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「変わりたいのに、変われない」を克服する

日本におけるホワイトカラーの生産性向上の重要性

職場の行動変革やリーダーシップをテーマに、全国を講演して回ることが多いのですが、そのときに必ずお話しすることがあります。日本に拠点をおき、日本人の構成員を中心として活動する組織やコミュニティに共通する問題の多くがここに帰結すると筆者が考えている、大きなテーマです。それは、日本におけるホワイトカラーの生産性の向上の重要性についてです。(人事・組織コンサルティング ニュースレター Initiative Vol.71)

職場の行動変革やリーダーシップと生産性の向上

職場の行動変革やリーダーシップをテーマに、全国を講演して回ることが多いのですが、そのときに必ずお話しすることがあります。日本に拠点をおき、日本人の構成員を中心として活動する組織やコミュニティに共通する問題の多くがここに帰結すると筆者が考えている、大きなテーマです。それは、日本におけるホワイトカラーの生産性の向上の重要性についてです。

 

日本の労働生産性を他のOECD加盟国と比較したデータがあります。

図版(1):日本の労働生産性は効率が良いとは言えません

日本の労働生産性は効率が良いとは言えません

なんとわが国は加盟34カ国中20番目の生産性だということです。先進7カ国と言われる国々(米国、フランス、イタリア、ドイツ、イギリス、カナダ)の中では最低の7番目です。わが国は今や、これらの国のお家芸と言われるサッカーや野球で伍しているにもかかわらず、日本がかつて誇った「生産性」で水をあけられているのを知ったときは、衝撃でした。

 

次に、違った角度でも考えてみたいと思います。

日本の労働人口の推移を表した図をご覧ください

図版(2):この国の労働力人口の推移 少しでも効率を上げることがカギ

少しでも効率を上げることがカギ

棒グラフで表した日本の生産活動を支える「労働力」は、2000年~2005年あたりをピークに落ち始めています。そしてさらに注視すべきことは、右目盛の%で表した折れ線グラフです。右肩上がりになっていますが、これは労働人口全体に占める60歳以上の人口です。すなわち、労働人口が減っていくだけではなく、高齢化が進んでいることを示しています。もちろんホワイトカラーの生産性と年齢の間に相関関係を見出すことの是非は議論の余地があるところですが、筆者の経験上も年齢があがると体力が衰えることについては多くの人が賛同いただけるところだと思います。

「低い生産性」の「減りつつある」労働人口が「高齢化」するという逆風のなかで、日本はいまだ世界第三位のGDPを誇っているわけです。見方によってはすばらしい事ですが、長時間労働や不当な雇用条件、ひいては進まないワークライフバランスなど、このしわ寄せが日本社会の様々な閉塞感につながっているのではないでしょうか。

日本の多くの組織が、この「閉塞感」を打破する必要に迫られているはずです。そして多くの組織が知恵を絞り、すでに様々な取り組みを継続しておられます。その中には成果をあげた組織もあれば、道半ばという組織も多いことでしょう。そして成果をあげた組織であっても、ビジネスを取り巻く環境が刻々と変化するなか、取り組みを継続することを求められます。これら多くの組織が突き当たる悩みは「変わりたいのに、なかなか変われない」というものです。

そして実は、この「変わりたいのに、なかなか変われない」というジレンマこそが、解決すべき問題なのだと考えられるのではないでしょうか。別の表現をすると、ホワイトカラーの生産性の最大のテーマであると筆者は位置づけています。

最大のテーマともいえるこの問題を解決するためのヒントをお話します。

筆者の経験上、変化を起こし、それを完遂するためには以下の大きく3つの要素が必要です。

 

(1) リーダーシップ:向かうべき場所を示しそれを最後まで堅持し続ける
(2) コミュニケーション:右脳と左脳に訴えかける
(3) 実行方法論:実行部隊を組成し地に足の着いた変革活動を支える
 

裏を返せば、「変わりたいのに、なかなか変われない」のは、これら3つの要素が不十分ないしは欠落している可能性が高いとも言えるわけです。

では、それぞれの要素を少し詳しく見ていきましょう。

変化を起こし、それを完遂するための3つの要素

(1) リーダーシップ

リーダーシップの定義は様々あると思いますが、総合すると「環境の変化を見極め組織の向かうべきビジョンを掲げ、関係者をモチベートし、ビジョンに向かわせる人」と定義できます。向かうべき方向を決めるだけではなく、周りの人をそちらに向かわせるために動機付けることもリーダーシップの役割なのです。メンバーを動機付け、それを持続するための努力は、方向性を決めること以上に難易度が高く、変革の妨げになることが多いのです。

たとえば、新たな改革を推進しているにもかかわらず、リーダーシップ層が一丸となっておらず、「あれは社長の独断でやっていること」とか「どうせまたコロコロ変わるよ」などと発言しようものなら、その改革はたちどころに頓挫します。現場で苦労しているメンバーの背後から、矢を射る行為というのは意外に多いのです。

言い方を変えれば、成功した変革には必ず後ろ盾となり、どっしり構えるリーダー、スポンサーがいるものなのです。

 

(2) コミュニケーション

改革を行うときには、その意図や内容を改革の対象となるメンバーに適時適切に浸透させることが大命題となります。ここで気をつけるべきことは、なぜ、今この改革をやらなければならないか、を順序だてて分かりやすく説明することです。「いいから、やれ」では現代の組織は動きません。では、それだけでいいのでしょうか。

多くのメンバーで構成される組織に浸透させるとなると、これだけではうまくいかないのが現実です。過去、大きな変化が起きたときには、必ずそこにスローガンがありました。古くは「天下布武」「尊皇攘夷」といったものから、時代を下れば「所得倍増計画」「日本列島改造論」最近では「郵政民営化」「アベノミクス」など、内容の是非の判断は別の場所に譲るとして、キャッチコピーとしては、一言で耳に心地よく、記憶にも残るものが効果的です。映像や音楽、マスコットを使うことも機運を盛り上げるためには効果的なのはお分かりいただけると思います。

人は理解し納得できた上で、感覚的にも違和感の無いメッセージに対して前向きに反応するものなのです。

 

(3) 実行方法論

トーマツグループのヒューマンキャピタルグループでは、この「変わりたいのに、なかなか変われない」というテーマをひとつの経営課題と捕らえ、チェンジマネジメント専門部隊を組成し方法論に基づいた変革支援のサービスを提供しています。前述したリーダーシップの連動の進め方や、効果的なコミュニケーションの内容、形態、スケジュールなどを計画し、実行管理するなどの方法論のほか、変化が与える影響調査や対象組織の変革への備えのレベル調査のノウハウなどを取り揃え、クライアントとなる組織の状況や要求に合わせた形での個別仕様のサービスを通じて価値提供を続けています。

この領域での権威あるKennedyの調査において、トーマツグループはチェンジマネージメントサービスの提供会社の中でも高位に評価付けられています。

「リーダーシップ」「コミュニケーション」「実行方法論」と言えば、「あたりまえではないか」という声が聞こえてきそうです。確かに当たり前ですが、当たり前のことができていないのも現実なのではないでしょうか。当たり前のことを着実に行う。大きな目標をかなえるための最短ルートは、実はこの一点にあるのではないかと考えています。

図版(3):Kennedy Vanguardによるチェンジマネジメントサービス提供会社の評価

ニュースレター情報

Initiative Vol.71

著者: デロイト トーマツ コンサルティング 
シニアマネジャー 河野 英太郎

※上記の役職、内容等は執筆時点のものとなります。

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