調査レポート

データヘルス~ビッグデータの活用

データに基づく国民一人ひとりの健康管理指導が重要に

年々増加する国民医療費・後期高齢者医療費、超高齢化社会の到来など医療を取巻く環境は多くの課題を抱えています。この環境下においても、日本の医療制度を保ち、医療費抑制、国民の健康寿命の延伸のため、臨床データを用いた健康管理および健康指導が必要とされています。この取組みを先進的な医療保険者だけでなく、国レベルで実施されます。

データヘルスの基盤により、健康を経営するために

<日本の医療を取巻く主な環境の変化>
WHOが発表するGlobal Health Observatory のLife expectancy at birthにおいて、常に世界最高水準にある日本の平均寿命や、同調査における乳幼児の死亡率(Probability of dying under five (per 1 000 live births, 2012))の約3%(米国:約7%)という非常な低水準などを鑑みるに、日本の医療は世界的にも優良であることがうかがえます。
一方で、医療を取巻く環境に課題が多いのも事実です。例えば、日本の国民医療費は年々増加傾向にあり、2011年度には38.8兆円にのぼります。これは国民一人当たり年換算で30万円以上も負担している計算になります(図表1-1、1-2)。また、2025年には約4人に1人が65歳以上と超高齢化社会を迎え、高齢化に伴う医療費の増加は避けられないことからも、医療費が益々財政を圧迫することも予想されます(図表2)。
この環境下において、医療システムを維持・向上し、国民の健康に寄与する施策の実施、また医療費の抑制のために何らかの対策が必要であったことは容易に想像がつきます。

< 「データヘルス」の計画・実践>
「日本再興戦略」(2013年6月14日閣議決定)において、全ての健康保険組合に対し、レセプト等のデータの分析、それに基づく加入者の健康保持増進のための事業計画として「データヘルス計画」を作成・公表、事業実施、評価等の取組みを求めることが盛り込まれました。データヘルス計画とは、医療保険者が保有する健診データやレセプトデータなどの分析に基づいて、被保険者に対し疾病予防、健康増進、重症化防止など効率のよい保険事業を実施するための計画のことです。
図表3のとおり、データヘルス計画の特長として、「データの利活用により、保健事業の効果が高い対象者を抽出し、その対象者および他の加入者に全般的・個別的な情報提供を実施、費用対効果を追求した保健事業を実施する」ことなどが挙げられています。これにより、効果的・効率的な健康状態の把握と指導実施が可能となり、また個別の情報提供等により、国民一人ひとりの健康に対する理解と、予防や非重症化などに対する自発的な行動への効果が期待されます。

< 「データヘルス計画」への取組みと今後の課題>
データの利活用という意味では、従来より先進的な保険者では取り組まれていますが、「データヘルス計画」への取組みとして、図表4-1、4-2のとおり保険者によって対応や置かれた状況はまちまちであることがわかります。計画実施が約15%、計画策定に向けた準備予定は約56%となっており、効果的・効率的なデータヘルスの実現が決して容易ではないことがうかがえます。
当然、異なる形式のデータを同じ土俵で分析するためには、データ形式の統一やクレンジングなどデータに対する適切な処理も必要となります。また、個人の疾病履歴等の膨大なデータから、適切な指導が行えるまでの分析ができるか、という点においては不安が残ります。図表4-2でも示されているとおり、データ分析に対応する人材や、ノウハウ不足という点で課題が浮き彫りとなっています。当面は、これらの課題に対して外部専門業者を積極的に活用するなど十分な対応をすることでノウハウの蓄積を行い、データヘルス計画の効果を最大限に発揮できるようなPDCA運用が望まれます。

国民医療費

1人当たり国民医療費

高齢化の推移と将来推計

データヘルス計画の特徴

「データヘルス計画」への取り組み

レセプト等のデータ分析の課題

お役に立ちましたか?