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IASBは、次の5年間におけるIASBの優先事項が何であるかについて見解を求める

IFRS in Focus|月刊誌『会計情報』2021年6月号

注:本資料はDeloitteのIFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレターをご参照下さい。

トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

本IFRS in Focusでは、2021年3月に国際会計基準審議会(IASB)が公表した情報要請「第3次アジェンダ協議」(RfI)の内容を解説する。

  • IASBは、戦略的方向性及び活動のバランス、例えば、既存の基準の一貫した適用のような他の活動に費やす時間と比較して、新規のIFRS基準の開発にどれだけの時間を費やすべきか、に関する見解を求める情報要請を公表することにより、第3次のアジェンダ協議を開始した。
  • IASBは、どの財務報告の論点を優先すべきか、そして2022年から2026年の作業計画にプロジェクトを追加する要件に関する見解も求めている。
  • RfIのコメント期間は、2021年9月27日に終了する。
530KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

背景

5年ごとに、IASBは、その作業計画に関する公開の協議を行うことが、そのデュー・プロセスによって要求されている。この見直しの主要な目的は、IASBの作業計画に追加される可能性のあるプロジェクトを評価するための要件、及びIASBの作業計画で優先される可能性のある新規の財務報告の論点を含む、IASBの作業計画の戦略的方向性及びバランスに関する公式なインプットを求めることである。

RfIに対する回答は、2022年から2026年までの作業計画における活動及び新規プロジェクトをどのように優先度をつけるかを決定する際に、IASBの考えに貢献する。

IFRS財団の評議員会は現在、サステナビリティ報告基準の設定に対するIFRS財団の役割の拡大の可能性を検討している。 したがって、本アジェンダ協議は、当該論点がIASBの作業の現在の範囲に関連する場合を除いて、サステナビリティ報告に関連する問題に関するフィードバックを求めているものではない。

 

Rflの内容

見解を提供する利害関係者を支援するために、RfIは以下の情報を提供している。

  • 活動の現在の集中度のレベルの表示を含む、それぞれの主要な活動の概要
  • それぞれの主要な活動の集中度のレベルを上げる場合に、IASBは何が可能かの説明

 

IASBの活動

RfIは、IASBの主要な活動の全般的なバランスに関するフィードバックを求めている。すなわち、それぞれの活動について現在のレベルの集中度を、増加、変更しない又は減少すべきかどうか。

見解を提供する利害関係者を支援するために、RfIは以下の情報を提供している。

  • 活動の現在の集中度のレベルの表示を含む、それぞれの主要な活動の概要
  • それぞれの主要な活動の集中度のレベルを上げる場合に、IASBは何が可能かの説明

IASBの主な活動と現在の集中度のレベル、IASBが可能であることの例示
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作業計画に追加される可能性のある財務報告の論点の優先度を評価するための要件

IASBは、プロジェクトが既に優先事項として識別されており、プロジェクトの優先度を変更することにより非効率性につながる可能性があるため、現在の作業計画に関するプロジェクトの完了を優先する予定である。 さらに、現在の作業計画には、IASBのデュー・プロセスで必要とされる適用後レビューが含まれている。

2021年3月現在のプロジェクトは以下の通りである。

2021年3月現在のプロジェクト
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プロジェクトを作業計画に追加すべきかどうかを評価するために、IASBは、次の要件に照らしてプロジェクトを評価する。

  1. 投資家にとっての当該事項の重要性。
  2. 財務報告書において取引又は活動の種類を報告する方法に欠陥があるかどうか。
  3. 当該事項が一部の法域では他よりも一般的であるかどうかを含め、事項が影響する可能性が高い会社の種類。
  4. 当該事項が会社にとってどれだけ広がり又は深刻さがある可能性が高いか。
  5. 作業計画において他のプロジェクトとの相互作用する潜在的なプロジェクト。
  6. 潜在的なプロジェクトの複雑性及び実行可能性、及びその成果。
  7. 潜在的なプロジェクトについて適時に進捗するためのIASB及び利害関係者のキャパシティ。

要件の相対的な重要性は、潜在的なプロジェクトの状況によって異なる可能性がある。 上記の要件は、プロジェクトの優先順位付けのための主要な考慮事項を構成する一方で、IASBは、他の主要な基準設定主体の作業ストリームを考慮する。

RfIの一環として、IASBは、プロジェクトの優先度に使用する適切な要件を識別したかどうか、及び他の要件を考慮すべきかどうかについて見解を求めている。

 

IASBの作業計画に追加される可能性のある財務報告の論点

IASBは、現在作業計画に含まれるプロジェクトを継続する時間を確保し、IFRS第9号、IFRS第15号、IFRS第16号の適用後レビューを実施し、時間的制約のあるプロジェクト(例えば、適用後レビューの結果)を行った後、2、3の大規模プロジェクト、又は4、5の中規模プロジェクト、又は7、8の小規模プロジェクト(又は大規模、中規模及び小規模プロジェクトの同等の組合せ)を開始できることを期待している。

アジェンダ協議の準備において、IASBは、潜在的なプロジェクトを識別するために、主として諮問機関及び常設の協議グループにアウトリーチを実施した。

このアウトリーチは、次の潜在的なプロジェクトを識別した(それぞれの説明はRfIで提供されている)。

潜在的なプロジェクト
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このリストは、網羅的なものではなく、作業計画案を表すものでもない。 IASBは、RfIの回答者に対し、上記で識別された潜在的なプロジェクトのそれぞれを(高、中、又は低に)ランク付けし、取り扱うことが可能である追加の財務報告の論点について説明することを求めている。

 

コメント期間と次のステップ

RfIのコメント期間は2021年9月27日に終了する。

IASBは、2022年第2四半期に受け取ったフィードバック、及び2022年から2026年の活動及び作業計画を要約した文書を公表することを目的として、2021年第4四半期にRfIに関する審議を開始する予定である。

以上

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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