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海外拠点における組織・人事の課題把握に向けて

「組織・人事アセスメントサービス」で人事方針を考える

「海外拠点における現状課題・優先取り組み事項」をお客様とともに的確に把握していくツールがここでご紹介させていただく「組織・人事アセスメントサービス」です。このサービスを通じて得られる「生」の情報は、グローバル人事方針を考え、各拠点と歩調を合わせて課題解決・リスク管理を行っていくために有用な礎となります。(人事・組織コンサルティング ニュースレター Initiative Vol.34)

1. はじめに

日系企業のグローバル人材マネジメントは、複雑化の一途を辿っています。少し前までは単一でシンプルな機能(例えば工場や駐在員事務所)をベースとした海外拠点も、現地市場の売り上げや重要性が増す中で、業務の多機能化や、戦略的な役割の拡大を期待される流れにあります。これらの内的な要因に加えて、BRICs市場の拡大、M&Aの加速、主要取引先の海外展開等の外的変化に対応していくために、急速にグローバル人事部の役割も変わってきています。また、その進化系として、R&D、調達、製造、販売等のチェーンを地域最適の視点でリンクする目的で統括会社を設立する先進的な企業も増えています。

 

海外拠点の数や重要性が高まる中、本社の限られたリソースで何とか対応を図っているのが多くの企業の現状ではないかと思います。現地化と言っても一朝一夕には達成できず、一方で日本人に依存した海外経営体質には限界があります。この困難な状況の中、いかに海外で「最適」な人材マネジメントを実現していくかという課題にグローバル人事部は直面しています。「最適」の定義には、会社の立ち位置による違いはありますが、少なくとも、本社の理念・経営方針を伝え、課題を把握し、現地での活動を何らかの形で支援することを基本的な役割として求められているのではないでしょうか。

弊社がお客様の本社・地域統括会社・その他の海外拠点人事における課題解決をご支援させていただく中で、現場レベルでの現状把握の大切さを痛感させられています。正解のない問題に対して最適な解決策を考えるにあたっては、どれだけ課題を的確に捉えるかが何より重要です。文化、言葉、偏ったコミュニケーションルート等の理由により、海外拠点の現地、現物、現実の情報を本社人事はなかなか掴むことができません。その中で「海外拠点における現状課題・優先取り組み事項」をお客様とともに的確に把握していくツールがここでご紹介させていただく「組織・人事アセスメントサービス」です。このサービスを通じて得られる「生」の情報は、グローバル人事方針を考え、各拠点と歩調を合わせて課題解決・リスク管理を行っていくために有用な礎となります。

2. 海外拠点の組織・人事アセスメントサービス

Deloitte Tohmatsu ConsultingのGlobal Human Capital Teamにてご提供させていただいている本アセスメントサービスは、海外拠点における組織・人材マネジメント上の課題を多面的な視点から抽出し、優先的に取り組むべき課題を特定するための診断ツールです。弊社データベースには、グローバルで共有されている760項目の事業戦略および組織・人事に関する確認事項があり、調査対象国の労働法・人事慣行、お客様からご提供いただく関連資料・インタビュー等から重点確認事項をピックアップし、カスタマイズいたします。

調査領域は、人事部業務に限らず、組織・人が関わる事業戦略からオペレーションまで多岐に渡っています。「優秀人材の採用・定着」、「適正な労務費管理」、「pay for performanceの実践」、「体系的な社員教育・キャリア管理」を含む人事関係項目に加え、「貴社事業ビジョン・戦略は社員に伝わっているか」、「ブランドイメージはどのようなものであり、それに沿った働き方となっているか」、「オペレーションは効率的か」、「駐在員・出張者は役割を果たしているか」等、より事業に直接的に関連した項目の調査も行っております。

 

以下、実際のプロジェクトで行われたアセスメント対象領域です。

(1) 企業理念

(2) 事業戦略

(3) 営業・マーケティング戦略・方針

(4) オペレーション戦略・方針

(5) 人事戦略・方針

(6) 要員・労務費管理

(7) 人事管理

(8) 労務管理

(9) コンプライアンス・安全

(10) 人材育成・キャリア

(11) コミュニケーション・組織風土

(12) 人事情報システム
 

アセスメントは現地に実際出向き、クライアント企業の管理職・スタッフ、出向者・現地採用者、人事部門・オペレーション部門、ベテラン・新規採用者等の様々な対象者に対して、海外コンサルティング経験豊富な弊社東京事務所メンバーが英語または日本語でインタビューを行うことが基本です。また、現地のデロイト事務所と協同で調査をさせていただくことも可能です。アセスメントにおいては海外拠点を評価するという位置付けでなく、ともに会社を良くする為に課題を明確にし、問題解決にあたるというコミュニケーションが肝要です。相互信頼を深め、経営のベクトル合わせの一環として活用できるのが組織・人事アセスメントの特徴です。

3. アセスメントの成果

弊社が実際にアセスメントを実施させていただきました事例から、いくつかの代表的な成果(課題)を以下に挙げさせていただきます。
 

(1) 会社の向かっている方向性の共有

スローガン的なターゲットももちろん大切ですが、その背景や達成するための施策(新商品の導入等)、スケジュール感の共有をマネジメントチームで行い、ローカル社員に落とし込んでいくことが重要です。唐突に色々なことが決まり、準備不十分なままプロジェクトが始まる(実際に実行するのは自分たち)という印象を抱くこともあるようです。

 

(2) PDCAサイクルの実施

方針に沿ってそれぞれの役割、優先取り組み事項が決まり、スケジュールを立てて業務を遂行することが肝要です。また、定例会議等で進捗を共有して課題解決にあたるという働き方の確立が求められます。日本でも本質的には変わりませんが、やるべきことが明確でない、方針がぶれる、会議が何のためにあるのか分からない状況はストレスの源です。

 

(3) 業務改善

担当者は往々にして「このように働くと効率がもっと上がる」、「既存顧客の要望に迅速に応えられるようにするには今の体制では困難」、「XX部署は会社全体の足を引っ張っている」というような考え(苦情)を持っています。中には勘違いや、「日本の働き方はこの市場には合わない」等のより本質的で建設的な指摘に発展する場合もあります。

 

(4) 処遇関係の取り扱い

「制度・規則に関する理解(説明)が不十分」、「市場水準・成果に見合った報酬が支払われているか」から、「何故XXは自分より早く昇格したのか」まで多岐に渡って意見が挙がります。成果主義と年功的な処遇のバランスや福利厚生(医療・年金)は当該国の慣行によるところもありますが、会社の人事方針を説明し、制度の理解を得る重要性は日本より高いです。

 

(5) コミュニケーションの円滑化

言語の問題も多少ありますが、それより職場の雰囲気と2 wayコミュニケーションが重視されています。情報が適切に管理され、必要なタイミングで共有されているか、また、社員の考えを吸い上げる仕組みが機能しているか。暗黙知ではなく、表現力が問われています。

 

(6) 出向者・出張の役割強化

出向者はその業務遂行力、経験、性格、海外処遇、経費の使い先等、常にローカル社員の話題の的です。役割(ライン長またはコーディネーター)、ミッション(成果、本社への報告、ローカル社員の育成および権限委譲)の明確化はもちろん、異文化で力が発揮できる武器を派遣元が持たせる必要があります。派遣前研修のみならず、採用、活用、育成、処遇のキャリア管理を行うことが重要です。

尚、インタビューでは課題のみならず、「この会社で働く意義」、「会社の将来性」、「会社における自身の成長」等に纏わるポジティブな意見も多く聞かれます。また、多くの社員は業務多忙の中、インタビュー前から話すことを考え、面倒なことでも「会社のことを思って発言する」、「役に立つのであれば」と我々が襟を正すこともあります。余談ですが、インタビュー結果をクライアントにフィードバックする際、「そこまで考えていてくれたとは」、「あいつがそんな立派なことを」という驚きと気付きが毎回あることも付け加えさせていただきます。

4. アセスメントの活用

インタビュー後、明らかになった課題を領域、拠点、人材セグメントに応じて仕分けし、課題対応の緊急性、組織へのインパクトの観点で分析をさせていただきます。また、それぞれの課題を大きいものから順に整理し、解決の方向性と取り組むスケジュールを本社・拠点・弊社で議論をさせていただきます。主要課題の特定および今後の対応策の議論を通じ、本社・拠点が役割を分担し、実態を踏まえた組織・人事管理を実現できるよう、フルサポートをいたします。

「課題が見えないことが課題」、「本社人事として拠点をどのようにサポートすべきか分からない」状況を脱却し、「課題は多いが紙に落ちているし、優先順位も付いているのでできることからやっていこう」というマネジメント(課題解決)可能な状態まで持っていくのが組織・人事アセスメントサービスの真骨頂です。

海外拠点における組織・人事アセスメントサービス

海外拠点を持つ日系グローバル企業の本社人事の皆様から、拠点の組織・人材マネジメントに関して以下のような悩みを聞くケースが増えています

 

“一昨年から新興国市場への進出が一気に進み、拠点の数が増える一方で、本社からの出向者/駐在員の派遣が追いつかない”

“現地に派遣した出向者は言葉や文化の違いから、現地社員とのコミュニケーションに苦労していると聞いている。現地社員の採用も苦戦しているらしい”

“本社人事として拠点のサポートをすべきとは認識しているが、何が問題になっているのか、どこから手をつけていいのか分からない・・・”

海外拠点での組織・人材マネジメントを支援するためのデロイトのサービスをご紹介致します。

(1.1MB, PDF)

ニュースレター情報

Initiative Vol.34

著者:デロイト トーマツ コンサルティング
マネジャー 降矢 直人

※上記の役職・内容等は、執筆時点のものとなります。

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