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2022年6月30日以後に終了する期間に関する報告-トルコにおけるインフレ

iGAAP in Focus 財務報告|月刊誌『会計情報』2022年6月号

注:本資料はDeloitteのIFRS Global Officeが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、原文については英語版ニュースレターをご参照下さい。

トーマツIFRSセンター・オブ・エクセレンス

本iGAAP in Focusは、トルコのインフレ状況に関連して生じる論点を解説し、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」をどのように適用するかに関するガイダンスを提供する。

499KB, PDF ※PDFダウンロード時には「本記事に関する留意事項」をご確認ください。

はじめに

IAS第29号は、機能通貨が超インフレ経済である企業の財務諸表について、適切な一般物価指数における変動の影響を遡及的に調整することを要求している。当該調整は、IAS第21号「外国為替レート変動の影響」に従い、在外営業活動体の親会社の表示通貨への再換算に組み入れられる。これらの要求事項は、年次財務諸表及びIAS第34号「期中財務諸表」に基づいて作成された期中財務諸表にも等しく適用される。IAS第29号には、超インフレに関するいくつかの特徴が含まれており、その中に3年間の累積インフレ率が100%に近づいているか又は100%を超えているという特徴が含まれている。

  • トルコにおけるインフレ水準は、しばらく高い状態が続き、2021年12月から現在までの月間の大幅な上昇により、インフレ指標は3年間の累積ベースで100%を超える結果となった。超インフレの定性的指標も、程度はさまざまであるが、トルコにおいて存在すると理解されている。
  2020年12月31日 2021年6月30日 2021年12月31日 2022年3月31日

3年間の累積消費者物価指数*

54.2%

53.2%

74.4%

109.4%

*出典:トルコ統計局*1

  • 国際通貨基金(IMF)は、2022年4月の世界経済見通しデータベース*2において、トルコの3年間の累積インフレ率は2022年末までに138%に達すると予測している。
  • IAS第29号において、すべての企業が同一の時点から、同一の一般物価指数を使用してインフレ会計を適用することが望ましいと記述していることに照らして、我々は、公表された消費者物価指数を使用して、2022年6月30日以後に終了する期間におけるトルコ・リラを機能通貨とする営業活動体(operation)に関してインフレ会計の使用が要求されると考える。
  • それより前の報告期間については、トルコにおいて重要性のある営業活動体を有する企業は、将来の期間に適用されるインフレ会計の可能性について明確な開示を提供しなければならない。

 

トルコの在外営業活動体の再換算

トルコ・リラを機能通貨とする企業が、その財務諸表を異なる通貨で表示するグループの在外営業活動体(子会社、共同支配企業、関連会社又は支店)である場合、グループの財務諸表に含めるために再換算される前に、インフレ会計がトルコ企業の財務諸表に遡及的に適用される。

営業活動体が超インフレ経済の機能通貨を有する場合、IAS第21号は、在外営業活動体の再換算のために異なる方法を要求することに留意すべきである。すなわち、すべての金額(収益及び費用を含む)が、報告日におけるトルコ・リラと表示通貨との間の為替レートで換算される。

超インフレの在外営業活動体の換算の影響及び経済が超インフレになったときの比較情報の表示に関する多くの論点は、アルゼンチンのインフレの文脈でIFRS解釈委員会によって検討され、結論は2020年3月のIFRICアップデート*3にて公表されている。

超インフレと外国為替会計のこれらの側面及びその他の側面の詳細については、iGAAPのサブスクライバーはデロイト会計リサーチツール(DART)*4にて入手可能である。

 

2022年6月30日以後に終了する期間に関する財務諸表の開示

IAS第1号「財務諸表の表示」の重要な会計上の判断に関する要求事項及びIAS第34号重大な事象及び取引に関する要求事項により、トルコにおいて重要性のある営業活動体を有する企業は、インフレ会計の使用及びその影響を、その年次又は期中財務諸表に開示しなければならないことを意味する。これらの開示には、通常、IAS第29号の適用に使用される価格指数の特定及び水準を含めなければならない。

以上

 

*1 https://data.tuik.gov.tr/Kategori/GetKategori?p=enflasyon-ve-fiyat-106&dil=2%0A

*2 https://www.imf.org/en/Publications/WEO/weo-database/2022/April

*3 2020年3月のIFRICアップデートの日本語訳については、ASBJのウェブサイト(https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/ifric_202003.pdf)を参照いただきたい。

*4 https://dart.deloitte.com/iGAAP/

本記事に関する留意事項

本記事は皆様への情報提供として一般的な情報を掲載するのみであり、その性質上、特定の個人や事業体に具体的に適用される個別の事情に対応するものではありません。また、本記事の作成または発行後に、関連する制度その他の適用の前提となる状況について、変動を生じる可能性もあります。個別の事案に適用するためには、当該時点で有効とされる内容により結論等を異にする可能性があることをご留意いただき、本記事の記載のみに依拠して意思決定・行動をされることなく、適用に関する具体的事案をもとに適切な専門家にご相談ください。

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