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よくわかる「IASB概念フレームワーク」シリーズ(6) 第6回 表示及び開示、資本維持、IFRS基準の修正
(月刊誌『会計情報』2019年5月号)
今回は、2018年版フレームワークの第7章「表示及び開示」及び第8章「資本及び資本維持の概念」の内容について説明する。また、2018年版フレームワークと同時公表された強制適用文書である「IFRS基準における概念フレームワークへの参照の修正」の内容と影響についても解説する。
著者: 公認会計士 藤原 由紀
1.はじめに
国際会計基準審議会(IASB)は、2018年3月29日に「財務報告に関する概念フレームワーク」の改訂版(2018年版フレームワーク)を公表した。よくわかる「IASB概念フレームワーク」シリーズでは、概念フレームワークの内容及び今回の改訂における主要な変更点について、IASBで客員研究員として概念フレームワークプロジェクトの最終段階に実際にかかわった筆者がわかりやすく解説する。シリーズ最終回の今回は、2018年版フレームワークの第7章「表示及び開示」及び第8章「資本及び資本維持の概念」の内容について説明する。また、2018年版フレームワークと同時公表された強制適用文書である「IFRS基準における概念フレームワークへの参照の修正」の内容と影響についても解説する。
2.表示及び開示
(1) コミュニケーションの改善
それでは早速表示及び開示(presentation and disclosure)*1から見てみよう。
表示及び開示について説明している2018年版フレームワークの第7章は、今回の改訂で新たに追加された章である。そしてIASBはこの章を、「伝達ツール(communication tools)としての表示及び開示」と題する節から始めている。2018年版フレームワークの最終化が行われていた2017年以降本稿執筆時(2019年3月)にいたるまで、IASBの主要なテーマは「財務報告におけるコミュニケーションの改善(better communication in financial reporting)」であり、2018年版フレームワークの第7章にもこのIASBの問題意識が表れていると言える。
資産、負債、持分、収益及び費用についての情報は、財務諸表における表示及び開示を通じて伝達されるが、効果的な伝達(コミュニケーション)は情報をより有用にする。2018年版フレームワークは、IASBが個々のIFRS基準における表示及び開示の要求事項を開発する際に、次の事項を検討する必要があると述べている。
1. 以下の2点のバランスが必要であること
a. 企業に、資産、負債、持分、収益及び費用についての目的適合性のある忠実な表現を提供する柔軟性を与えること
b. 期間を通じての、及び企業間の比較可能性をもつ情報を要求すること
2. 企業が以下を達成するのを支援するため、当該表示及び開示の目的を明らかにすること
a. 有用な情報を特定すること
b. 情報を最も効率的に提供する方法を決定すること
さらに、効果的なコミュニケーションを支援する以下の原則が取り上げられている。
1. 企業固有の情報は、標準化された定型文よりも有用である
2. 財務諸表の異なる部分における情報の重複は、通常不必要であり、財務諸表の理解可能性を低下させる可能性がある
※続きは添付ファイルをご覧ください。
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