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日本版司法取引制度が企業法務にもたらす影響

Legal Update:Risk & Compliance:2016年8月号

平成28年5月24日、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が衆議院・参議院両院で可決され、刑事訴訟法が改正された(改正法)。改正法では、検察官による証拠収集へ被疑者・被告人が協力し、その見返りに刑事責任の減免を受ける制度(日本版司法取引制度)が導入された(改正法350条の2乃至350条の15)。 (Legal Update:Risk & Compliance:2016年8月号)

はじめに

平成28年5月24日、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」が衆議院・参議院両院で可決され、刑事訴訟法が改正された(以下「改正法1」)。改正法では、検察官による証拠収集へ被疑者・被告人が協力し、その見返りに刑事責任の減免を受ける制度(以下「日本版司法取引制度」)が導入された(改正法350条の2乃至350条の15)(なお、本稿では、かかる制度に基づく取引を単に「司法取引」と呼称することとする)。また、証人尋問において、自己の犯罪の嫌疑に係る事実であるとして、証言の拒否権を行使する証人に対して、証言を不利に取り扱わないことと引き換えに、証言の拒否権を消滅させて証言を強制する、刑事免責制度(改正法157条の2、改正法157条の3:以下「刑事免責制度」)も導入される2 3

改正法の施行後は、企業の役職員が贈賄、脱税や粉飾決算等の犯罪に加担してしまった後、自らの刑事責任の減免を図るために、自らの上司や同僚の犯罪の捜査について捜査機関に積極的な協力をするケースの増加が予想される。また、複数の企業が関与する犯罪において、ある企業が他の企業の犯罪への関与の事実を捜査機関へ供述するようなケースの増加も予想される。

また、過去に、日本の捜査機関が刑事免責を約束して海外の関係者から供述を獲得したケースでは、最高裁判所は、日本に刑事免責制度がないことを理由として、当該供述は証拠能力4がないと判断していた5。このため、国際的な犯罪における日本の捜査機関の証拠収集能力は相対的に限られたものとなっていた6。しかし、日本版司法取引制度と刑事免責制度の導入に伴い、後述するように、検察官が海外の関係者との間で司法取引を成立させ、供述を獲得する道が開けた。

多くの日本の企業は、これまでも、不祥事の防止や不祥事発生時の早期発見に向けて、社員教育や内部通報制度の充実等に取り組んできた。今後は、こうした取り組みにこれまで以上に注力していくとともに、自らの役職員の犯罪への関与の事実を発見した場合には、法人処罰を免れるために、日本版司法取引制度を利用して、当該役職員や当該犯罪に関与した第三者の刑事捜査に協力するという選択肢を検討することが求められる。

本稿では、日本版司法取引制度の概要を説明した上で(後記1)、対象となる犯罪を紹介し(後記2)、「取引」の内容(後記3)、同制度の手続の流れ(後記4~7)、および刑事免責制度(後記8)についてそれぞれ概説する。

http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji14_00103.html(法務省)
2 この他、今回の改正では、(1)取調べの録音・録画制度の導入、(2)通信傍受の合理化、(3)証拠開示の拡充等が行われた。
3 日本版司法取引制度および刑事免責制度は、公布日(2016年6月3日)から2年を超えない範囲の日までに施行される(平成28年法律第54号附則1条4号)。
4 裁判手続において、証拠として扱うための資格を「証拠能力」という。
5 ロッキード事件最高裁判決(最判平成7年2月22日刑集49巻2号1頁)

6 法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会第21回会議議事録19頁〔安岡崇志委員発言〕

1. 制度の概要

日本版司法取引制度は、「検察官が、被疑者・被告人との間で、被疑者・被告人が他人の犯罪事実を明らかにするための供述等をすることと引き換えに、検察官がその協力を考慮した処分等を行うことに合意できることとし、その合意に基づく証拠収集を可能とする制度」であると説明されている7。米国での司法取引と異なり、自己の犯罪事実の捜査についての司法取引は利用できない。

日本版司法取引制度は、個人(自然人)に限られず、法人も利用可能とされている8。したがって、企業は、従業員や関係者による企業犯罪を発見した場合、検察官と合意して、従業員や関係者の刑事事件の捜査に協力することで、自らの刑事責任の減免を図ることができる。

7 法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会第26回会議議事録4頁〔事務局説明〕
8 平成27年5月20日付第189回国会衆議院法務委員会第15号議事録〔林眞琴法務省刑事局長発言〕によれば「法人もその合意の主体となり得る」との見解が示されている。

2. 対象となる犯罪

(1) 司法取引の対象となる犯罪類型は限定されている

司法取引の対象となる犯罪は、一定の類型に限定されている。具体的には、(a)被疑者・被告人の刑事事件の被疑事実と(b)被疑者・被告人が捜査に協力する「他人の刑事事件」の被疑事実の両方が、一定の犯罪に該当する場合である(改正法は、かかる一定の犯罪を「特定犯罪」と定義している9)。

特定犯罪のうち、企業法務との関係では、以下の犯罪類型が重要となる(改正法350条の2第2項3号)。

財政経済関係の犯罪の内容

租税に関する法律の違反

独占禁止法違反

金融商品取引法違反

その他の財政経済関係犯罪として政令で定めるもの10


(2) 日本版司法取引制度が企業活動上問題となる具体例

企業活動において日本版司法取引制度が問題となる例としては、例えば以下のような場合が考えられる。

1) カルテル(独占禁止法3条違反)

A社とB社の担当者が互いに協力してカルテル等11の競争法違反行為を行った場合、A社は、日本版司法取引制度を利用してB社の刑事事件の捜査に協力し、自らの刑事責任の減免を図ることが可能となる。他方で、B社もA社に先駆けて検察官に情報を提供し、有利な条件での刑事責任の減免を確保しようとする可能性がある。

さらに、A社とB社の担当者が、自らの刑事責任の減免を図るため、日本版司法取引制度を利用して、自社の他の担当者や相手方の会社の刑事事件の捜査に協力するケースも生じてくると考えられる。

これまでは、独占禁止法上のリニエンシー12の下で、課徴金の減免を目的として、同様に、カルテルに参加した企業間で、行政当局への通報を先んじて行おうとする状態が生じていた。改正法の施行後は、企業は、リニエンシーの申請に際して日本版司法取引制度を併せて利用するかを検討する必要が出てくると考えられる。また、企業は、他の企業からだけでなく、他の企業の役職員の司法取引を通じた情報提供により、行政当局や捜査機関から追及を受ける可能性にも直面することとなる。カルテル事案において、リニエンシーの場合と日本版司法取引制度の場合につき、関係者の相関図としては、PDFのようなモデル図が描けるであろう。

2) 贈賄(刑法違反13

C社の従業員が、公共工事の受注を目的として公務員に利益を供与した場合、C社は、当該従業員の刑事事件の捜査に協力し、贈賄罪の法人処罰の回避を図ることが可能となる。

3) 法人税の脱税事案(法人税法違反)

企業の財務担当役員が、法人税額の税額を減少させるために、過大な損失を計上する等の偽りその他不正な行為を行った場合、企業は、当該役員の法人税法違反の刑事事件の捜査に協力し、自らの刑事責任の減免を図ることが可能となる。

9 「特定犯罪」には、(1)競売妨害関係、(2)文書偽造関係、(3)贈収賄関係、(4)詐欺・恐喝・横領・背任関係、(5)組織犯罪処罰法関係(マネーロンダリング関係含む)、(6)財政経済関係犯罪、(7)薬物・武器関係、(8)(1)~(7)の証拠隠滅関係の犯罪が含まれている(改正法350条の2第2項各号)。
10 このうち、どのような犯罪が政令で定められるかは、現時点では不明である。今後制定される政令の内容が注目される(例えば、会社法960~962条の特別背任罪や不正競争防止法18条の外国公務員贈賄罪等が候補として考えられる)。
11 入札談合やカルテルは、「事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」として不当な取引制限に該当する(独占禁止法2条6項)
12 独占禁止法7条の2第10項
13 外国公務員に対する贈賄については不正競争防止法への違反が問題となり得る。もっとも、不正競争防止法違反は、法律上は司法取引の対象として規定されていないので、不正競争防止法違反のうち外国公務員贈賄罪が、今後、政令において「特別犯罪」として定められるかどうかによる。

3. 被疑者・被告人と検察官との「取引」の内容

日本版司法取引制度の利用に際して、被疑者・被告人と検察官は、それぞれ下表に掲げる行為の少なくともいずれか一つを、「取引」として提供することとされている(改正法350条の2第1項1号および2号)14

被疑者・被告人が提供できる取引の内容(改正法350条の2第1項1号)

捜査機関15の取調べに際して真実の供述をすること

証人として尋問を受ける場合において真実の供述をすること

捜査機関による証拠の収集に関し、証拠の提出その他の必要な協力をすること

検察官が提供できる「取引」の内容(改正法350条の2第1項2号)

公訴を提起しないこと(不起訴処分)

公訴を取り消すこと

特定の訴因及び罰条により公訴を提起し、又はこれを維持すること(軽い罪での起訴)

特定の訴因若しくは罰条の追加若しくは撤回又は特定の訴因若しくは罰条への変更を請求すること(起訴後に、軽い犯罪に変更すること等)

特定の刑を科すべき旨の求刑をすること(軽い求刑を行うこと等)

即決裁判手続の申立てをすること(簡易な手続きで処理すること)

略式命令の請求をすること(100万円以下の罰金又は科料を課す制度で処理すること)


これらのうち検察官が提供できる「取引」の内容には、不起訴処分や公訴の取消しが用意された。これにより、被疑者・被告人に刑事事件の起訴を回避する道が制度として開かれたことが注目される。企業が刑事事件で起訴を受けると、その事業活動に大きな支障が生じかねないため16、刑事事件の起訴を回避する可能性があることは、企業が司法取引に応じるかの判断に当たり重要となる。また、個人にとっては、即決裁判手続または略式命令での処理について検察官から取引の提供を受けることで、実刑判決を回避できることも、制度利用の大きなインセンティブとなるであろう。

14 それらの行為に付随する事項その他の合意の目的を達するため必要な事項を合意内容に含めることができるとされている(改正法350条の2第3項)。
15 ここでは、検察官、検察事務官または司法警察職員(警察官等、刑事訴訟法189条1項等)をいう。
16 企業が国際協力銀行等の国際金融機関から融資を受けたり、プロジェクトファイナンスで融資を受ける場合、多くのケースで、外国公務員に対する贈賄事件で起訴されたことが期限の利益喪失事由や入札案件での資格の抹消事由とされている。こうしたケースでは、企業が起訴されると融資の拒否や期限の利益の喪失等の対応が取られる可能性があることから、起訴を回避できるか否かは事業活動の継続性を左右する重要な事項であるといえる。

4. 弁護人の関与の必要性

日本版司法取引制度では、以下の点を考慮して、被疑者・被告人と検察官とが合意するに当たり弁護人17の同意が必要とされる。さらに、両者の協議の段階から、弁護人の関与が必要とされる(改正法350条の3第1項、改正法350条の4)。

  • 被疑者・被告人が検察官と対等な協議を行うことが制度の前提となるところ、情報収集能力や交渉能力の格差からして、両者の関係は通常対等にはなり難いこと
  • 被疑者・被告人が刑事責任の減免という検察官からの見返りを欲するあまり、虚偽の供述等を行って、関係ない者の「巻き込み」を行う危険性もあること18

なお、司法取引の成立を目指して弁護人が検察官と協議を開始した後も、捜査機関が並行して被疑者・被告人の取り調べを続けていると、弁護人としては、被疑者・被告人が提供可能な供述の概要を捜査機関に伝えることを躊躇せざるを得なくなる。被疑者・被告人から円滑な協力を得る観点からは、司法取引に係る協議を開始する段階で、捜査機関の取調べと被疑者・被告人との間で行う司法取引に係る協議との関係について適切な説明や調整がなされることが望ましいと考えられる(例えば、司法取引の協議中、捜査機関は、第三者の犯罪についての取調べは控えるといった対応が一案としては考えられる)。改正法施行後の実務上の運用が注目される。

17 弁護士とほぼ同義である(刑事訴訟法31条1項)。
18 平成27年5月27日付第189回国会衆議院法務委員会第18号議事録〔若狭勝委員発言〕等

5. 合意書面の取扱い

日本版司法取引制度では、弁護人の同意の下、被疑者・被告人と検察官の間で合意が成立した場合、両者の合意を記載した書面である「合意書面」(改正法350条の3第2項)が作成される。これは要式行為であり、口頭での合意では司法取引は成立しない。

かかる合意書面は、合意の相手方である被告人の刑事事件の証拠として(改正法350条の7第1項)、また、「他人の刑事事件」の証拠として(改正法350条の8、改正法350条の9)、公開の法廷に提出されることになり、いずれかの時点で公開されることになる。

そのため、企業が日本版司法取引制度の利用を検討する場合、当該企業が司法取引に応じた事実や合意書面に記載された内容の範囲で捜査機関への協力の内容19が公開される可能性が高いことに留意が必要である。

19  もっとも、どこまで詳細な協力内容が合意書面に記載されるかは現時点では不明である。

6. 合意不成立の場合の取扱い

被疑者・被告人と検察官との間の協議の結果、司法取引についての合意が不成立に終わる場合も考えられる。この場合、検察官は、被疑者・被告人の提供可能な供述内容の概要について、協議の過程で開示を受けた範囲で、その供述内容を把握してしまっている。かかる供述内容を検察官が自由に利用できるとすると、被疑者・弁護人が司法取引に応じることを躊躇し、制度の利用が進まない懸念がある。

そこで、改正法では、仮に合意が成立しなかった場合には、被疑者・被告人の協議過程でなされた「他人の刑事事件」についての供述は、証拠とすることができないとされている20(改正法350条の5第2項)。

他方で、協議中になされた被疑者・被告人の供述を手掛かりに、捜査機関が更に捜査を行って新たに証拠を獲得した場合(いわゆる「派生証拠」21を獲得した場合)については、捜査機関の捜査活動を制約しないようにとの観点から、派生証拠の利用に制限は課されていない22。そのため、協議中にした自己の供述を端緒として獲得された派生証拠が、共犯の事件だけでなく、自己の事件においても利用される可能性があることには注意が必要である。

日本版司法取引制度の利用を検討する際には、合意が不成立に終わった場合に、開示した自らの供述を基に改めて捜査が行われ、派生証拠を獲得・利用される可能性をふまえて、司法取引の協議中に提供する供述の範囲につき慎重な見極めが必要になると考えられる。

20 改正法350条の5第2項は、合意が不成立の場合、「証拠とすることができない」と述べて、当該供述の証拠能力を否定しているので、「他人の刑事事件」においても、被疑者・被告人自身の刑事事件においても、証拠として用いられることはない。したがって、共犯事件などでは、「他人の刑事事件」についての供述が、被疑者・被告人自身にとっても不利益な事実となる場合があり得るが、合意が成立しなかった場合、当該供述は、それ自体が証拠隠滅のために行われたような場合を除き(改正法350条の5第3項)、協議中の「他人の刑事事件」についての供述は被疑者・被告人の刑事事件においても証拠とならない。
21 ある供述や証拠から派生的に獲得した証拠を「派生証拠」という。
22 法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会第1作業分科会第10回議事録36頁〔上富敏伸幹事発言〕

7. 合意終了時の効果

改正法では、司法取引についての合意が成立した後、違反行為等一定の終了事由が発生した場合には、合意が終了し、両当事者は合意の拘束から解放されるとされている(改正法350条の10第1項各号、改正法350条の11)23。この場合、検察官は改めて被疑者・被告人を起訴することが可能となり、被疑者・被告人は捜査への協力義務から解放される。

問題は、合意が失効するまでの間に得た供述や証拠の取扱いである。改正法は、検察官による合意違反または検察審査会の不起訴不当議決等で起訴されたような場合については以下のような制限を設けているが、それ以外は制限を加えていない。そのため、被疑者・被告人の責めによらない理由で司法取引による合意が終了しても、既に行った供述や証拠については証拠として利用される可能性がある。

終了事由

協議中なされた供述や合意に基づく供述・証拠

検察官による合意違反(改正法350条の14第1項)

被疑者・被告人との関係でも他人の刑事事件との関係でも証拠とすることができない

検察審査会の不起訴不当議決・起訴相当議決・起訴議決(改正法350条の12第1項)

被疑者・被告人との関係では、派生証拠も含めて、証拠とすることができない(他人の刑事事件においては、証拠とすることができる)

 

23 これらの終了事由は、(1)一方当事者の合意違反、(2)離脱を正当化する事由、(3)検察審査会の不起訴不当議決・起訴相当議決・起訴議決があったときの三つに大きく分けることができる。

8. 刑事免責制度について

改正法では、日本版司法取引制度に加えて、刑事免責制度も導入された。

刑事免責制度とは、証人尋問において、証言内容を証人自身の刑事裁判手続において不利益な証拠として用いないこととする代わりに、証人に証言を強制する制度である。

刑事訴訟法146条は、「何人も、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言を拒むことができる」と定め、いわゆる自己負罪拒否特権(改正法146条)を認め、証言の拒絶を認めている。刑事免責制度が適用されると、当該証言を自身の刑事裁判手続において不利益な証拠として用いないこととする代わりに、証人はかかる権利を剥奪され、証言を強制されることとなる。刑事免責制度は、検察官が利用を請求し、裁判所が決定を下す制度であり、取引の要素はない24

冒頭で述べたように、日本の捜査機関が、かつて、国際的贈収賄事件において、米国に在住する関係者から供述を得るために、当該関係者に対して日本において刑事事件の起訴をしない旨の約束をして、供述を得たケースがあった。この事件について、最高裁は、日本において刑事免責制度を定めた規定を置いていないことを理由に、かかる供述は証拠として認められないと判断した25。そのため、規定がない以上は、日本の捜査機関は、司法取引や刑事免責を利用して証拠を獲得することはできないと解されていた。

しかし、改正法の施行後は、同様の事例で、日本版司法取引制度や刑事免責制度により、日本の捜査機関が海外の関係者から供述を取得し、証拠として利用することが可能となると考えられる。今後、これらの制度を活用して、企業が関与する国際犯罪について日本の捜査機関の活動が活発化する可能性がある。

24 平成24年10月30日付法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会第14回会議議事録27頁〔酒巻匡委員発言〕
25 前掲最判平成7年2月22日刑集49巻2号1頁

おわりに

日本版司法取引制度および刑事免責制度の導入により、他社の従業員が自社や自社の従業員の刑事事件についての供述をしたり、企業内の従業員同士でも、相互に、他の従業員が関与した刑事事件について、いち早く捜査機関に供述したりするインセンティブが生じることになる。その結果、企業の刑事責任を問題とするケースが、一層増加する可能性がある。また、日本の捜査機関が国際的な犯罪への捜査を活発化させる可能性も否定できない。

こうした環境変化をふまえると、企業としては、これまでよりも一層、企業犯罪の撲滅や早期発見に向けてコンプライアンス体制の拡充や社員教育に取り組む必要があると考えられる。また、もし自社内で役職員について犯罪行為が疑われる場合には、専門家の助言を得て、日本版司法取引制度の利用という選択肢を含めた対応を検討する必要があると思われる。こうした対応を進める上でも、企業の担当者は、専門家の適切な助言を得て、新しい制度への理解を深めていくことが期待される。

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