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2019年12月期決算の会計処理に関する留意事項

月刊誌『会計情報』2020年1月号

公認会計士 石川 慶

本稿では、2019年12月期決算の会計処理に関する主な留意事項について解説を行う。

2019年12月期に適用される新基準等には、下記Ⅰ~Ⅲがある。Ⅰの一部(表示及び注記事項の取扱い)及びⅡは2018年12月期から早期適用が可能であったが、2019年12月期から原則適用となっている。

(注1)2019年12月期から早期適用することができる会計基準等には、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等がある。

(注2)2020年12月期以降に適用される会計基準等には、以下がある(会計基準等の解説については、本誌2019年10月号(Vol.518)参照)。

2018年改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等

※2020年12月期期首から原則適用であるが、2018年12月期、2021年12月期期首又は在外子会社等が初めてIFRS第9号「金融商品」を適用する連結会計年度の翌連結会計年度の期首から適用することも可能。なお、2020年12月期期首から適用しない場合には、適用していない旨を注記する

改正企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」等

※2020年12月期期首以後実施される組織再編から適用

企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」等

※2022年12月期期首から原則適用であるが、2021年12月期期首又は2020年12月期末から適用することも可能

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Ⅰ 企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等

企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、2018年2月16日に以下の会計基準等を公表した。

  • 企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(以下「税効果会計基準一部改正」という。)
  • 企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という。)
  • 改正企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下「回収可能性適用指針」という。)
  • 企業会計基準適用指針第29号「中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針」(以下「中間税効果適用指針」という。)

1 公表の経緯・目的

我が国における税効果会計に関する会計基準として、1998年10月に企業会計審議会から「税効果会計に係る会計基準」が公表され、当該会計基準を受けて、日本公認会計士協会から実務指針が公表されている。これらの会計基準及び実務指針に基づきこれまで財務諸表の作成実務が行われてきたが、ASBJは、基準諮問会議の提言を受けて、日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針(会計に関する部分)について、ASBJに移管すべく審議を行ってきた。このうち、繰延税金資産の回収可能性に関する定め以外の税効果会計に関する定めについて、基本的にその内容を踏襲した上で、必要と考えられる見直しを行うこととされ、主として開示に関する審議が重ねられてきた。

2018年2月の「税効果会計基準一部改正」等の公表により、一連の移管作業は終了となる。改正前の日本公認会計士協会の実務指針等と改正後のASBJにおける会計基準等の関係についてまとめると、以下のとおりである。

2 会計処理

(1) 会計処理の見直しを行った主な取扱い

3 開示

(1) 表示(税効果会計基準一部改正2項)
改正前の取扱い
繰延税金資産及び繰延税金負債は、これらに関連した資産・負債の分類に基づいて、繰延税金資産については流動資産又は投資その他の資産として、繰延税金負債については流動負債又は固定負債として表示しなければならない。

改正後の取扱い
繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示する。

 

(2) 注記事項

回収可能性適用指針の公開草案公表時(2015年5月に公表)において、注記事項に関する質問項目を設け、コメントが募集されていた。この時に寄せられたコメントに加え、財務諸表利用者が税効果会計に関する注記事項を利用する目的やその分析内容、実際に利用している情報を検討した上で現状において不足しているものと考えられる情報を識別し、従前の注記事項に以下の内容を加えることとされている。

注記項目 参照箇所
評価性引当額の内訳 数値情報 後述① A 参照
定性的情報 後述① B 参照
税務上の繰越欠損金 数値情報 後述② C 参照
定性的情報 後述② D 参照

 

① 評価性引当額の内訳に関する情報(税効果会計基準一部改正4項)

A 評価性引当額の内訳に関する数値情報

財務諸表利用者による税負担率の予測及び繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価に資するように、

  • 評価性引当額の内訳に関する数値情報として、繰延税金資産の発生原因別の主な内訳(以下「発生原因別の注記」という。)として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、
  • 当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、

これまで発生原因別の注記に示されていた評価性引当額の合計額を、「税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額」と「将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額」に区分して記載する。

 

B 評価性引当額の内訳に関する定性的な情報

財務諸表利用者が評価性引当額の内容を理解し、税負担率に影響が生じている原因を分析することに資するように、評価性引当額に関する定性的な情報として、

  • 評価性引当額(合計額)に重要な変動が生じている場合

当該変動の主な内容を記載する

 

② 税務上の繰越欠損金に関する情報(税効果会計基準一部改正5項)

C 税務上の繰越欠損金に関する繰越期限別の数値情報

財務諸表利用者による税負担率の予測に資するように、

  • 発生原因別の注記として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、
  • 当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、

税務上の繰越欠損金に関する数値情報として、繰越期限別に次の数値を記載する

● 税務上の繰越欠損金の額に納税主体ごとの法定実効税率を乗じた額
● 税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額
● 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額

 

D 税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報

税務上の繰越欠損金に関する数値情報が繰越期限別に開示されても、財務諸表利用者が当該繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性を評価できないため、

  • 税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合

当該不確実性の評価に資するように、税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報として、税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由を記載する

 

 

なお、上記の①及び②の注記事項を記載する際の重要性の判断については、企業により置かれた状況によって重要性は異なるため、一律に重要性の基準を定めるのは適切ではないと考えられ、以下の考え方を目安として、企業の状況に応じて適切に判断することが考えられる。

③ 連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における注記事項(税効果会計基準一部改正4項及び5項)

連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表における税効果会計に関する注記事項については、評価性引当額の内訳に関する数値情報(上記(2)① A 参照)のみを追加する(税効果会計基準一部改正51項)。

次の事項については、財務諸表利用者の分析において、連結財務諸表における注記事項の理解に重要な影響が生じることは比較的限定的であると考えられるため、連結財務諸表を作成している場合に個別財務諸表において当該注記事項の記載を要しない(税効果会計基準一部改正50項)。

  • 評価性引当額の合計額に重要な変動が生じている場合の変動の主な内容(上記(2)①B 参照)個別財務諸表における評価性引当額は回収可能性適用指針に従って計上されていることから、評価性引当額の合計額に重要な変動が生じている場合の主な内容は、発生原因別の注記においてスケジューリング可能なものか不能なものかを推測することによりある程度理解し得ることが少なくないと考えられる。  税務上の繰越欠損金に関する繰越期限別の数値情報(上記(2)②C 参照)
  • 税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額が記載されている場合、税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額を算定することができる。また、我が国の税法に基づくため、個別財務諸表における発生原因別の注記の推移や財務情報以外における一定期間の業績推移の開示により、重要な税務上の欠損金が生じた時期が特定できれば、どの時期に繰越期限となるかについて、理解し得ることがあると考えられる。
  • 税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、当該繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由(上記(2)②D 参照)税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由については、財務諸表提出会社においては個別財務諸表が開示されていることに加えて、子会社に比べると財務情報以外についての開示も比較的多く、将来の収益力について開示されていることもあるため、これらの情報と併せて分析することにより、理解し得ることが少なくないと考えられる。

 

4 適用時期等

税効果会計基準一部改正、税効果適用指針、回収可能性適用指針及び中間税効果適用指針の適用時期等について、次のように取り扱う。

Ⅱ  実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」

ASBJは、2018年3月14日に実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表した。

 

1 公表の経緯・目的

2016年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)により、「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」という。)が改正された。

この改正された資金決済法では、仮想通貨が定義された上で、仮想通貨交換業者に対して新たに登録制が導入され、2017年4月1日の属する事業年度の翌事業年度より、仮想通貨交換業者に対しては、その財務諸表の内容について公認会計士又は監査法人による財務諸表監査が義務付けられている(資金決済法第63条の14第3項)(本実務対応報告20項)。

本実務対応報告は、仮想通貨に関連するビジネスが初期段階にあり、現時点では今後の進展を予測することは難しいことや仮想通貨の私法上の位置づけが明らかではないことを踏まえ、当面必要と考えられる最小限の項目に関する会計上の取扱いのみを定めている(本実務対応報告22項)。従って、ICO(Initial Coin Offering)、いわゆる「ハードフォーク」、仮想通貨同士の交換取引等は取り扱われていない。

また、本実務対応報告において定めのない事項については、今後の仮想通貨のビジネスの発展や会計に関連する実務の状況により、市場関係者の要望に基づき、別途の対応を図ることの要否を判断することになると考えられるとされている(本実務対応報告22項)。

なお、巨額の仮想通貨が流失した仮想通貨交換業者の事件は記憶に新しいが、仮想通貨交換業者は内部管理体制が充実していること、監査の前提である内部統制が適切に整備・運用されていることが強く求められる。仮想通貨の消失リスク、マネーロンダリングに利用されるリスク等を内包する新規ビジネスの監査であるため非常にリスクが高く、規制当局も重大な懸念を持っている。仮想通貨交換業者として監査を受けるに際しては、自社の内部統制の整備・運用状況が十分であるか、監査の実行可能性に問題ないかを十分に確認する必要があると考えられる。

 

2 範囲

本実務対応報告では、仮想通貨交換業者に対する財務諸表監査制度の円滑な運用が契機であったこと、及び適用範囲を明確にすることから、本実務対応報告の適用範囲を資金決済法上の仮想通貨とし、ただし、自己(自己の関係会社を含む。)の発行した資金決済法に規定する仮想通貨は除くとされている(本実務対応報告3項、26項)。

当該適用範囲に関して、公開草案に寄せられたコメントでは、企業が仮想通貨を発行した場合の会計処理を明確にすべきとの意見があったが、22項(「1 公表の経緯・目的」参照)に記載のとおり、本実務対応報告においては、当面必要と考えられる最小限の項目に関する会計上の取扱いのみを定めることとしていること、また、企業が発行した仮想通貨に関する論点としては、例えば、対価を得て発行した仮想通貨について負債を計上するのか利益を計上するのか、自己に割り当てた仮想通貨を会計処理の対象とするのか等が考えられるが、公開草案における会計処理等の検討に際しては、自己以外の者により発行されている仮想通貨の会計処理についてのみ議論が行われており、自己の発行した仮想通貨の取引の実態とそこから生じる論点が網羅的に把握されていない状況にあることから、自己の発行した仮想通貨(発行した時点においては仮想通貨に該当しないが、その後仮想通貨に該当することとなったものを含む。)については、本実務対応報告の範囲から除外することとされている(本実務対応報告26項)。なお、自己の関係会社により仮想通貨の発行が行われる事例が見られるため、自己の関係会社が発行した仮想通貨(発行した時点においては仮想通貨に該当しないが、その後仮想通貨に該当することとなったものを含む。)も、本実務対応報告の範囲から除外することとされている(3項ただし書き参照)(本実務対応報告26項)。

なお、いわゆる「マイニング」(採掘)などにより取得した仮想通貨は、通常、自己(自己の関係会社を含む。)以外の者により発行されているため、ここでいう自己(自己の関係会社を含む。)の発行した仮想通貨には該当しないことから、本実務対応報告の範囲に含まれるとされている(本実務対応報告26項)。

 

3 仮想通貨の会計処理の前提

(1) 仮想通貨の会計上の資産性の有無

仮想通貨は現時点において、私法上の位置づけが明確でなく、仮想通貨に何らかの法律上の財産権を認め得るか否かについては明らかではないものと考えられる(資金決済法においては、「財産的価値」と定義されている(資金決済法第2条第5項第1号及び第2号)。)とされている(本実務対応報告27項)。

ここで、我が国における会計基準では、多くの場合、法律上の権利を会計上の資産として取り扱っている。ただし、必ずしも法律上の権利に該当することが会計上の資産に該当するための要件とはされておらず、例えば、繰延税金資産や自社利用のソフトウェア等についても資産計上がなされている。この点、仮想通貨は、法律上の権利に該当するかどうかは明らかではないが、売買・換金を通じて資金の獲得に貢献する場合も考えられることから、仮想通貨を会計上の資産として取り扱い得るとしたとされている(本実務対応報告27項)。

 

(2) 既存の会計基準との関係

仮想通貨については、直接的に参照可能な既存の会計基準は存在しないことから、本実務対応報告においては、仮想通貨に関する会計処理について既存の会計基準を適用せず、仮想通貨独自のものとして新たに会計処理を定めているとされている(本実務対応報告33項)。

 

4  仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理

(1)  期末における仮想通貨の評価に関する会計処理

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有する仮想通貨(仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨を除く。以下同じ。)について、図表1のように活発な市場(後述(2)参照)の有無により会計処理を区分している

図表1の会計処理の基本的考え方は以下のように整理されている。

(基本的考え方)

期末における仮想通貨の評価に関する会計処理を検討するにあたっては、これまでの我が国の会計基準における評価基準に関する考え方を参考に、資産の保有目的や活発な市場の有無の観点から、以下のように、基本的な考え方を整理したとされている(本実務対応報告34項)。

  • これまでの我が国の会計基準では、資産の保有目的について、売買目的有価証券やトレーディング目的で保有する棚卸資産など時価の変動により利益を得ることを目的として保有する資産については時価で評価することが適当とされており、通常の販売目的で保有する棚卸資産や製造設備など時価の変動ではなく事業活動を通じた資金の獲得を目的として保有する資産については取得原価で評価することが適当とされている(本実務対応報告35項)。
  • ここで、活発な市場が存在する仮想通貨は、主に時価の変動により売却利益を得ること決済手段として利用すること仮想通貨交換業者が業務の一環として仮想通貨販売所を営むために仮想通貨を一時的に保有すること目的として保有されることが現時点において想定される。このため、活発な市場が存在する仮想通貨は、いずれも仮想通貨の時価の変動により保有者が価格変動リスクを負うものであり、時価の変動により利益を得ることを目的として保有するものに分類することが適当と考えられる。なお、時価は市場価格に基づく価額と市場価格がない場合の合理的に算定された価額の2つに区分されているが(本実務対応報告4項(6)参照)、活発な市場が存在する仮想通貨については、活発な市場における市場価格が存在することから、市場価格に基づく価額を時価として使用することになると考えられる(本実務対応報告36項)。
  • 一方、活発な市場が存在しない仮想通貨は、時価を客観的に把握することが困難であることが多く、また、時価により直ちに売買・換金を行うことに事業遂行上等の制約があることから、時価の変動を企業活動の成果とは捉えないことが適当と考えられるとされている(本実務対応報告37項)。

 

(2) 活発な市場の判断規準

前述(1)における活発な市場が存在する場合とは、仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者の保有する仮想通貨について、

継続的に価格情報が提供される程度仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合


をいうものとするとされている(本実務対応報告8項)。

我が国の会計基準(金融商品に関する会計基準、金融商品会計に関する実務指針(以下「金融商品実務指針」という。)、棚卸資産の評価に関する会計基準)において、「活発な市場」の定義は行われていないが、国際的な会計基準においては「活発な市場」の判断規準についての考え方が示されていることから、これらを参考に、仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者の保有する仮想通貨について、継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいうこととされている(本実務対応報告8項参照)(本実務対応報告45項~47項)。

なお、「継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合」については、保有する仮想通貨の種類、当該保有する仮想通貨の過去の取引実績及び当該保有する仮想通貨が取引の対象とされている仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所の状況等を勘案し、個々の仮想通貨の実態に応じて判断することが考えられるとされている(本実務対応報告47項)。

上記の判断に際して、例えば、合理的な範囲内で入手できる価格情報が仮想通貨取引所又は仮想通貨販売所ごとに著しく異なっていると認められる場合や、売手と買手の希望する価格差が著しく大きい場合には、通常、市場は活発ではないと判断されるものと考えられるとされている(本実務対応報告47項)。

 

(3) 活発な市場が存在する仮想通貨の市場価格

活発な市場が存在する仮想通貨の市場価格は、図表2のように規定されている。

(4) 仮想通貨の売却損益の認識時点

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、仮想通貨の売却損益を当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において認識するとされている(本実務対応報告13項)。

我が国の会計基準においては、売却損益の認識時点に関する具体的な判断基準として、売買の合意が行われた時に売却損益の認識を行う約定日基準と、引渡時に売却損益の認識を行う受渡日基準の2つの方法が見られる(本実務対応報告52項)が、仮想通貨の売買取引については、売買の合意が行われた後において、取引情報がネットワーク上の有高として記録されるプロセス等は仮想通貨の種類や仮想通貨交換業者により様々であるものの、通常、売手は売買の合意が成立した時点で売却した仮想通貨の価格変動リスク等に実質的に晒されておらず、売却損益は確定していると考えられる。そのため、売却損益の認識時点として売買の合意が成立した時点とする判断基準を示すことにより、確定した売却損益を財務諸表に反映させることができ、かつ、仮想通貨の売却損益の認識時点に関する判断の実務上の多様性も抑えられると考えられることから、仮想通貨の売却損益の認識時点を売買の合意が成立した時点とする方法を採用することとしたとされている(本実務対応報告13項参照)(本実務対応報告53項)。

 

5  仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理

顧客からの預かり資産(仮想通貨)に関する会計処理として、仮想通貨交換業者は、顧客から預託を受けた顧客からの預かり資産(仮想通貨)について管理・処分するための暗号鍵等を管理することになるため、自己の固有財産である仮想通貨と同様に仮想通貨交換業者の貸借対照表に計上すべきかどうかが論点となっていた。

下記の状況を踏まえ、自己が保有する仮想通貨との同質性を重視し、現金の預託を受ける場合と同様に、仮想通貨交換業者は預託者との預託の合意に基づいて預かった時において、その時点の時価により資産として計上することとしたとされている(本実務対応報告56項)(具体的な会計処理イメージは図表3参照)。

  • 仮想通貨の私法上の位置づけが明確ではない中で、一般に仮想通貨自体には現金と同様に個別性がなく、預かった仮想通貨については仮想通貨交換業者が処分に必要な暗号鍵等を保管することから、仮想通貨交換業者は預託者から預かった仮想通貨を自己の保有する仮想通貨と同様に処分することができる状況にある(本実務対応報告55項)。
  • また、預かり資産として預託者の仮想通貨を受け入れた場合に、仮想通貨交換業者が破産手続の開始決定を受けたときには、現時点においては、仮想通貨交換業者の破産財団に組み込まれた預託者の仮想通貨について預託者の所有権に基づく取戻権は認められていないと言われている(本実務対応報告55項)。

 

6 開示

(1) 表示(売却損益)

仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が仮想通貨の売却取引を行う場合、

当該仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示する


とされている(本実務対応報告16項)。

仮想通貨交換業者が行う活発な市場が存在する仮想通貨の売買取引は、通常、同一種類に対する購入及び売却が反復的・短期的に行われ、購入価格と売却価格の差益を獲得するために行われているものと考えられる特徴を踏まえ、仮想通貨交換業者が行う仮想通貨の取引に係る売却損益は、売買取引に伴って得られる差益をその発生した期間における企業活動の成果として純額で表示することが適切であると考えられるとされている(本実務対応報告60項)。仮想通貨利用者も仮想通貨交換業者と同様に、その発生した期間における企業活動の成果として純額で表示することが適切であると考えられるとされている(本実務対応報告62項)。

(2) 注記事項

注記事項は下記のとおりとされている(本実務対応報告17項)。

7 適用時期

適用時期は以下のとおりとされている。

原則適用

2018年4月1日以後開始する事業年度の期首(12月決算会社では2019年12月期の期首)から適用(本実務対応報告18項)

早期適用

本実務対応報告の公表日以後終了する事業年度(12月決算会社では2018年12月期)及び四半期会計期間から適用することができる(本実務対応報告18項)


なお、本実務対応報告を適用するに当たっては、特段の規定がないことから、原則通り、遡及適用することになると考えられる。

Ⅲ  2019年改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」

ASBJは、2019年6月28日に改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(以下「2019年改正実務対応報告第18号」という。)を公表した。

1 公表の経緯・目的

実務対応報告第18号の2018年改正において検討の対象から除かれていた、国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」及び米国会計基準会計基準更新書第2016-02号「リース(Topic842)」を対象に、修正項目として追加する項目の有無について検討が行われた。当該検討を行う際には、IFRSのエンドースメント手続の結果を参考にしたとされている。

実務対応報告第18号の「本実務対応報告の考え方」に基づき、これらの会計基準の基本的な考え方が我が国の会計基準に共通する考え方と乖離するか否かの観点から検討が行われた結果、新たな修正項目の追加は行わないこととされた。

なお、我が国の会計基準におけるリース会計の取組みについては、別途、審議が行われている。

 

2 適用時期

2019年改正実務対応報告第18号は、公表日以後適用する。

以上

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