事例紹介

地域医療再編の先駆者・リーダーに聞く成功の軌跡 その2

自治体病院等の統合再編事例(兵庫県・北播磨医療圏の事例)

近年、地域医療において、公立・公的病院を含む統合再編・建替を通じた医療再編は大きなテーマになっています。統合再編は「言うに易く、行うに難い」ものであり、これまでも多くの挑戦があったものと認識しています。デロイト トーマツ グループでは他に先駆けて地域医療再編に取り組み、成果を出している事例のリーダーに対して、コンサルタントが統合再編時から現在に至るまでの取組みをお伺いしながら、統合再編のポイントを探ります。

(その2) 兵庫県・北播磨医療圏の事例

インタビューの背景

北播磨医療圏(兵庫県)では、平成16年度から始まった新臨床研修医制度の影響や総合病院が林立していたこと等により、深刻な医師不足に直面していました。そのような中、若手医師の確保に力を入れたい神戸大学と、医師不足に直面する医療圏の双方にメリットがあるアイデアとして、神戸大学から北播磨医療圏の自治体に対して、圏域の病院統合(北播磨中核病院構想)が提案されました。

その後、三木市民病院と小野市民病院の再編統合に向け、関係者間での協議や住民説明を経て、平成25年10月1日に北播磨総合医療センターが開院しました。開院した北播磨総合医療センターでは、統合前と比較して医師数は倍増し、医師不足の懸念は払しょくされつつあります。それに伴い、救急受入件数や手術件数も増加し、再編前以上に質の高い地域医療を提供しておられます。

今回は、大学からの再編統合提案を受け、自治体と大学が連携して病院の再編統合を成し遂げた全国初の取組みとなる本事例について、再編統合にご尽力された横野病院長と藪本元理事からお話を伺い、その成功要因を探ることとしました。

インタビューの概要

対談の詳細は添付資料をご覧いただければと思いますが、北播磨総合医療センター病院長の横野氏と北播磨総合医療センター元理事の藪本氏から、成功ポイントをいくつか提示していただきましたので、ここではそちらを取り上げます。

対談の中で、「ハード至上主義に陥らず、手厚い人材育成制度により若い医療人材を引き付けたことが成功につながった」、「首長が適切に意思決定できる情報提供体制が重要」、「地域医療を守るために、大学と行政が一体で取り組んできた結果、単なる2病院の統合を超えた『理想のマグネットホスピタル』が実現しつつある」というメッセージがあり、その具体的な内容については、以下の点に収斂されると理解しました。

神戸大学(教育・研究機関)の立場からみた成功要因

(1) 人材育成体制を整備するとともに、多様なキャリアパスを提示することで、若い医療人材を引き付けることができたこと

再編統合の主体となる行政の立場からみた成功要因

(2) 新病院構想時点から神戸大学と連携し、医師確保面等での協力が確約されていたこと

(3) 20年、30年先の地域医療を見据えて、両市長がリーダーシップを発揮して統合を決断したこと(特に、病院建設地の決定に際しては、市民アンケートも踏まえつつ、三木市長が三木市外での新病院建設を決断したこと)

(4) 三木市民病院と小野市民病院は診療機能の重複が少なく、両院の統合による機能補完によって、高い統合効果が期待されたこと

(5) 神戸大学関連病院同士の再編統合であったことに加え、看護師の事前交流を進めた結果、職員間の融和がスムーズに進んだこと

(6) 住民説明会において、市長や病院長をはじめとする現場関係者が直接説明に努めたこと

再編統合病院の経営面からみた成功要因

(7) 自治体や地元交通系企業の協力等により、通院の利便性を確保し、患者を引き付けることができたこと

以上から、北播磨総合医療センターにおいては、再編統合そのものを目的とするのではなく、「20年、30年先の地域医療」を常に見据えて、大学と行政が連携して取り組んできたことが強く感じられました。また、医療機器等のハード面の重要性を認識しつつも、それ以上に、「質の高い医療は、質の高い人材から」という信念を貫き、新病院の計画と開院に取り組まれたことが、現在の成果につながっていると考えます。

今後とも、地域医療への貢献はもとより、医療人材の育成にも大きく貢献する病院になっていかれるとの印象を持ちました。

対談の詳細については添付資料を是非ご覧ください。

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の会社名・部署・内容は掲載時点のものとなります。

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