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人工知能時代の雇用のあり方(1):Deloitte Review issue 21

労働の未来に向かって道を切り開く:企業と労働者と社会制度を同じ方向に向かわせられるか?

人工知能など新たなテクノロジーの出現、人口構造の変化、人材市場のグローバル化といった身の回りで起きている事象は、労働の性質を変え、仕事の再構築や雇用形態の多様化といった大きな変革をもたらす。労働者、企業そして政策が同じ方向に向かって変革へ対応し、社会的および経済的な混乱を防ぐことが求められている。

「未来はここにある」

「労働の未来」という言葉を聞いて何を思い浮かべるだろう?ジョン・メイナード・ケインズは、1930年に発表した「孫たちの経済的可能性(原題:Economic possibilities for our grandchildren)」と題する論文の中で、「技術的失業」と週15時間労働という未来図を提示した。機械が人間に代わってほとんどのことをやってくれる余暇社会という20世紀初頭に語られていたユートピア構想に見切りをつけて久しい。しかし、今日、実際の仕事のあり方が急速に変化しており、今後も変化し続けることに疑問の余地はない。

【中略】 全文はPDFファイルをご参照ください

労働の未来に関する理解を進める上で最も大きな課題は、いかにして、大きく分けて3種類の当事者(個人、企業およびその他の雇主、社会および政府機関)にとっての意味合いを明らかにし、同じ方向を向かせることができるかということである。これらの三者が何とか共通の認識を見出し、新たな機会と課題に取り組むべく足並みそろえて行動しない限り、労働の未来への道はせいぜいデコボコ道が関の山だろう。

最も恵まれた状況下でも、この根本的な労働の質の変化は、個人、企業、公的機関のいずれにとっても困難でストレスに満ちたものとなるだろう。しかし、各組織や政府の政策運営の担い手は、この複雑な状況変化をよりよく理解することで、世界中の労働者と社会全般が来るべき課題を予測し、備える上で助けとなるような措置を講じることができる。

労働の未来に向かって道を切り開く [PDF: 3.96MB]

労働の未来を理解するためのフレームワーク

「労働の未来」はどういう要素で構成されているのだろうか?おそらく、まず、変化を引き起こしている力に着目するのが理に適った方法だろう。当社は経験と研究に基づき、未来の労働の性質と未来の労働力を形成しつつある3つの力を特定した。

「テクノロジー」:例えば、ロボティクス、人工知能(AI)、センサー、データといった分野における技術進歩は、場合によっては、ツールの使い方や概念、さらには、人間と機械の相互補完性や代替性に関する考え方を根本的に変えるような全く新しい仕事のやり方を生み出した。

「人口構造」:人口構造の変化によって世界の労働力人口構成が変わりつつある。ほとんどの国・地域で人々の寿命は長くなり、全体として高齢化と若年化が進行し、各国で人口の多様化が進んでいる。さらに厄介なことに、先進国(と中国)でかつてないほど高齢化が進む一方、若年層がますます途上国に集中するようになる。

「引き寄せる力」:デジタル技術と長期的な政策転換を主たる要因として、個人や組織はかつてなく大きな「引き寄せる力」(必要なときに必要なだけ人やリソースを探し利用する力)を発揮できるようになっている。今日では、組織も労働者も世界の人材市場にアクセスできるようになっている。ネットワークとプラットフォームによって、個々の組織や労働者が互いにやりとりするという新たな可能性が切り開かれたからである。顧客の力が強まり、生産性の高いツールや機械が入手しやすくなり、より小規模な企業やベンチャー企業がより多くの創造的な仕事を引き受ける機会が増えることによって、こうしたプラットフォームに対する需要はさらに高まることになるだろう。

図1:労働の未来を理解するためのフレームワーク
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労働の未来の方向づけに影響を及ぼしている力は他にもあるが、それらはより広範な経済状況の一部となっているか、上記の3つの力と一体化している。例えば、グローバル化は長期的なトレンドであるが、そのトレンドは上記の「テクノロジー」、「人口構造」、「引き寄せる力」によって強化される。

これらの3つの力は、労働と労働力に2つの重要な影響をもたらしている。第1に、テクノロジーによって、労働の性質が変わり、各組織はほとんどの仕事の再構築を迫られている。その結果として、共感、社会的知性や情緒的知性、状況設定を行い仕事上の問題を明確にする力といった人間ならではのスキルを活用するために仕事の再編成が起こるだろう。また、技術変化の速度が加速することから、労働者は必要とされる人材であり続けるために新たなスキルを学び続けなければならなくなるだろう。

第2に、雇主と労働者の関係が変わりつつある。かつて、ほとんどの労働者は各種手当てと決まった額の給与が支払われるオンバランスの常勤従業員だったが、未来の雇主は、フリーランスからクラウドソーシング、業務請負まで、常勤雇用以外のさまざまな形態で個々の労働者を雇い入れることで、事業活動の相当部分を処理することになると予想される。

こうした労働の性質と労働力の変化は、個人、組織、公的政策立案者に大きな影響を与えることになるだろう。いずれも、未来の労働の新たな現実に適応する必要に迫られ、変わることを余儀なくされている。

【中略】

結論:未来に向けたフレームワーク

労働の未来は急速に展開しつつある。大きな混乱と痛みをもたらす恐れのある移行とさまざまな可能性が前途に待ち受けているが、現時点においては、個人も、企業も、政府機関も準備ができていない。この枠組みは、個人、さまざまな組織、公共政策立案者に必要な情報を提供することで、労働の未来に向かって自ら積極的に道を切り開こうとする意欲を引き出し、来るべき移行をできる限り建設的かつ生産的で円滑なものとするために、一丸となって直ちに行動を起こすよう促すものである。

いずれの当事者も、目の前に迫っている大きな力がもたらす影響とそれが労働と仕事の再構築に与える影響に対処するためにどのような準備をする必要があるのか、今この時点で、計画を立てておく必要がある。

  • 個人は、より長期にわたるキャリアを視野に入れ、その過程として複数の段階があり、その各段階で継続的な訓練と新たなスキルの習得が必要になると想定する必要がある。
  • 企業は、ますます高度化する機械の能力を生かすために労働と仕事の再構築に向けて準備を進めるとともに、労働者を再教育し、より付加価値が高く生産的で魅力的な仕事に再配置し、スマートマシンや多様な労働者(オンバランス人材、オフバランス人材、クラウドワーカー、世界各地の人材)と一緒に働けるようにする必要がある。
  • 政府機関は、継続的な教育の財源確保、移行コスト軽減のためのプログラムの策定、新たなタイプの労働・労働者と起業家精神にあふれた経済をサポートするための規制枠組みの改正など、教育に関する課題に対処する準備を積極的に進める必要がある。

英語原文はこちらをご覧ください
Navigating the future of work: Can we point business, workers, and social institutions in the same direction?
(Deloitte Review, issue 21)

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