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ASBJが企業会計基準公開草案第68号「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」を公表

(月刊誌『会計情報』2019年12月号)

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2019年10月30日に、企業会計基準公開草案第68号「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」を公表した。

著者:『会計情報』編集部

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2019年10月30日に、企業会計基準公開草案第68号「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」を公表した。

2018年11月に開催された第397回企業会計基準委員会において、公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、「見積りの不確実性の発生要因」に係る注記情報の充実について検討することが提言された。

この提言を受けて、ASBJにおいて、2018年12月より、「見積りの不確実性の発生要因」に係る注記情報の充実について審議が行われ、今般、2019年10月25日開催の第419回企業会計基準委員会において、表記の「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」(以下「本公開草案」という)の公表が承認されたことを受け、広くコメントを募集することを目的として公表することとしたものとされている。

<本公開草案の概要>

■経緯(本公開草案第12項)

2016年3月及び2017年11月、公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議に対して、国際会計基準審議会(IASB)が2003年に公表した国際会計基準(IAS)第1号「財務諸表の表示」(以下「IAS第1号」という)第125項において開示が求められている「見積りの不確実性の発生要因」について、財務諸表利用者にとって有用性が高い情報として日本基準においても注記情報として開示を求めることを検討するよう要望が寄せられた。

その後、2018年11月に開催された第397回企業会計基準委員会において、基準諮問会議より、見積りの不確実性の発生要因に係る注記情報の充実について検討することがASBJに提言された。この提言を受けて、ASBJでは、2018年12月より審議を開始し、その結果を公開草案として公表することとしたとされている。

■開発にあたっての基本的な方針(本公開草案第13項)

ASBJでは、本公開草案の開発にあたっての基本的な方針として、個々の注記を拡充するのではなく、原則(開示目的)を示したうえで、具体的な開示内容は開示目的に照らして判断することとしたとされている。また、本公開草案の開発にあたっては、IAS第1号第125項の定めを参考とすることとしたとされている。

なお、検討の過程では、IAS第1号第125項は「見積りの不確実性の発生要因」の表題のもとに定めが記述されているものの、注記が要求されている項目は会計上の見積りの対象となる資産及び負債に焦点を当てていると分析された。このため、本公開草案の開発にあたっても、IAS第1号第125項と同様の内容の開示を求めたうえで、内容をより適切に表す会計基準の名称として「会計上の見積りの開示に関する会計基準」を用いることとしたとされている。

■会計上の見積りの開示目的(本公開草案第14項及び第15項)

財務諸表を作成する過程では、財務諸表に計上した項目の金額を算出するにあたり、会計上の見積りが必要となるものがある。会計上の見積りは、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて合理的な金額を算出するものであるが、財務諸表に計上する金額に係る見積りの方法や、見積りの基礎となる情報が財務諸表作成時にどの程度入手可能であるかは様々であり、その結果、財務諸表に計上する金額の不確実性の程度も様々となる。したがって、財務諸表に計上した金額のみでは、当該金額が含まれる項目が翌年度の財務諸表に影響を及ぼす可能性があるのかを、財務諸表利用者が理解することは困難である。

このため、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目における会計上の見積りの内容についての情報は、財務諸表利用者にとって有用な情報であると考えられるとされている。

ここで、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目は企業によって異なるため、個々の会計基準を改正して会計上の見積りの開示の充実を図るのではなく、会計上の見積りの開示について包括的に定めた会計基準において原則(開示目的)を示し、開示する具体的な項目及びその記載内容については当該原則(開示目的)に照らして判断することを企業に求めることが適切と考えられるとされている。

■開示目的(本公開草案第4項)

本公開草案では、「会計上の見積りの開示目的」に記載した理由により、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することを目的とすることが提案されている。

■開示する項目の識別(本公開草案第5項及び第19項から第21項)

本公開草案では、会計上の見積りの開示を行うにあたり、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目を識別することが提案されている。また、識別する項目は、通常、当年度の財務諸表に計上した資産及び負債であるとされている。

■会計上の見積りの開示の対象とした項目名の注記(本公開草案第6項及び第24項)

本公開草案では、識別した項目について、本公開草案に基づいて識別した会計上の見積りの内容を表す項目名を注記することを求めることが提案されている。また、会計上の見積りの開示については、本公開草案に基づき開示された情報であることが明瞭にわかるようにすることが有用、かつ、従来の日本基準の開示の枠組みに基づけば、通常はまとめて注記されることが多いと考えられたため、本公開草案の開発にあたって参考としたIAS第1号第125項では求められていないものの、当該注記は独立の注記とし、識別した項目が複数ある場合には、それらの項目名はまとめて記載することを求めることが提案されている。

■項目名に加えて注記する事項(本公開草案第7項及び第8項並びに第25項から第28項)

本公開草案では、開示目的に基づき識別した項目のそれぞれについて、会計上の見積りの内容を表す項目名とともに次の事項を注記することが提案されている。

(1) 当年度の財務諸表に計上した金額

(2) 会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

(1)及び(2)の事項の具体的な内容や記載方法(定量的情報若しくは定性的情報、又はこれらの組み合わせ)については、開示目的に照らして判断することが提案されている。

■個別財務諸表における取扱い(本公開草案第9項)

本公開草案は、連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における取扱いとして、識別した項目ごとに、当年度の個別財務諸表に計上した金額の算出方法に関する記載をもって第7項(2)の注記(会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報)に代えることができることが提案されている。また、この場合、連結財務諸表における記載を参照することができることが併せて提案されている。

■適用時期及び経過措置(本公開草案第10項及び第11項)

本公開草案では、適用時期等について、次のように取り扱うことが提案されている。

(1) 本公開草案は、2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することが提案されている。ただし、公表日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができることも提案されている。

(2) 本公開草案の適用初年度において、本公開草案の適用は、表示方法の変更として取り扱うものの、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第14項の定めにかかわらず、本公開草案に定める注記事項について、適用初年度の連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度における連結財務諸表に関する注記及び前事業年度における個別財務諸表に関する注記(比較情報)に記載しないことができることが提案されている。

■その他

なお、コメント期限は2020年1月10日(金)までとされている。

詳細については、ASBJのウェブページ(https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/exposure_draft/y2019/2019-1030-2.html)を参照いただきたい。

以上

(564KB, PDF)
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