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IASBは、特約条項付の負債の分類に関するIAS第1号の修正を提案する

IFRS in Focus|月刊誌『会計情報』2022年1月号

トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

注:本資料はDeloitteのIFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。
この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレターをご参照下さい。

本IFRS in Focusは、2021年11月に国際会計基準審議会(IASB)が公表した、公開草案ED/2021/9「特約条項付の非流動負債」(IAS第1号の修正案(以下、「ED」))に含まれる提案について解説する。

  • IASBは、企業が報告期間後の12か月間に準拠しなければならない条件は、対応する負債の流動又は非流動への分類に影響を与えないことを規定するよう、IAS第1号を修正することを提案する。
  • 企業は、そのような条件の対象である非流動負債を財政状態計算書において区分して表示する。また、非流動の分類が、報告日後12ヶ月以内、条件に準拠していることが条件であることを示す記述を使用する。
  • また、企業が準拠することが要求される条件、報告期間の末日の状況に基づいて当該条件を準拠していることになるかどうか、及び報告期間後に当該条件を企業が準拠する見込みであるかどうか、及びどのように準拠する見込みなのかを、企業は注記において説明することが要求される。
  • 本修正は遡及的に適用され(IAS第8号を適用する)、発効日は2024年1月1日より前にはならない。早期適用は認められることが提案されている
  • EDのコメント期間は、2022年3月21日に終了する。
 
 
491KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

背景

IAS第1号「財務諸表の表示」は、企業が負債を非流動として分類するためには、企業が報告期間の末日に、負債の決済を報告期間後少なくとも12か月にわたり延期することのできる権利を有していなければならないことを要求している。

2020年、IASBは「負債の流動又は非流動への分類」というタイトルのIAS第1号の修正を公表した。本修正では、IASBは、負債の決済を延期する権利が、報告期間後12か月以内に特定の条件(しばしば「特約条項(コベナンツ)」と呼ばれる)に準拠することが条件である場合に、当該権利があるかどうかを企業がどのように評価するかを規定した。
利害関係者はその後、報告期間の末日に特約条項に準拠していない場合、たとえ当該特約条項の準拠が報告期間後12か月以内にのみ要求される場合、負債を非流動として分類できるかどうかについて質問した。IASBは、当該利害関係者の懸念に対処することを決定した。

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* 2020年1月公表の「負債の流動又は非流動への分類」(IAS第1号の修正)の詳細については、本誌2020年4月号「IFRS in Focus:IASBが、負債の流動又は非流動への分類を明確化するためにIAS第1号を修正」を参照いただきたい。


 

修正案

修正案は、企業が報告期間の末日以前に特約条項に準拠することが要求される場合、報告日後少なくとも12か月間負債の決済を延期する企業の権利に影響を及ぼすことを規定する(したがって、負債の流動又は非流動への分類を評価する際に、考慮する必要がある)。これは、契約の準拠が報告日後にのみ評価される場合でもそうである(例えば、報告日後にのみ準拠が評価される報告日における企業の財政状態に基づく特約条項)。

また、企業が報告期間後の12か月間特約条項に準拠しなければならないことのみでは、決済を延期する権利に影響を受けないことを規定することも提案される。EDは、企業がそのような特約条項の対象である負債を非流動に分類する場合、当該負債が財務諸表において区分して表示することを示している。区分表示には、非流動の分類が、報告期間後12か月以内、条件に準拠していることが条件であることを示す記述が含まれていなければならない。

さらに、12か月以内に債務の支払いを要することとなるリスクを財務諸表の利用者が評価することを可能にする情報を、企業は注記に開示することが要求されることとなる。特に、企業は、企業が準拠することが要求される特約条項、報告期間の末日の状況に基づいて当該条項に準拠していることになるかどうか、及び企業が報告期間の末日後に当該条項を準拠する見込みであるかどうか、及びどのように準拠する見込みなのかを説明することとなる。

見解

2名のボードメンバーは、特約条項に準拠することが条件である非流動に分類される負債の区分表示の提案に同意しなかったため、EDの公表に反対した。彼らの見解では、区分表示は、IFRS基準の原則ベースのアプローチと矛盾する。IAS第1号にすでに含まれている分解の要求事項により補完される注記における開示を通じてこれらの負債を識別することで十分である。

彼らはまた、報告期間後12か月以内に、企業が特約条項に準拠する見込みであるかどうか、及びどのように準拠する見込みなのかを開示することに反対した。これは、企業がその点で将来見通し(forward-looking)に関する情報を提供することが要求されるべきではないためである。財務諸表の利用者は、例えば現在及び過去の報告書及び追加の経済情報と共に特約条項について提供される説明を使用することにより、この開示なしに12か月以内に債務が支払いを要することとなるリスクを評価することができるべきである。

 

さらに、報告期間後12か月以内に負債が支払いを要することとなる可能性があり、これが相手方又は第三者の裁量で行われる場合、又はその発生が企業の将来の行動の影響を受けない不確実な将来事象に左右される場合(例えば、金融保証又は保険契約負債)、企業が決済を延期する権利を有しないことを規定することを提案する。EDは、このような状況では、決済を延期する権利は、企業が準拠しなければならない条件の対象とならないことを指摘している。

見解

EDのBC19項は、負債が相手方又は第三者の裁量で12か月以内に支払いを要することとなる可能性がある場合、又はその発生が企業の将来の行動の影響を受けない不確実な将来事象に左右される場合、報告日後12か月以内に負債の決済を避けるために、企業が準拠しなければならない条件がないことを示している。当該項は、したがって、これらの状況は、修正案の範囲内ではないと結論付けている。



経過措置、発効日、コメント期間

EDは、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」を適用し、本修正の遡及的な適用を提案している。

IASBは発効日を提案していないが、2024年1月1日より前に本修正を適用しないことを規定する。早期適用は、認められることが提案されている。

同時に、IAS第1号に対する2020年修正「負債の流動又は非流動への分類」の発効日を、修正案の発効日に合わせることが提案されている。2020年の修正は、これがなければ2023年1月1日から適用される予定であった。これは、企業が短期間で負債の分類を2度評価しなければならないことを避けるためである。

EDのコメント期間は2022年3月21日に終了する。

以 上

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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