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ポストコロナで実践すべきスマートワークとは

デジタルツールを活用するなどで物理的制約を可能な限り取り除いた「スマートワーク」を既に導入している企業では、具体的にどのような取り組みを行っていたのか。実際の支援事例も交えながらご紹介する。

働き方改革が進展する中で起きたパンデミック

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、生命と経済が脅かされる中、その双方を維持し継続していくために、多くの企業において「原則テレワーク」の方針が取られている。

自宅にいながら会社にいるかのように仕事をし、メールの代わりにチャットを使ってカジュアルにコミュニケーションし、オンライン会議を通じてさも同じ空間にいるかのように対話する。

このパンデミックは、働き方改革が進み、デジタルツールを活用する企業が徐々に広がりつつあるタイミングで発生した。

働き方改革の取り組み状況
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この有事に際し、生産性を維持、または向上まで成し遂げた組織は、距離や時間といった物理的制約を可能な限り取り除いた働き方(当社はこの働き方を「スマートワーク」と呼んでいる)をデザインしている。

当社の調査結果によると、全ての職種・役職の階層において生産性を維持・向上したと回答した企業(131社中37社)は、それ以外の企業に比べ、従業員へのIT環境や制度の整備を行うだけでなく、会議ルールの見直しやオンラインでのコミュニケーション・業務ガイドラインを策定し、浸透を図っている。

全ての階層(管理職/一般社員)・職種において生産性を維持・向上した企業の取り組み事項 上位5つ
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前者のようなスマートワーク導入企業では、具体的にどのような取り組みを行っていたのか。当社における実際の支援事例も交えながらご紹介したい。

 

事例1:某大手製造業

この企業では、全社的な生産性向上を目的に、COVID-19のパンデミック発生以前から各種チャットツールを活用したリモートワークのあり方を検討していた。ここでの生産性は、投下工数の削減、成果の向上のみならず、社員の働きがい向上の3要素と定義していることがポイントである。

当初チャットツールを導入したこの企業では、社員間のリテラシーのばらつきから、メールとチャットツールが混在し、またチャットツールも有効に活用されず、むしろ生産性が低下している状況にあった。

そういった状況から、まず第1弾の取り組みとして全社的な「How to use」のトレーニングを実施。特に部門内コミュニケーションの中核を担う課長クラスは可能な限り早期に受講するよう、推進していった。これによって、「メールよりチャットツールのほうが使いやすい」といった機運を醸成した。

一方、組織内でコミュニケーション方法にばらつきが生じ、未だ生産性が高まる段階になかったため、第2弾の取り組みとして、「オンラインコミュニケーションガイドライン」を事務局主導にて策定、各部門に展開した。

各部門への展開にあたっては、「やらされ感」が生じないよう、部門ごとに「オンラインコミュニケーションルール」を策定するワークショップを実施し、各部門が主体となって自らの働き方をデザインし、実践している。

オンラインコミュニケーションガイドラインイメージ
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事例2:大手メディア企業

この企業のある組織では、「会議体の乱立」が課題となっており、出席者数や頻度も多いことから、その束縛時間によって企画や営業に時間を充てられないという状況にあった。

そこで本組織はまず会議体の目的やアジェンダの棚卸しを行った。会議の目的・アジェンダはいわゆる「報・連・相」に分類されるが、検討の結果、「報・連」についてはわざわざ会議で実施する必要はないという判断に至った。定例の会議を待って報告・連絡する現状では、手待ち時間や意思決定の遅れが生じているという考えも、この判断を後押しした。

事務局や専門家による他社事例の共有や方法論に関するサポートもあり、報告・連絡は発生の都度、リアルタイムにチャットツール上で投稿し、上司・同僚がこれに応答するルールを組織にて策定し、実行・改善を進めていく中で、結果として会議で束縛される時間を半減させることに成功した。

会議ルールイメージ
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事例から導く3つの示唆

本稿では、働き方をデザインし生産性を向上した2つの事例の紹介を行った。これらから言える示唆は以下の3点である。

  1. ルールを各部門で主体となって決め、部門に合った働き方をデザインすること
  2. コミュニケーションを棚卸し、ツール活用も含めた最適な方法をデザインすること
  3. 1,2を実施するにあたり、事務局と外部専門家がHowやWhatの部分について他社事例などを踏まえ、部門を支援すること

なお、このようなスマートワークは我々自身でも、実践してきた働き方である。自社で実践するスマートワークについても、別稿にてご紹介する。

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