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Voice of Asia - Third Edition

~人口動態が促すアジアのパワーバランスのシフト~2017年9月

アジアは全世界人口の約60%を占めており、世界における多様性とイノベーションの中心的な役割、またグローバルビジネスにも大きな影響を与える存在となっている。「Voice of Asia」シリーズでは、現在そして近い未来に、アジア地域が直面する課題や、チャンスについて考える。アジア各国間の相互関係を検討し、アジア全体としての可能性を探る。本稿では、人口動態の変化がアジアの経済成長と発展にいかに影響を及ぼしつつあるかを考察している。

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あらゆる経済の推進力の基礎をなす人口動態が、アジアにおけるパワーバランスの様相を変えつつある。インドの新興経済は成長軌道にあり、日本の巨額の財政赤字は高齢化により悪化の傾向をたどる中、中国とオーストラリアでは産業の展望を塗り替える勢いで高齢化が進展している。現代から2世紀前、ナポレオン・ボナパルトはこう述べた。「中国は眠れる巨人だ・・・中国が目覚める時、世界は震撼するだろう。」その言葉は正しかった。しかし今日、その他にも2人の眠れる巨人が覚醒しようとしている。

オリジナル原稿(Deloitte Insights上)はこちらからご参照ください。

Voice of Asia(日本語版) (PDF, 2.6MB)

第1章:老いゆく虎、隠れた龍

最初に目覚める巨人はインドだ。経済的超大国としての本格的なインドの興隆の時が近づいている。本号の第1章、「老いゆく虎、隠れた龍」では、今後10年間に増加するアジアの労働力の半分以上をインドが占めることが明らかとなる。この事実が企業に及ぼす影響は大きく、インドの全盛期が到来すると、それは半世紀は続くだろう。そして、世界に与える影響の点ではインドの興隆が最も顕著ではあるが、高度な経済成長の見込まれる国はインドだけではない。インドネシアとフィリピンも、インドと同様の傾向を辿りつつある。世界平均を上回る出生率をいまだ維持している両国の人口構成は比較的若い。したがって、少なくとも今後20年間、人口動態は両国にとり成長への逆風ではなく、追い風となるだろう。

第2章:人口動態が変えるアジアの成長軌道

目覚めようとしている第二の巨人とはすなわち、アジアの大部分で加速する定年退職者数増加の動きだ。世界は市場の高齢化という新たな課題に直面しつつある。この現象を単純化し、輝かしい市場成長の時代は過ぎ去ったとだけ捉える企業は多い。しかし、確かに困難な課題ではあるものの、人口動態の行く末が決まったわけではない。実際、高齢化はとりたてて新しいテーマとはいえず、人口動態に起因する経済成長の波をアジアで最初に主導した日本は、急速に進む人口高齢化に既に取り組んでいる。

本号の第2章、「人口動態が変えるアジアの成長軌道」では、こうした変化の正の側面に直面する企業が、潜在的なメリットを最大化するための方策について問いかける。

第3章:注目を集める各国の人口動態

人口動態に関して、共通のトレンドとアジア太平洋地域全体を概観する洞察を見出すためには、各国固有の状況を詳しく見ていくことも重要だ。

本号の第3章、「注目を集める各国の人口動態」では、アジア各国を担当するデロイトのエキスパートに対して、人口動態というテーマに関する3つの主要な問いを投げかけ、忌憚のない見解を求めた。質問の内容は産業にもたらされる機会、声を持たない弱者のコミュニティに及ぼす影響、そして労働力の変化を推進する上でのデジタルテクノロジーの役割を中心としたものだ。この章において、労働力をテーマとしたVoice of Asia 本号とアジア太平洋におけるデジタル化の進展に主眼を置いた前号の視点とが交錯する。前号では労働生産性について考察したが、本号では労働者の数に着目している。

また、本号では、世界人口の高齢化がアジアにとってはどれほど大きな問題かということにも光を当てる。2027年までに、アジアの65歳以上人口は1億6,000万人増加するとみられている。しかし、同じ期間におけるユーロ圏と北米での65歳以上人口の増加は合計で「たったの」3,300万人に過ぎない見通しだ。この事実は西洋社会における高齢化の影響を矮小化するものではないが、分かりやすく言えば、アジア市場は巨大であり、西洋社会よりも高齢化の進展が速い。したがって、高齢化の事業機会と政策課題に最初に直面するのがアジアになるというわけだ。

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