ナレッジ

IASBは、COVID-19に関連した賃料減免に関する実務上の救済措置を延長するIFRS第16号の修正を公表

IFRS in Focus|月刊誌『会計情報』2021年5月号

トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

注:本資料はDeloitteのIFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレターをご参照下さい。

本IFRS in Focusでは、2021年3月に国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第16号「リース」の修正である「2021年6月30日より後のCovid-19に関連した賃料減免」の概要を解説する。

  •  2020年5月、IASBはIFRS第16号を修正し、COVID-19に関連した賃料減免がリースの条件変更であるかどうかを借手が評価することを免除する実務上の便法を、借手に対して提供した。
  • 2020年の修正は、いくつかの条件の中で特に、リース料の減額が当初の期限が2021年6月30日以前に到来するリース料にのみ影響を与える賃料減免に実務上の便法を適用することを、借手に対して認めている。
  • パンデミックの継続的な性質のために、IASBは、リース料の減額が当初の期限が2022年6月30日以前に到来するリース料にのみ影響を与える賃料減免に実務上の便法を適用することを、借手に対して認めるために、当該日付を延長することとした。
  • 本修正は、2021年4月1日以後に開始する事業年度に適用される。借手は、本修正が公表された日、すなわち2021年3月31日現在で発行が未だ承認されていない財務諸表を含め、本修正を早期適用することが認められる。企業は、本修正を遡及的に適用する。

 

498KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

背景

2020年5月、IASBはIFRS第16号を修正し、COVID-19に関連した賃料減免がリースの条件変更であるかどうかを借手が評価することを免除する実務上の便法を、借手に対して提供した。実務上の便法を適用する借手は、COVID-19に関連した賃料減免をリースの条件変更ではないかのように会計処理する。
2020年5月の修正の詳細については、IFRS in Focus「IASBが、COVID-19に関連した賃料減免(rent concessions)について、IFRS第16号の修正を最終化」 *1を参照いただきたい。

本実務上の便法は、COVID-19の直接の結果として生じる賃料減免であり、かつ、特定の条件に該当する場合にのみ適用される。2020年5月の修正において、条件の1つは、リース料の減額が、当初の期限が2021年6月30日以前に到来するリース料にのみ影響を与えることであった。

多くの法域においてパンデミックの継続的な影響は2020年5月と少なくとも同じ程度に重大であり、パンデミックの継続的な重大さ及び長期化している影響はIASBが実務上の便法を開発した時点では想定されていなかったことを、利害関係者は指摘している。その結果、貸手は、2021年6月30日より後のリース料を減額する賃料減免を借手に与えている。それらの賃料減免の多くは、それ以外の点では実務上の便法の対象となるものである。

IASBは利害関係者の懸念を認識し、当該救済措置を延長することを決定した。

 

修正

IASBは、上記の実務上の便法の利用可能な期間を延長するためにIFRS第16号を修正する。これより、実務上の便法を適用するための他の条件が満たされている場合、実務上の便法はリース料の減額が当初の期限が2022年6月30日以前に到来するリース料にのみ影響を与える賃料減免に適用される。これが実務上の便法に加えられた唯一の修正である。

 見解

2名の理事が、本修正の公表に反対票を投じた。彼らの見解では、実務上の便法が利用可能な期間の延長は、実務上の便法を適用する借手と適用しない借手との間の比較可能性をさらに妨げることになる。彼らは、2020年5月の修正に対する財務諸表の利用者からの支持は、12ヶ月の延長という特定の時間枠に実務上の便法を限定することを前提としていたと指摘している。また、彼らは、IASBが2020年5月の修正を開発した主な理由の一つは、当時、借手がIFRS第16号を初めて適用していたことであるが、もはやその状況には当てはまらないとも述べている。



発効日及び経過措置

本修正は、2021年4月1日以後に開始する事業年度に適用される。借手は、本修正が公表された日、すなわち2021年3月31日現在で発行が未だ承認されていない財務諸表を含め、本修正を早期適用することが認められる。

借手は、本修正を遡及的に適用する。そのため、本修正の適用開始の累積的影響を、借手が修正を最初に適用する事業年度の期首現在の利益剰余金(又は、適切な場合には、資本の他の内訳項目)の期首残高の修正として認識することとなる。

借手は、2020年5月の修正又は2021年3月の修正の結果として契約が実務上の便法の対象となったのかどうかに関係なく、同様の特性を有し、かつ同様の状況にあるすべてのリース契約に実務上の便法を整合的に適用しなければならない。

 見解

IASBは、結論の根拠において、本修正は、実務上の便法を適用するための適格要件の中の日付のみを修正していると述べている。すなわち、新しい実務上の便法も実務上の便法を適用する(又は適用しない)新しい選択肢も導入していない。したがって、すでに実務上の便法を適用している借手は、同様の特性を有し、かつ同様の状況にあるすべてのリース契約に、今回延長された実務上の便法の範囲も適用しなければならない。

借手が適格な賃料減免に対して実務上の便法を適用しないことを過去に選択していた場合、本修正は、その借手が実務上の便法の適用を選択することを認めていない。

適格な賃料減免に対して実務上の便法を適用する(又は適用しない)ことに関する会計方針を確立していない借手は、依然として実務上の便法を適用すると決定することができる。ただし、そのような借手は、同様の特性を有し、かつ同様の状況にあるすべてのリース契約に対して遡及的かつ整合的に適用することを要求される。


 

指定国際会計基準への指定

2020年5月の修正と同様に、本修正について指定国際会計基準に指定するため、金融庁から、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」の一部改正(案)が公表され、コメント募集が行われることが見込まれる。 *2

以上


*1 本誌2020年7月号をご参照いただきたい。
*2 2021年4月9日現在、改正案は公表されていない。

 

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

お役に立ちましたか?