調査レポート

ひきこもり地域支援センターにおける支援の質の向上及び平準化を目的とした職員の養成手法に関する研究事業

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有限責任監査法人トーマツは、厚生労働省令和3年度 社会福祉推進事業の採択を受け「ひきこもり地域支援センターにおける支援の質の向上及び平準化を目的とした職員の養成手法に関する研究事業」を実施しました。この事業では、アンケート調査、有識者による委員会での検討、研修の試行実施等を経て、国が実施するひきこもり支援担当者を対象とした研修に焦点を当て、そのカリキュラム及びプログラムを作成しました。

調査研究事業の背景・目的

ひきこもり地域支援センター(以下「センター」という。)は、ひきこもりに特化した相談窓口として47都道府県及び20政令指定都市に設置され、社会福祉士、精神保健福祉士、 公認心理師等の資格を有する「ひきこもり支援コーディネーター」が中心となって、専門的な相談支援等を実施しています。また、センターは、地域における関係機関とのネットワークの構築や、ひきこもり支援に係る情報の幅広い提供等、地域におけるひきこもり支援の拠点としての役割も担っており、その機能のさらなる向上が求められているところです。

このセンターを含むひきこもり支援機関については、先行研究 において、支援の対象となるひきこもり状態にある当事者や家族のおかれている状況、年代、背景等が多様であることや、ひきこもり支援機関の支援の強みや特徴、また、機関においてひきこもり相談に携わる支援者の専門性、経験、支援スキル等も多様であることが示されています。さらに、先行研究では、各ひきこもり支援機関での研修やスキルアップの制度は乏しく、個々の自主性に任せられることが多いという点が課題として挙げられています。

当調査研究事業では、そのような背景に鑑み、全てのセンターで統一的に取り組むことが可能な体系的な研修カリキュラムの検討を行いました。具体的には、国が全国のセンターを対象として研修を行う場合に焦点をあて、その研修カリキュラム及び研修プログラムを検討することとしました。研修カリキュラムや研修プログラムを検討し、作成することにより、各センターの支援内容や職員の支援スキルを平準化し、延いては支援が必要な者に適切な支援を提供できる環境を整備することを目的としています。 

調査研究事業の内容

本調査研究事業においては、①検討委員会の設置・開催、②研修試行実施にかかる作業部会の設置・開催、③ひきこもり地域支援センターを対象とした研修ニーズにかかるアンケート調査、④研修の試行実施、⑤研修カリキュラム及びプログラムの作成といった5つの活動を行いました。

① 検討委員会の設置・開催

センターにおける支援の質の向上及び平準化を目的とした職員の養成手法に関して専門的な知見に基づく検討・助言等を受けるために、医学的観点、福祉的(心理・社会的)観点、当事者からの観点、それぞれにおける専門性を有する8名をメンバーとする検討委員会を設置し、検討委員会を開催しました。

検討委員会では、センターを対象とした研修ニーズにかかるアンケート調査の調査項目や集計結果、研修カリキュラム案及び研修プログラム案の作成、研修の試行実施の方法、研修の試行実施を受けた研修カリキュラム案等の改定等について議論・検討を行いました。

② 研修試行実施にかかる作業部会の設置・開催

本事業において研修を試行的に実施するために、支援の姿勢(当事者・家族の立場から)、アセスメント、社会資源、発達障害等の専門性を有する6名をメンバーとする研修試行実施にかかる作業部会を設置し、開催しました。

作業部会では、講義内容の検討や研修教材の作成、実際の講義、講義後の質疑への対応等を行いました。

③ ひきこもり地域支援センターを対象とした研修ニーズにかかるアンケート調査

センターにおける支援の質の向上や標準化を目指す上で必要と考える研修の内容や研修の実施方法等のニーズを把握することを目的に、全国のセンターを対象としたアンケート調査を実施しました。

調査はインターネット調査の方法で実施し、対象とした全国のセンター70所のうち、67所からの回答を得ました(回収率95.7%)。

④ 研修の試行実施

国が実施するひきこもり支援担当者を対象とした研修に焦点を当て、そのカリキュラム及びプログラムを検討する際の参考情報を得ることを目的に、2カ所のセンターに協力を依頼し、研修の試行実施を、オンライン会議形式にて実施しました。なお、試行実施には、協力先のセンター及び近隣のセンターに所属する職員が参加しました。

⑤ 研修カリキュラム及びプログラムの作成

当事業における検討委員会での議論、ひきこもり地域支援センターを対象とした研修ニーズにかかるアンケート調査、研修の試行実施をふまえ、国が全国のセンターを対象として行う場合を想定した研修カリキュラム及びプログラムを作成しました。

まとめ

当事業においては、検討委員会での議論、ひきこもり地域支援センターを対象とした研修ニーズにかかるアンケート調査、研修の試行実施をふまえ、国が全国のセンターを対象として行う場合を想定した研修カリキュラム及びプログラムを作成しました。

研修カリキュラムは、「Ⅰ.ひきこもり支援の在り方」、「Ⅱ.相談支援に必要な知識とスキル」という2つの要素から構成されており、さらに「『ひきこもり』についての基本的な理解と支援者としての姿勢」、「ひきこもり支援の全体像」、「相談支援に必要な知識とスキル」、「相談支援(電話相談・SNS相談)や居場所づくりなど支援メニューごとの実施方法」、「支援体制整備」、「国の施策や予算など政策動向」、「相談支援事例の理解」といった項目で構成されています。

研修プログラムは、国が、初任者(相談支援の経験年数1~2年程度を想定)向けの研修と、全職員を対象としたフォローアップ研修を行う場合を想定し、初任者研修、全職員を対象としたフォローアップ研修、共に2日間かけて実施する場合の内容を検討して作成しました。この研修プログラムでは講義/演習の内容や所要時間、講師またはスーパーヴァイザー(SV)の案についても提示しています。

本事業で作成した研修カリキュラム及び研修プログラムが活用されることで、支援が必要な方に対して適切な支援を提供できる環境整備の一助となれれば幸いです。

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2022/5

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