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ビジネスパートナーの足並みが揃わない

ドキュメント 人事部変革プロジェクト ~企業価値向上に貢献する組織への進化を追う~ 第3回

本連載では、架空の会社・尾張マシナリー社を舞台にストーリーを追い、解説編でポイントを取り上げていく。前回は、「ビジネスパートナー制」を導入するまでの過程を解説した。第3回となる今回は、「ビジネスパートナー制」立ち上げ時のストーリーを用いて、現場の実行力を高めるためのポイントを解説する。(人事・組織コンサルティング ニュースレター Initiative Vol.95)

《ストーリー編》

事例 :
尾張マシナリー(機械メーカー)
登場人物 :
有田…人事本部長、風土改革プロジェクトリーダー
最上…外部コンサルタントのリーダー
笠間…プロジェクトに参画した人事部の若手
瀬戸…人事部次長、HRBPの立ち上げを担う人事部改革のプロジェクトリーダー
大野…外部コンサルタントのHRBP担当リーダー


ビジネスパートナー始動

緊張した面持ちで、人事部次長の瀬戸は会議室の椅子に腰をかけていた。

12月某日、有田から選任されたビジネスパートナー20名が、初めて一堂に集うこととなるキックオフミーティングの初日だった。突然、“ビジネスパートナー”という聞き慣れないものに選任された人事部員らは驚いたに違いない。今回のビジネスパートナー制は、以前失敗に終わってしまった「部門担当人事」と似たところがある。実は、瀬戸も有田と同様、過去に部門担当人事の失敗を経験した一人だった。有田が北米子会社にいる間、尾張マシナリーの開発・生産機能の中心を担う岐阜製作所の労政課長として、現場の切り盛りを任されていた。有田が仕掛けた部門担当人事の動きを絶やさぬよう、本社にその機能が集約されてからも、できるだけ部門側に顔を出すようにしていた。しかし、足元の仕事が忙しくなるなか、人事が出向かなくとも特段問題が発生しない状態が続き、自然と足が向かわなくなったのである。そういった自らの経験も重ね合わせ、同じ轍を踏むまいと心に決めていた。そして、つい先月、有田と瀬戸がビジネスパートナー制について社長に説明に行った際のことだ。「ビジネスパートナーは“我が社の変革のキー”になる」と直接激励を受けた。社長室から出た後、すぐに有田からこう告げられた。

「ビジネスパートナーのリード役を瀬戸で考えているんだ」

瀬戸は「任せてください」と即答した。だから、瀬戸は特別な思いを抱いて、キックオフミーティングに臨んでいた。

開始時間の5分前。会議室には、事務局メンバーや外部コンサルタントを含む総勢27名が着席していた。まずは、有田から社員ヒアリング結果のサマリーや今回の人事部門改革にかける思いが共有された。そして、瀬戸からはビジネスパートナーに対する期待が共有された。

「では……」最上が口を開いた。「早速ですが、各ビジネスパートナーから所信表明をしてみませんか?」

ビジネスパートナーたちは、思案に暮れているように見て取れた。実は今回の招集について、本人へ通達してから今日まで10日しか経っていない。自分のなかで消化しきれないまま参加しているメンバーが大半だった。トップバッターは品質管理本部担当の鍋島だ。

「瀬戸次長の話を聞いて、我々が担う役割こそが人事の仕事なのだと改めて認識しました。現在の業務との兼務とはいえ、できるだけ担当の職場に足を運びたいです」

次に営業第二本部担当の上野がマイクを取った。

「私の担当業務は全社の人員計画立案です。これまではエクセルの数値を操作しているだけで、本質的な問題発見に向き合っていなかった。これからは、リアリティを持って問題解決に取り組みたい」と力強く述べた。

「なかなか頼もしいじゃないか」瀬戸から見ると、少々頼りないと思っていた上野が前向きな言葉を述べていることに安堵を覚えた。

午後の部では、大野が尾張マシナリーのビジネスパートナーとしての目指したい姿を共有することから始めた。大野は、ビジネスパートナーの始動と立ち上げ後の伴走をコンサルタントチーム側でリードするべく、新たにプロジェクトに加わったメンバーだった。続いて、再び大野から活動の指針となる“16週間プログラム”について、他社での具体的な経験を交えながら、説明がなされた。

無事にキックオフミーティング初日のアジェンダが終わり、瀬戸は懇親会会場に足を向けていた。人事部としてほぼ全員で集まり、酒を酌み交わすのは久しぶりだった。瀬戸はビジネスパートナーの立ち上げに際して、「まずはチーム作りが大切だ」と考えていた。ビジネスパートナーの基本的な活動単位は個人である。ゆえに、相談相手がいなければ、うまく進めない者も出てくるだろうと考えたのだった。だから、瀬戸は全国から部員が一斉に集まるチャンスを逃すまいと、今日のミーティング日程が決まった段階から懇親会を目論んでいた。

瀬戸はビジネスパートナー全員と会話したいと思い、ビール瓶片手にテーブルを巡回していた。すると、あるビジネスパートナーが小声で話しかけてきた。

「瀬戸さん、一日の50%の割合をビジネスパートナー業務に充てろって、あれは本当ですか? はっきり言って、無理だと思います。ただでさえ、忙しいのに。今の仕事で皆手いっぱいですよ」と。

なぜ“50%”なのか、理由はあった。瀬戸は部門担当人事の経験から、ビジネスパートナーの成否は“職場でどれだけの時間を過ごすか”にかかっていると感じていた。丁寧に職場の声を聞いて回り、丁寧に整理・分析することが重要なのだと。実際、かなりの時間を要するため、本来ならば専従が望ましいと思った。しかし、現実としては兼務という選択肢を取った。懸念点は、日々のオペレーション業務が優先されがちになることである。だからこそ、あえて、目標値を高く置くことにした。次は、人事経験が長い江山が話しかけてきた。

「部門担当人事のときと同じではないですか? 結局、あれもビジネスパートナーと同じで兼務でしたよね。いまいち役割や責任が明確じゃなかった。これも二の舞になる気がしますね」

隣にいた生産本部担当の吉田が少し酔っぱらって、こうつぶやいた。

「我々の会社には“立ち消え文化”がありますよね。かなりの時間と労力をかけて取り組まないとビジネスパートナー制も立ち消えてしまうのではないですか?」

言葉を交わす度に決して前向きではない声も瀬戸の耳に入ってきた。「昼間の所信表明は何だったのか。しかし、これが本音なのか」と瀬戸は落胆した。確かに、「ビジネスパートナーのミッションこそが本来の人事の仕事」だと言っているわけだから、これまでを否定された気分になるのかもしれない。頭では理解しようとしつつも“やったことない”取り組みに対する心理的な壁がまだまだ高い気がした。瀬戸は帰り際に、最上と大野に問いかけた。

「今日のキックオフはビジネスパートナーのミッションや役割など、漠然とした話が中心だったかと思います。だから、彼らは自分たちの具体的な動きのイメージを持てていないのでは?」

大野はこう答えた。

「そうかもしれません。しかし、有田さんはじめ、我々でさえ、ビジネスパートナー制の導入に初めから賛同していなかったはずです。まずは、目的から理解してもらうことが大切だと思っています。ですが、安心してください。明日は具体的な動きを体感できるようなメニューを用意しています」

「なるほど。しかし、彼らは明日一日で変われるのですか?」今度は最上が答えた。

「それは難しいと思います。今は16週間プログラムの進行中であり、スタートアップの段階です。次の段階では、ビジネスパートナーの行動定着を主眼に置いた52週間プログラムが控えています。少々長期戦にはなりますが、腰を据えて、ともに頑張りましょう」と笑顔で返した。

現状把握作業の型化~仮説を持て~

キックオフミーティング2日目。大野が初日の振り返りを済ませ、今日のアジェンダに入ろうとすると、「ちょっとよろしいですか?」と瀬戸がマイクを持ちながら、前に出てきた。

「皆さん、おはようございます。昨日のキックオフを踏まえて、改めて一言伝えておきたいと思って。ビジネスパートナーの具体的な動き方については、今日、最上さんや大野さんがしっかりと実践的なレクチャーをしてくれるはずです。それでもまだまだ我々には不十分でしょうが、方法論については今後少しずつ理解していけばいいと考えています。ただ、“何のためにビジネスパートナー制を立ち上げるのか”という自分なりの目的・意義はこの2日間で感じとってもらいたいと思います」

瀬戸は人事部員たちの表情を確認しながら話していた。昨日、最上と大野と別れた後、再び部門担当人事の失敗が瀬戸の頭をよぎった。当時はうまくできなかったが、今回のビジネスパートナー制では、最初の段階で、メンバーに大義名分を腹落ちさせることが成功に繋がると信じていた。

大野は、ビジネスパートナーのミッションや期待役割については、すぐに理解してもらえると考えていた。しかし、具体的な方法論については、なかなかイメージできないだろうとも思えた。だから、キックオフの2日目には、本部の問題解決に向けた仮説構築および情報収集のためのトレーニングを準備していたのであった。

まずは、頭の体操という意味を含めて、人事データを使った定量分析のケーススタディを実施した。実際にある部署の等級別社員数/平均年齢/男女比/新卒・中途入社比率/年齢帯別人数/平均勤続年数/時間外労働の月平均時間/部課長の管理スパン等の数値と本部平均/全社平均が整理された表を手渡した。そして、数人のグループに分かれて、この組織で考えうる問題点をグループでディスカッションするというものだ。加えて、 2人ペアで行うロールプレイング形式のトレーニングも幾つか用意していた。実際に想定される場面を設定して、何をどのように聞くかに考えを巡らせ、ペア同士でヒアリングを実践してみるというものだ。最初のケースは、“人手不足”という、いわゆる人材の量の悩みだった。きっと、どの本部長・部長も同じような悩みを持っているはずである。大野は社員ヒアリングのなかでも、よく耳にした声だったので、必ず実践練習しておきたいと思った問題点だった。

最上は、想像していた以上に盛り上がったロープレトレーニングを終えた後に、会場全体に問いかけた。

「この2日間、キックオフミーティングに参加していかがでしたか?」

商品戦略本部を担当する清水が口火を切った。「昨日までは本部のトップである本部長に会って、問題点を聞いてくるなんて全くイメージが湧きませんでした。そもそも何を聞けばいいのかが分からなかった。でも、今は何とかなりそうな気がしています」

清水に触発されるように、次は堤が感想を述べた。「ビジネスパートナーとして価値提供するためにはインプットすべきことが多いなと感じました。自分は教育グループ所属なので、恥ずかしながら人事データを見たこともなかったんです。現時点で、人事全般に対応できる必要があるかと思っていましたが、より重要なのは仮説を持つことですね」

彼らの発言を聞いて、瀬戸の表情には昨日にはなかった笑みが浮かんだ。様々な理由はあるものの、スキル・知識や経験がないから“できない”と思っていたのは、この2人だけではないだろう。懇親会で瀬戸が目の当たりにした反応のように、誰もが未経験な分野に対して腰が引けてしまうのは想定できる。だからこそ、今回のキックオフでのトレーニングが企画されていたのである。

実践的なトレーニングで動き方のイメージをつかんだうえで、大野が皆に共有したいものがあった。ビジネスパートナーとして、まずは担当本部の人材マネジメント計画を立案したい。そのためには、本部の顕在的な問題点を一通り把握する必要がある。大野はスターターキットとして、 3種類のツールを用意した(ヒアリングリスト・課題管理表・BP活動週報)。また、これらに加え、トレーニングの材料として使用した各部署単位での人員構成表と社員ヒアリング結果も配布した。大野はこれらの活用方法を説明する際に、“仮説を持つ”ことの重要性を改めて強調した。有田からは「御用聞きから始めよう」と号令があったものの、本当に御用聞きとなってしまっては、百戦錬磨の本部長たちから返り討ちにあってしまう。有田が描く3年後の姿は“信頼されるアドバイザー”だ。にもかかわらず、何の思考を巡らすこともしない丸腰状態では、そもそもの関係性すら失いかねない。だから、あらゆる情報を駆使して、各本部が抱える問題点の仮説を構築し、ヒアリングすべき項目を事前に用意しておく必要がある。しかし、スキルや知識や経験がないがために、動き出せないことが想定されたため、誰もが活動をスムーズに開始できるようなツールを用意していた。これが他社事例の中で最上が説明していた“動きの型化”のことかと、有田は認識した。

無事に2日間のキックオフミーティングが終了した。その翌週、ビジネスパートナーたちは担当本部の情報収集に一斉に動き始めていた。瀬戸はこれまでフロアを埋め尽くしていた部員たちの離席が目立つことに、多少違和感を抱きつつ、これが“人事のあるべき姿”だと嬉しさも感じていた。

しかし、そううまくはいかなかった。それは週次開催の事務局会議で共有された活動週報から判明することになる。そもそも、担当本部のキーパーソンと接触すらできていない者が数名いることが分かった。最初の動きとして、本部長・副本部長などのキーパーソンに本部単位での問題意識をヒアリングすることは活動の起点である。瀬戸はあるビジネスパートナーを会議室に呼び、理由を尋ねてみると、想定してない回答があった。

「ビジネスパートナーとは人事のスパイなのか? そう簡単に我々の問題点を話すわけにはいかない」と本部から門前払いを受けたというのだ。進捗が芳しくない他の者たちも同様に“人事部に対する信頼感の欠如”が理由なのだろうと瀬戸は見立てた。瀬戸は、この状況を打破するためのアクションについて、最上・大野と相談した。進捗が芳しくない状況を紐解いてみると、大きく2つに分かれると大野は説明した。

  • 自身は動いてはいるが、本部側の反応が良くない
  • そもそも、ビジネスパートナー自身が動いていない

前者は、キーパーソンの性格やビジネスパートナーの役職が多分に影響している。よって、突破口を開くために、有田・瀬戸の同席のもと、最初のコンタクトを取ることとした。本部長に対して、本改革の趣旨や社長からの期待を改めて伝えるしかない。担当ビジネスパートナーに対する信頼はその後に積み重ねていけばよい。後者については、瀬戸自身が対象者に個別に話を聞いて回ると、以下のような声が聞けた。

  • 「御用聞きでいいとは言うものの、本当に“問題を教えてください”と言うだけでは本部長や部長から叱り飛ばされる」
  • 「自分の手元の業務がかなり忙しく、そんな状況下で、優先順位を上げて動け!と言われても違和感がある」
  • 「仮説構築するための頭の動かし方が分からない。また、本部から仕入れた情報を使ってどうするのか、後工程が見えていない」

決して、皆やる気がないわけではない。ただ“長年で染み付いた仕事のスタイル”から抜け出せないだけだと感じた。対応策を決定するために、最上と大野は打ち合わせの場を設定した。時間配分の改善については、人事業務の棚卸しを目的とした簡易的な業務量調査で対応することとした。また、方法論の実装については、隔週の全体会議でのトレーニングに加え、大野が個別面談で綿密にフォローをすることとした。


信頼への兆し

有田と瀬戸の地道なフォローがようやく実を結び、購買本部を担当するビジネスパートナーからは嬉しい声が聞けた。「本部内の上級管理職が集まる週次の定例会に出席してみないか?」と副本部長に声をかけられたという。本人は管理職ではない身分での参加に躊躇していたが、大野はこの話を有田にメールで報告した。有田からは、「それはいいですね。ビジネスパートナーとして大きな一歩を踏み出せたと思います。ぜひ、毎週参加して本部の目標達成に貢献してほしいです」という内容の返信があった。本部の定例会議に参加し始めたビジネスパートナーは他にもいたが、明らかに掴んでくる情報の質と量が変わっている。さらに定例会では、自分の担当業務とは関係なく様々な質問が飛んでくるため、緊張感があるとのことだった。ビジネスパートナーにとっては、会議に向けた準備も必要なので、時間と精神的な負荷が増えることは間違いない。職場から頼られるほどに、彼らの残業時間は増していた。しかし、“職場からの信頼”を積み上げ始めたビジネスパートナーに、大野は手応えを感じていた。

《解説編》

立ち上げ時における動きのポイントは現状把握~型化を通じてスキルの習得を進めよう

経営と人事の一体化を目指すべく、人事部門改革に取り組んでいる尾張マシナリー。今回はHRBP立ち上げ時のストーリーを用いて、現場の実行力を高めるためのポイントをお伝えしたい。

今回は第2回で紹介した“改革を成功に導く7つのポイント”の【1】【2】について、尾張マシナリーの具体策で解説したい。

【1】具体的な活動内容を明らかにし、かつ、「型化」する

(1)“型化”したツールを使用
キックオフミーティングで、大野は情報収集・整理・共有を目的とした幾つかのツールをビジネスパートナーに提供した。型化の主な狙いは、人による“バラつき”を極力減らすことである。同じビジネスパートナーでも、社会人経験年数や人事経験年数は多様である。しかし、一定以上の情報収集ができなければ、全体の足並みが揃わず、推進力を失いかねない。ヒアリングリストを例に挙げると、このリストに沿ってヒアリングすれば、“何かしらの問題点は抽出できる”ようになっている。   

社員ヒアリングで頻出した採用/配置/育成/評価・処遇に関する問題点が自然とあぶり出される質問項目を設定しておいた。このような共通ツールの使用は未経験の取り組みを推進させるには非常に有効である。ただし、型通りに使えばよいという認識を改革の終盤まで持ち続けないように注意したい。また、テンプレート化することにより、活用できていない者が周囲とのレベル差という形で顕著に現れる。そのため、実行フォロー支援が要される対象者も絞りやすい。

(2)個別事情は加味せず、期日は必ず“一律”で設定する(特に改革の立ち上げ時)
同じ部署とはいえ、繁忙状況や業務のマイルストンは人によって様々だろう。部署が異なれば、なおさらである。さらに、本部側の繁閑状況も様々だ。しかし、20名もいるビジネスパートナーの都合に、タスク実行の期日を合わせるのは不可能に近い。調整できたとしても、勢いを欠くことになる。実行すべきは、あくまで全体計画のマイルストンに向かっての遂行である。さらに、そのための事務局機能の設置による進捗管理およびリマインドも欠かせない(詳しくは第4回で解説)。

また、マイルストンを一律で設定すると、個々の進捗の差異が焦りにつながりやすい。作業中の資料をデータベースやフォルダで共有できるようにしておけば、“遅れてはならない”“適当にできない”状態が形成され、有効である。

(3)人選には“こだわる”
最後は人選についてである。人選のセンスによって、改革が成功裏に終わるかどうかが決まる。能動的に動くメンバーが多数召集できればよいが、現実にはそうはいかないケースもある。特に未経験の改革分野では、いっそう難しい。従って、以下のようなタイプを基準に、多少“見込みがある”人も対象としたい。

  • 人事領域において何らかの専門性を持っている
  • 与えるミッションに共感できそう(もともと問題意識も高い)
  • 自らを行動変革できる素養や柔軟性・素直さを持っている
  • 改革により保有能力を開化できる機会が増えている
  • 改革肌であり、すでにプロジェクトメンバーからも頼られている実績がある

つまり、未経験とはいえ、型を使ってPDCAサイクルを回せるバランス感覚がある人を多く人選できると成功に近づく。そして、改革の機運づくりのためにも、このような人が動きを作れるように促したい。


【2】目指す状態を言語化し、共感し合うチームを作る

(1)“目的意識”を持たせる仕掛けを用意する
尾張マシナリーの16週間プログラムでは「まずは“御用聞き”から始めよう」という言葉を何度も繰り返していた。ビジネスパートナーが上位者に対してヒアリングや提言を行うことは簡単ではない。有田は、そのような部員たちの心情を察し、あえて上記のような“取り組みやすい”スローガンを発している。まずは皆が目的意識を持ち、動きやすくなるような何らかの仕掛けを用意することが重要である。しかし、あくまで改革を起動させる一時的なものだという認識を持っておきたい。尾張マシナリーの場合は、ビジネスパートナーの3年後の姿として、“信頼されるアドバイザー”を掲げている。つまり、将来のありたい姿を見据えて、“今”どう働きかけるかを考える必要がある。そのやり方は各社各様ではあるが、チームメンバーとのフィット感を大切にしたい。

(2)全員が“一堂に会する場”を作る
【1】では競争意識の醸成について触れたが、周囲を意識しない人にとっては、他人の進捗状況など、どこ吹く風である。しかし、多少負荷がかかろうとも、定期的に全員が集まって、切磋琢磨できる機会を作りたい。尾張マシナリーの場合は、全体会議の中でディスカッション・プレゼンテーション・トレーニング等を実施することで、必然的に切磋琢磨できる場を作っている。さらに、お互いの状況や悩みを共有することによって、一人で抱え込む必要はないという安心感や動機づけにもつながる(公式の場だけではなく、懇親会のような非公式の場も含めて)。

また、事務局からの方針共有や外部コンサルタントからの情報共有なども、一堂に会する場で同時に行いたい。そうすることで、認識の齟齬が発生することを極力回避でき、足並みを揃えることに対して大きく寄与できる(尾張マシナリーの16週間プログラムでは隔週で全体会議を実施している)。


*   *   *


次回は、ビジネスパートナーとして本格的に動き出した尾張マシナリーの人事部員たちが、限られた時間のなかで、どのように“50%”という目標値に向き合っていったのか。そして、目の当たりにした職場の問題に、どのように解決に取り組んでいったのか。彼らが奮闘する姿を、ストーリーと解説を合わせてお伝えしていきたい。

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ビジネスパートナーの足並みが揃わない
〔PDF, 365KB〕

ニュースレター情報

Initiative Vol.95

著者: デロイト トーマツ コンサルティング
シニアマネジャー 国井 浩士
シニアコンサルタント 藤田 和平

2016.11.28

※上記の役職・内容等は、執筆時点のものとなります。

本コラムは、株式会社ビジネスパブリッシングの許諾を得て、月刊人事マネジメントの記事(2016年3月号掲載)を転載したものです。

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