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IASB、「金利指標改革」(IFRS第9号、IAS第39号及びIFRS第7号の修正)を公表

IFRS in Focus(月刊誌『会計情報』2019年12月号)

本稿では、国際会計基準審議会が公表したIFRS第9号「金融商品」、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」及びIFRS第7号「金融商品:開示」の最近の修正を取り扱っている。本修正のタイトルは「金利指標改革」(IFRS第9号、IAS第39号及びIFRS第7号の修正)である。

著者:トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

注:本資料はDeloitteのIFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。

この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレターをご参照下さい。

本IFRS in Focusは、国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第9号「金融商品」、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」及びIFRS第7号「金融商品:開示」の最近の修正を取り扱っている。本修正のタイトルは「金利指標改革」(IFRS第9号、IAS第39号及びIFRS第7号の修正)である。

本IFRS in Focusは、2019年5月に公表された公開草案に関するIFRS in Focusを更新したものである。*

  • 本修正は、IFRS第9号又はIAS第39号のヘッジ会計の要求事項を、金利指標改革の影響を直接的に受けるヘッジ関係に適用する企業に影響を与える。
  • 本修正は、特定のヘッジ会計に係る要求事項を修正して、金利指標改革の結果として金利指標が変更されないと仮定して、企業がそのようなヘッジ会計の要求事項を適用するようにするものである。
  • 本修正は、金利指標改革の影響を直接的に受けるすべてのヘッジ関係に強制的に適用される。
  • 本修正は、金利指標改革から生じる他の帰結について救済措置を提供することを意図したものではない。ヘッジ関係が、修正基準に定められている理由以外の理由でヘッジ会計の要求事項を満たさなくなった場合には、ヘッジ会計の中止が依然として要求される。
  • 本修正は、2020年1月1日以後開始する事業年度に発効し、早期適用は認められる。
  • 本修正は、企業が本修正を最初に適用する報告期間の期首に存在していた又はその後に指定されたヘッジ関係、及び企業が本修正を最初に適用した報告期間の期首に存在していたその他の包括利益で認識された利得又は損失に遡及的に適用される。
  • 公開草案と最終修正の違いには、IAS第39号を適用する場合のヘッジの有効性の遡及的な評価(「80-125%ルール」)からの救済措置、マクロヘッジに対する独立に識別可能の要求事項からの救済措置、本修正の範囲に一定の為替リスクのヘッジを含めること、及び開示の要求事項の変更が含まれる。

 

背景

銀行間取引金利(IBOR)などの金利指標は、国際金融市場において重要な役割を果たしており、何兆ものドルで金融商品の指標となっている。しかし、複数の法域において、代替的なリスク・フリー・レート(RFR)へ移行する作業が、2020年になるとすぐに進行する。これにはいくつかの理由がある。銀行からの不正な呈示の事例、及び一部のIBORではアンダーライニングの市場が十分に活発ではなく、さらに金融取引がこれらの金利に大きく依存していることから、システミック・リスクに対する懸念が高まっている。IBORに寄与する呈示を提供するパネル銀行は、潜在的な訴訟リスクのために、アンダーライニングの取引量が少ない場合には、呈示を提供することに消極的である。これらの要因のすべてが金利の操作につながり、ストレスのある市場状況でこれらの金利がどのように決定されるかについての懸念を高める可能性がある。

この背景に対して、G20が金融安定理事会(FSB)に主要な金利指標の抜本的な見直しを行うよう依頼した。この見直しを受けて、FSBは、IBORなどのいくつかの主要な金利指標を改革する提言を示した報告書を公表した。その結果、代替的なRFRは、そのようなレートが流動性のあるアンダーライニングの市場取引に基づき、専門家の判断に基づく呈示に依存しないことを目的として、主要な通貨の法域においてワーキング・グループによって選択されている。これにより、金利はより信頼性が高くなり、IBORに組み込まれた信用リスク・プレミアムを組み込む必要のない商品や取引に堅牢な代替手段を提供することになる。このことは、いくつかの既存の金利指標の長期的な存続可能性に関する不確実性を生じさせている。

見解

本修正は、IBORが代替的なRFRに置き換えられる前に生じるヘッジ会計の論点(すなわち、置換前の論点)のみを扱っている。これは本プロジェクトのフェーズⅠと呼ばれている。本修正は、IFRS第9号及びIAS第39号における将来予測的な分析を要求する特定のヘッジ会計の要求事項についての影響を検討し、不確実性が存在する間の救済措置を提供している。2019年9月に、IASBは、当プロジェクトのフェーズⅡである既存の金利指標を代替金利に置き換える時に財務報告に影響を与える可能性のある論点(すなわち、置換時の論点)に対処するためのプロジェクトについての作業を開始した。本プロジェクトのこのフェーズからの最初の成果物は、2020年前半に予定される公開草案になる。

 

本修正

企業は、IFRS第9号で、IAS第39号又はIFRS第9号におけるヘッジ会計モデルを継続して適用することの会計方針の選択を有しているため、ヘッジ会計の要求事項の修正は、IFRS第9号とIAS第39号の両方に影響を与える。また、一部の保険会社は、IFRS第17号「保険契約」を適用するまで当該適用を延期しているため、IFRS第9号を適用していない。そのためIAS第39号全体を継続して適用している。IASBは、特定のヘッジ会計の要求事項を修正して、ヘッジされているキャッシュ・フローとヘッジ手段のキャッシュ・フローの基礎となっている金利指標が、金利指標改革の不確実性の結果として変更されないと仮定して、企業がそうしたヘッジ会計の要求事項を適用するように修正した。本修正は、金利指標改革の影響を直接的に受けるすべてのヘッジ関係に適用される。金利指標改革とは、金利指標を金融安定理事会の2014年7月の報告書「主要な金利指標の改革」に示された提言から生じる代替的な指標金利への置換を含む、金利指標の市場全体の改革を指す。

本修正は以下の領域に影響を与える。

1.キャッシュ・フロー・ヘッジについての可能性が非常に高いという要求事項(IFRS第9号及びIAS第39号)

ヘッジ対象が予定取引である場合には、企業は、当該予定取引が発生する可能性が非常に高いかどうかについて、ヘッジされているキャッシュ・フローの基礎となっている金利指標が、金利指標改革の結果として変更されないものと仮定して、判定しなければならない。

2.キャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金の金額の純損益への振替(IFRS第9号及びIAS第39号)

ヘッジされているキャッシュ・フローが発生することが見込まれるかどうかを判定するために、企業は、ヘッジされているキャッシュ・フローの基礎となっている金利指標が、金利指標改革の結果として変更されないものと仮定しなければならない。

3.ヘッジ対象とヘッジ手段との間の経済的関係の評価(IFRS第9号)

企業は、ヘッジされているキャッシュ・フロー及び/又はヘッジされているリスクの基礎となっている金利指標、又はヘッジ手段のキャッシュ・フローの基礎となっている金利指標が、金利指標改革の結果として変更されないものと仮定しなければならない。

4.将来に向かっての評価及び遡及的な評価(IAS第39号)

企業は、ヘッジされているキャッシュ・フロー及び/又はヘッジされているリスクの基礎となっている金利指標、又はヘッジ手段のキャッシュ・フローの基礎となっている金利指標が、金利指標改革の結果として変更されないものと仮定しなければならない。企業は、ヘッジの実際の結果が非常に有効ではない、すなわち遡及的な評価を適用したときに80-125%の範囲外であることだけの理由で、金利指標改革から生じる不確実性の期間中にヘッジ関係を中止することを要求されない。このような状況で、企業は、ヘッジ関係を中止しなければならないかどうかを評価するために、将来に向かっての評価を含む、ヘッジ会計の要件を満たすためにヘッジ関係に要求されるその他の条件を適用しなければならない。

5.ある項目の構成要素をヘッジ対象として指定(IFRS第9号及びIAS第39号)

金利指標改革の影響を受ける金利リスクの指標要素のヘッジについて、企業は、リスク要素が独立に識別可能であるかどうかを判定するために、IFRS第9号またはIAS第39号における特定の要求事項をヘッジ関係の開始時にのみ適用しなければならない。当該ヘッジが動的ヘッジであり、企業がヘッジ関係を頻繁に改定する場合、リスク要素はヘッジ対象の当初指定時にのみ独立に識別可能である必要がある。

6.救済措置の適用終了(IFRS第9号及びIAS第39号)

当修正は、企業が、上記1~5に示されている各要求事項の適用を、将来に向かって中止しなければならない状況を示している。上記1~4について、金利指標改革から生じるキャッシュ・フローの時期及び金額に関する不確実性がヘッジ対象及びヘッジ手段にもはや存在しない場合、又はヘッジ関係が中止される場合のいずれか早い方の時点まで、救済措置が適用される。上記5について、救済措置はヘッジ関係の終了により終了する。

7.開示(IFRS第7号)

企業は、以下を開示することが要求される。

  • 企業のヘッジ関係が晒されている重要な金利指標
  • 金利指標改革の影響を受ける企業が管理するリスク・エクスポージャーの範囲
  • 企業がどのように代替的な指標金利に移行するプロセスを管理しているか
  • IFRS第9号及びIAS第39号の修正を適用する際に行われた重要な仮定又は判断の説明
  • 企業が本修正の範囲で例外を適用しているヘッジ関係のヘッジ手段の名目金額
見解

本修正は、IBORが代替的なRFRに置き換えられる結果として、当救済措置がない場合にヘッジの非有効や潜在的なヘッジ会計の失敗の結果となることによる、当該改革によって影響を直接的に受ける既存のキャッシュ・フロー・ヘッジ及び公正価値ヘッジ会計関係に対する混乱を避けることを目的としている。このような失敗は、キャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金の金額の純損益への広範な振替及び固定金利債務の公正価値ヘッジ会計の中止につながる可能性がある。

本修正は、ヘッジ対象について、IBORベースのキャッシュ・フローが代替的なRFRに置き換えられる可能性のある期間を超えて継続することを、企業が仮定し続けることを要求することにより、キャッシュ・フロー・ヘッジに対するこの混乱を回避することを目的としている。これは、キャッシュ・フローのIBORを基礎とする変動性が、非契約的なエクスポージャー(例えば、発行予定債券)から生じるか、又はIBORを基礎として認識された貸付金又は借入金のように契約上のエクスポージャーから生じるかどうかに関係なく適用される。たとえ企業が契約上のエクスポージャーを有していても、IBOR指標の存在がなくなる場合に、債務が条件変更される又は債務の契約条項にあるフォールバック条項が発行する予想をもたらす可能性があることを踏まえると、IBORを基礎とするキャッシュ・フローに企業が晒される可能性に関する不確実性が生じることが多い。

同様に、公正価値ヘッジの場合、当修正はヘッジ対象について、IBORの指定されたリスクが代替的なRFRに置き換えられる可能性があるにもかかわらず継続することを要求する。この救済措置は、固定金利債務が、IBORではなく代替的なRFRを使用して価格設定される可能性が高まる期間中の公正価値ヘッジ会計の継続性を確保する。

デリバティブがIBORの代わりに代替的なRFRに契約上基づくように条件変更されなければならない場合、この時点で本修正はIBORが置き換えられることに関する不確実性がなくなったとみなし、ヘッジ手段に対して救済措置は停止する。この時点で、企業は、RFRを基礎とするヘッジ対象に、RFRを基礎とするデリバティブを指定する能力を有することになる。あるいは、ヘッジ対象が条件変更されておらずIBORに晒されたままの場合、企業のヘッジ対象が金利指標の不確実性に晒され続けるため、企業はヘッジ関係に救済措置を適用し続けることができる。しかし、救済措置を用いてヘッジ会計を適用し続けるためには、企業は、IAS第39号の場合は、将来に向かってRFRを基礎とするデリバティブがIBORを基礎とするヘッジ対象をヘッジしていることが非常に有効であると見込まれることを立証する必要が、IFRS第9号の場合は、RFRを基礎とするデリバティブとIBORを基礎とするヘッジ対象に経済的関係があることを立証する必要がある。

IASBは、本プロジェクトのフェーズIIを審議する際に、この新しい指定の会計上の影響を検討する。

 

公開草案と最終修正の違い

公開草案に対して受け取ったコメントレターに基づいて、IASBは公開草案の提案に以下の変更を加えた。

1.IAS第39号を適用することで会計処理されたヘッジ関係に対する遡及的な評価

金利指標改革から生じる不確実性がある期間中は、80-125%ルールから救済する措置が提供された。

2.マクロヘッジ

マクロヘッジに対する独立に識別可能の要求事項からの救済措置が提供され、ヘッジ対象として指定されたヘッジ対象グループに救済措置が適用されなくなった場合についての明確化が提供された。

3.本修正の範囲

外貨建の金利指標が為替リスクのヘッジに関連性があることを踏まえ、本修正は、金利と為替リスクの両方のヘッジを含むことができる金利指標改革の影響を直接的に受けるヘッジ会計に適用される。公開草案では、金利リスクのヘッジのみに制限されていた。

4.開示

企業が最初に会計方針を適用する場合、IAS第8号が要求する特定の定量的開示を開示することからの救済措置を含む、企業が開示することを要求される内容に関する特定のガイダンスを提供するために、開示の要求事項が変更された。

発行日

企業はIFRS第9号、IAS第39号及びIFRS第7号の修正を2020年1月1日以後開始する事業年度に適用し、早期適用が認められる。本修正は、企業が本修正を最初に適用する報告期間の期首に存在していた又はその後に指定されたヘッジ関係、及び企業が本修正を最初に適用した報告期間の期首に存在していたその他の包括利益で認識された利得又は損失に遡及的に適用される。

さらなる情報

金利指標改革のIFRS第9号、IAS第39号及びIFRS第7号の修正についてご質問がある場合は、通常のデロイトの連絡先にお問合せください。

以上

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