最新動向/市場予測

2018年診療報酬改定と遠隔診療、今後の動向と課題

中央社会保険医療協議会(中医協)は、「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」を新設した2018年診療報酬改定内容を答申しました。これまでも、遠隔診療に対する診療報酬算定は認められてきましたが、禁煙外来、遠隔放射線画像診断(画像診断管理加算)、遠隔病理診断(術中迅速病理診断)や電話等による再診料に止まっていました。

2018年診療報酬改定で新設された遠隔診療関連項目

中医協総会で示された「個別改定項目について」において、特に注目を集める改定項目としては、遠隔診療の範囲拡大に伴う「オンライン診療料・オンライン医学管理料の新設」、「電話等再診の見直し」等が挙げられます。前者は、対面診療の原則の上で、有効性や安全性等への配慮を含む一定の要件を満たすことを前提に、新設されることになりました。

前提とされる要件とは、以下の様な一定のルールに沿った診療が行われていることです。

1. 特定された疾患・患者であること

2. 一定期間継続的に対面診療を行っており、受診間隔が長すぎないこと(初診の患者は当該要件を満たさないため、対象に含まれない)

3. 急変時に円滑に対面診療ができる体制があること

4. 安全性や有効性のエビデンスが確認されていること

5. 事前に治療計画を作成していること

6. 医師と患者の両者の合意があること等に加え、当該保険医療機関に設置された情報通信機器を用いて診察を行うこと

7. オンラインを用いて診察する医師は、対面による診療を行っている医師と同一の医師であること
また「オンライン診療料」が算定可能な患者は、特定疾患療養管理料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、糖尿病透析予防指導管理料、地域包括診療料、認知症地域包括診療料等としています。「オンライン医学管理料」の対象患者は、「オンライン診療料」の対象と類似しており、療養計画に基づき対面診療とオンライン診療を組み合わせた管理を行う場合を想定しています。

随分、前提となる要件が厳しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これまで禁煙外来を除いて医師と患者(DtoP)の遠隔診療には大きな制約があり、遠隔医療が複数の医療機関間の遠隔放射線画像診断、遠隔病理診断の領域、つまり医師と医師(DtoD)で行う業態に限定されてきたことと比較すると、医師と患者(DtoP)で行う遠隔診療が公式に認められた画期的な前進のようにも考えられるのではないでしょうか。

医師と患者(DtoP)の遠隔診療に関する有効性や安全性に係るエビデンスが蓄積されていき、今後、情報通信機器を利活用してのDtoPの遠隔診療が拡大していくことで、様々な医療・保健・介護領域の課題を解決する契機になる可能性があると考えます。

背景には、医師側の課題として、地方を中心とする慢性的な医師(特に専門医)不足があります。また患者側の課題として、多くの高齢患者や身体に障がいのある患者にとって物理的な移動を伴う「通院」が困難になっていること、療養期・終末期における在宅医療推進に伴って医師が往診に行けない場合でも診療を必要とするケースがあること、ひきこもりの増加などが挙げられます。

参考(外部サイト)

遠隔医療市場

遠隔医療市場は、「遠隔画像診断」「遠隔病理診断」「遠隔診療(DtoP)」「遠隔健康管理」の大きく4つの分野で構成されています。

1)遠隔画像診断市場
放射線診断専門医により、放射線画像の読影とレポートの作成サービスが遠隔で提供されています。
国内において一定の成熟を迎えたと言われており、既に1,300以上の病院、1,800程度の診療所に普及しています。契約施設数や読影件数は増加の傾向を見せており、1医療機関当たりの依頼件数も安定的に増加しています。

2)遠隔病理診断市場
病理専門医により、病理標本を撮影したデジタル病理画像を元に病理診断・レポート作成サービスが遠隔で提供されています。がん患者の増加を背景に、病理専門医の不足や地域偏在を補うかたちで拡大すると言われています。2018年診療報酬改定では、デジタル病理画像の観察及び送受信を行うにつき十分な装置・機器を用いた場合に、デジタル病理画像のみを用いて病理診断を行った場合も「病理診断料」が算定可能になったことから、遠隔病理診断市場は拡大傾向となることが予測されます。

3)遠隔診療(DtoP)市場
遠隔診療(DtoP)とは、情報通信機器を用いた診療行為の提供を指します。2015年8月の厚生労働省事務連絡「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」により事実上解禁となり、ベンダー各社が市場に参入し始めました。現在、スマートフォンと専用アプリを使用した遠隔診療ツールなどが発表されています。加えて2018年診療報酬改定による「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」等の新設によって、今後急速な拡大が予想されます。在宅患者の重症化予防や服薬指導をはじめとして、将来的にはリハビリテーション、精神科領域での拡大、4kや8k画像等高精細映像技術の進歩による眼科領域、皮膚科領域への応用と拡大までも展望されています。中長期的に最も成長が見込まれる市場であると言えます。

4)遠隔健康管理市場
利用者が自宅等で測定した健康データ(体重、歩数、血圧、心拍数等)を、ネットワークを介して遠隔地の健康管理者や健康指導者が把握することで、必要に応じた健康相談・指導が提供されています。これまで地方自治体を中心に行われてきましたが、現在は遠隔診療の規制緩和から「遠隔地」に限定する解釈は無くなり、都市部内であってもサービス提供が可能となっています。今後は都市部における普及、インターネット経由による利用が拡大するであろうと言われています。

2017年度に特定保健指導における遠隔面接の事前届が廃止となったため、利用者と医療従事者が離れていることが条件となる遠隔面接も遠隔健康管理の一部となります。これにより、遠隔健康管理の主たる財源者が特定保健指導を実施する健康保険組合などの保険者になることから、福利厚生を受託しているアウトソーシング事業会社等が遠隔健康管理を行うことも考えられ、今後の展開が注目されます。

調査会社によると、これらの4つの市場を合わせて2015年度に123億円弱であった遠隔医療市場規模は、2018年診療報酬改定が肯定的である前提で199億円程度にまで成長すると予測されています。

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遠隔診療の課題

このような市場の盛り上がりを予測する調査の一方で、2018年診療報酬改定に係る中医協の資料にも明記されている通り、遠隔診療も含めた遠隔医療には、有効性や安全性等への配慮を含む一定の要件を満たすためのエビデンスの蓄積と確立が必須と言われ、慎重論を唱える関係者も少なくありません。

今回の改定に至る道のりの中で、医師法20条の存在は現在も大きいと言えます。医師法20条とは、「医師は、自ら診察しないで治療し、もしくは処方箋を交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証明書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない」というものです。情報通信機器を介した医師と患者の関係性は、医師が自ら診察していると認められるのか否かが論点の一つであり、この点において約20年議論が重ねられてきました。

今から20年前の1997年12月に厚生労働省が発出した通知では、次の通り、原則は対面診療であり、初診及び急性期疾患は除外し、患者側から要請があった場合に限られるとされています。
「診療は医師または歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本であり、遠隔診療は、あくまで直接の対面診療を補完するものとして行うべきものである」

「初診及び急性期の疾患に対しては、原則として直接の対面診療による」

「遠隔診療は、患者側の要請に基づき、患者側の利点をも勘案して行うものであり、直接の対面診療と適切に組み合わせて実施するように努める」

その後2017年7月発出の通知では、次の通り、本人確認の担保を条件に、各種情報通信機器を組み合わせた遠隔診療が許容されたかのようにも理解できる記述となっています。

「保険者が実施する禁煙外来については、定期的な健康診断が行われていることを確認し、患者側の要請に基づき、医師の判断により直接の対面診療の必要性については柔軟に取り扱っても直ちに医師法20条等に抵触しない」

「当事者が医師及び患者本人であることが確認できる限り、テレビ電話や電子メール、SNS等の情報通信機器を組み合わせた遠隔診療についても直ちに医師法20条等に抵触しない」

まとめ

遠隔診療の大きなメリットとして、患者が通院せずとも診療を受けられることが挙げられます。医師不足の地域、専門医が不在の地域においても、疾病の早期発見や重症化予防を推進することができ、高齢者や障がいのある患者、難病や稀有な疾患の患者などの通院の負担を軽減します。

デメリットは、緊急時の対応、聴診・触診・打診などの診療の基本となる行為ができないこと、画像の解像度によっては患部が見にくいこと、画像が立体でないことなどが挙げられます。これらのデメリットを補完するサービス提供体制の工夫や技術的な工夫が望まれています。またこのようなデメリットによる診断への影響度合いについても明らかにしていくことが今後の課題と言えます。

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