためには取得原価・公正価値等のいずれで計上するか決定しなければならず、それにしたがって計上すべき金額を計算する。

という感じになるであろう。

 もちろん、いずれの測定基礎を選択するかも、どのように測定値を計算するかも、それほど単純な話ではないのは当然である。

※続きは添付ファイルをご覧ください。

(559KB, PDF)
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