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適正要員管理・適正人件費管理の事例紹介

複数の日系企業で行われた適正要員・適正人件費の管理方法や課題解決方法の検討内容の要点をご紹介します。(人事・組織コンサルティング ニュースレター Initiative Vol.36)

要員・人件費の生産性に関するベンチマーク調査 2016・2017年度版
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はじめに

適正要員管理・適正人件費管理について、最近は経営企画・人事の担当者様からの照会も多く、改めて関心の高いテーマであることを認識している。特に外国人上司が着任したり、外資系よりの経営になったことによるものも多い。弊社のコンサルティング案件としてもこの1年間で急激に増えている。

<日系企業における背景>
本テーマが経営課題になってきているのは、日系企業の場合、団塊世代とバブル入社世代の人員構成上のコブ(ボリュームゾーン)の扱い、過去のリストラや新卒採用数の絞込みによるスリム化後の方向性の悩みといった根本的潜在的課題に加えて、中期経営計画立案やグループ各社の経営管理の方法として何らかの整備・改善が必要といった事業運営上の課題が背景にある。

<外資系企業における背景>
外国人上司や外資系的な経営では、自社の人的生産性の実態やその推移、他社比較を当然のように数値で提示することが求められるということが背景にある。例えば外資系企業で人事情報システムのグローバル導入を推進するプロジェクトマネジャーと会話した際、人事部員一人当たり社員数は200人が(グローバル)基準値だから、日本子会社の150人は何らかの改善可能性がある、という話を聞いたりする。

これは一例でしかないが、通常外資系企業では人的生産性のKPIと基準値を持って管理しており、それを日本の組織に当てはめているだけなのである。

こういった背景で多くの企業が、適正要員・適正人件費の管理方法や課題解決方法を検討している。では、その検討内容とはどういったものなのだろうか。複数の日系企業で行われた検討内容から、要点をご紹介する。

図表1、人件費マネジメントのフレームワーク(事例)

 © 2010  Deloitte Tohmatsu Consulting Co. Ltd

2.要員・人件費計画の策定フロー

それでは、そのフレームワークを使って行う要員・人件費計画策定の進め方はどうなっているか。典型的なパターンである中期経営計画の策定フローをご紹介しながら説明したい。

<現状および成り行きとあるべき姿(目標)とのギャップの診断>
図表2に示すように、中期経営計画を実現するために必要な「理論上のあるべき要員・人件費」を描く。その「あるべき」を描くには、必ず「現状」が必要になり、「あるべき」と比較するために、過去の実績データを反映させた「成り行き」の要員・人件費を算出する。

そして、「成り行き」と「あるべき」のギャップを明確にし、何が中計実現上の障害になるのかを見きわめていく。 例えば、
・中計上の売上を達成するには営業マンを50%増やし、営業効率(1人当たり売上)を20%改善させなければならない
・利益率改善のためには尐なくともコーポレートの人件費を成り行き比較で25%削減しなければならない 等である。

このようにギャップが明確になると、 例えば、
・営業方法を抜本的に変革しないと中計の達成は見えてこない
・コーポレートの人件費削減でいうと昇給抑制や昇格管理の徹底等の小手先の対応では無理で、業務の見直し
・IT化などの腹をくくった抜本的な改革が必要 といった経営課題がはっきりしてくる。(ギャップ分析と施策の検討について、詳細後述)

本来は、中計策定時に改革が必要な施策の領域と方向性を特定し、中計の活動内容としてそれを計画に入れ、実行することが求められる。 その改革を施した場合の要員・人件費計画を最終化し、KPI毎の目標数値を設定する。

<あるべき姿(目標)と実績とのギャップの診断>
中計開始後は、その目標値と実績のモニタリングを行い、確実な計画実行を促し、中計達成の確度を上げていくことになる。

図表2、要員・人件費計画策定フロー

 © 2010  Deloitte Tohmatsu Consulting Co. Ltd

3.施策の検討ステップ

上記に、中期経営計画策定時に課題(ギャップ)分析と施策の検討を行うことを紹介した。 中計策定以外では、事業構造転換等の経営改革を推進する際にも要員・人件費に関する分析や施策検討が行われる。 それでは、その施策検討の内容やステップはどのようなものか、図表3をもとにご紹介したい。
 

<全社レベルの分析:可視化・過去のトレンド分析、ベンチマーク分析>
まずデータの可視化を行い、過去からの推移等をみて現状を把握する。会社によってはデータを整備するだけで非常に時間がかかってしまうことがある。少なくとも、経営トップ層からこういった類のデータ分析を求められたときに、スピード感をもって対応できるようにデータの整備をやっておくことを薦める。

自社のデータが把握できたら、ベンチマークデータとの比較分析を行う。これによって、自社のポジションが分かり、自社の特徴や課題がはっきり見え始める。 なお、当社ではベンチマークデータとして複数の公開データや当社独自のデータを用いてご要望に応えている。

<目標の設定:事業計画シナリオ別のシミュレーション>
全社レベルの分析の後に、事業計画シナリオ別に要員・人件費のシミュレーションを行う。事業計画シナリオとは計画の達成率を例えば、120%、100%、80%などと設定したもので、その複数のシナリオでシミュレーションを行う。これにより、事業計画とそれに応じたKPI目標の実感を確認することができ、その検討結果として、KPIの目標数値を設定する。

<一定単位別の分析>
全社レベルの分析同様に、事業別や部門別の課題分析を行う。全社レベルの分析から出てくる仮説を、事業別部門別に特有の切り口から詳細の分析を行い、課題を特定する。なかなか臨場感をお伝えできないが、多少詳細にその内容を紹介したい。

<改革施策策定>
事業別・部門別に特定した課題について、対象事業や対象部門との協議を行いながら、施策の策定を行う。他の事業や部門の課題であれば、改革施策の示唆にとどまることになる可能性はあるが、人事・経営企画として支援できることを実施し、少なくともモニタリングにより実態の推移を注意してみていくことになる。 自部門で遂行できる改革であれば、より具体的に計画し実行することになる。

図表3、施策検討のステップ

 © 2010  Deloitte Tohmatsu Consulting Co. Ltd

課題分析の事例

全社的な要員・人件費および生産性の過去推移を分析したところ、要員数はほぼ同数で推移しているにも関わらず、1人当りの生産性は大きく低下していることが明らかとなった。生産性が低下している原因追究のため、更に事業部別に分析を進めると、以下のような課題が明らかとなった。

・既存事業から新規事業へと人員のシフトが行われている

・新規事業は受注が十分に獲得できておらず、人材の投入に対して売上が伸びていない

(=生産性が低い)

・既存事業では、受注量や料金水準が低下しており、その結果売上高の水準が低下し続けている

・また、経験を積んだ中間層を中心に新規事業への再配置が行われていることから、既存事業(特にオペレーション業務を行う現場)では若手中心の要員構成となっている

・結果として、オペレーションの業務効率が低下しており、戦略人材がオペレーション業務の一部を担う等、分業体制が曖昧になり、既存事業全体の生産性が低下している

 

また、現状の採用計画を踏まえた将来シミュレーションを行ったところ、

・現状の採用人数を維持した場合、組織規模が拡大し続けることとなる

・総合職と一般職の比率の変化し、総合職比率が上昇する

・上記に伴い平均人件費が上昇する

という課題が明らかとなった。

これらの課題を踏まえて、中期経営計画の実現および会社の発展に向けては、要員を図表4 の区分でとらえ、今後の会社としての要員・人件費のあり方を検討していくことになった。そして、成長に向けて、要員構造の面から次の2つの方向性を念頭に検討を重ねていくことになった。 

 

【解決の方向性(A)】
・組織規模は拡大させず、総合職を中心とした要員構成へ転換させる

・特に、既存事業におけるオペレーション業務は原則として子会社へ委託する等、抜本的な分業体制の見直しを行い、本社の総合職人材は企画業務のみを行う体制を構築することで、高い生産性を実現し、目標を達成することを目指す

 

【解決の方向性(B)】
・生産性の工場ではなく、人員数を増加させることで、売上規模の拡大を目指す

・但し、業務の役割分担(戦略/オペレーション)と要員構造の根本的な見直しを行い、戦略 業務を担う一部の総合職と、実際のオペレーション業務を担う大部分の一般職という 組織体制を実現することで、平均人件費を抑制し、利益を創出する

ニュースレター情報

Initiative Vol.36

著者: デロイト トーマツ コンサルティング 
パートナー 浜田 健二

※上記の役職・内容等は、執筆時点のものとなります。

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