最新動向/市場予測
診療報酬改定を読み解く
地域連携における留意点とポイント
令和4年度の診療報酬改定は、新型コロナウイルス感染症対策と地域包括ケアシステムの構築の推進に向けた、医療機能の分化と連携の視点が重要な改定となりました。疑義解釈の内容も踏まえて、診療報酬改定後の留意点とポイントについて見ていきます。
目次
- 初診料及び外来診療料における紹介・逆紹介割合に基づく減算規定の見直し
- 感染防止対策加算の見直しと外来感染対策向上加算の新設
- 入院及び外来から在宅への切れ目のない在宅医療の推進
- 医療機能の分化と役割分担の推進
- 関連トピック
初診料及び外来診療料における紹介・逆紹介割合に基づく減算規定の見直し
医療機関間の連携・機能分化を推進する観点から、紹介患者及び逆紹介患者の受診割合が低い場合に初診料及び外来診療料が減算される医療機関の対象に紹介受診重点医療機関が追加されたことに加え、「紹介率」及び「逆紹介率」の名称が「紹介割合」及び「逆紹介割合」に変更され、その算出方法、項目の定義及び基準が見直されました。
初診料及び外来診療料における紹介・逆紹介割合
令和4年度より外来機能報告が開始され、地域医療支援病院には手が届かないものの、紹介受診重点医療機関を目指す急性期病院も出てくることになるでしょう。これまで特定機能病院や地域医療支援病院、許可病床400床以上の大規模病院のみが当該減算規定の対象でしたが、今後は紹介受診重点医療機関となる許可病床200床以上400床未満の病院も対象となります。紹介受診重点医療機関を目指す際には当該減算規定についても考慮して検討すべきでしょう。
また、本改定では逆紹介割合を算出するにあたって、再診患者の数も分母へ加えることとなりました。かかりつけとして通院している患者が多い場合には、逆紹介割合のクリアが困難となりますので、早急に対策を検討していく必要があります。令和5年4月1日からの適用となっていますが、令和5年4月1日までに、令和4年度中の任意の連続する6か月の紹介割合及び逆紹介割合に係る実績を地方厚生(支)局長へ報告することとなっていますので、遅くとも令和4年9月まで(新規に対象となる保険医療機関については、届出前3か月のため令和4年12月まで)に更なる医療機関連携・役割分担を推進していくことが必要となります。
更に、今回の疑義解釈(その1)において、初診の患者数とは、初診料の算定の有無に関わらず、患者の傷病について医学的に初診といわれる診療行為が行われた患者の数を指すと明記されたことも留意すべき点となっています。
併せて、令和4年10月1日から紹介状なしで受診する患者等の初診・再診について、保険給付範囲から初診200点、再診50点が控除され、定額負担の額が初診5,000円から7,000円へ、再診2,500円から3,000円へ引き上げられます。病院の収入は変化しませんが患者負担が増加する内容となっており、病院としては患者等への説明を要するため、早めに準備・周知を進めていくべきでしょう。
感染防止対策加算の見直しと外来感染対策向上加算の新設
平時からの個々の医療機関等における感染防止対策に加え、地域の医療機関等が連携して実施する感染症対策を更に推進する観点から、感染防止対策加算が感染対策向上加算に名称が変更され、要件についても新興感染症の発生等を想定した訓練の実施等が要件に追加されるとともに、連携に対する評価が新設されました。診療所における感染防止対策に係る評価の新設(外来感染対策向上加算)、より小規模の感染制御チームによる感染防止対策の取組みに係る評価の新設(感染対策向上加算3)など、医療機関の連携による地域全体での感染対策が一層重視されています。
感染防止対策加算の見直しと外来感染対策向上加算の新設
施設基準要件のうち、加算1は新型コロナウイルス感染症に係る重点医療機関、加算2は新型コロナウイルス感染症に係る協力医療機関、加算3及び外来感染対策向上加算は新型コロナウイルス感染症に係る診療・検査医療機関が該当するとされています。
なお、自治体のホームページにおいて公開されるまでの間、当該保険医療機関のホームページ等において公開していることをもって、当該要件を満たしているものとして差し支えないとされており、重点医療機関及び協力医療機関には少なくとも保険医療機関の名称、所在地及び確保病床数を、診療・検査医療機関には少なくとも保険医療機関の名称、所在地、電話番号及び診療・検査医療機関として対応可能な日時を公開することが求められています。
疑義解釈では連携カンファレンス等について以下のことが明らかにされました。
・連携する医療機関のうち加算1の医療機関が複数ある場合には、加算2等の医療機関はそれぞれが開催するカンファレンスに少なくとも年1回以上参加する必要があるところ、複数の加算1の医療機関による合同開催のカンファレンスの場合はそれぞれのカンファレンスに参加したと認められる
・年1回以上の参加が求められる新興感染症の発生等を想定した訓練は対面以外に、リアルタイムでの画像を介したコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な機器を用いて実施する場合も認められる
・加算1の医療機関における指導強化加算で求められる加算2等の医療機関に赴き院内感染対策に関する助言を行った回数については、複数の加算2等の保険医療機関と連携している場合は、その助言回数の合計が年4回以上としてよい
これらのことを踏まえて、改めて地域で必要な連携、カンファレンスの方法について協議することが望まれます。いずれの立場においても、いかに連携先を選定して感染対策と経営の両面から連携体制を構築していくかがポイントになるでしょう。
入院及び外来から在宅への切れ目のない在宅医療の推進
以前より、入退院支援加算や退院時共同指導料として、入院から在宅へ移行の推進の観点から、在宅療養を担う保険医療機関と入院治療を担う保険医療機関との連携の推進が図られてきました。今回の改定では、外来の通院患者のスムーズな在宅医療への移行を推進する観点から外来在宅共同指導料が新設されています。
外来医療を担う医師と在宅医療を担う医師が共同して行う指導の評価
在宅療養を担う保険医療機関の医師が、外来において継続的に診療を行っている保険医療機関の医師と共同して、在宅療養に必要な説明・指導を行った場合に、患者1人につき1回に限り算定することができます。
当該指導料は、共同指導するにあたって、患者宅等を訪問して実施することが要件になっていますが、外来において継続的に診療を行っている保険医療機関の医師については、情報通信機器を用いて行うことも認められています。また、疑義解釈では、必ずしも初回に実施する必要はないことが示されましたので、在宅を担う医療機関と外来を担う医療機関との連携体制の強化を図る上でも有用な指導体制の構築が望まれます。
その他、入退院支援加算や退院時共同指導料、介護支援等連携指導料などの医療機関連携に係る指導料等の算定要件においても「対面で行うことが原則」の記載が削除され、ビデオ通話機器の使用が一般的に認められるようになりました。院内におけるネットワーク等環境の整備をはじめ、ICTを活用した連携体制の構築により、より一層の効果的で効率的な他院とのコミュニケーション方法を検討していくことが病診連携、医療介護連携を推進していく上でのポイントとなります。
医療機能の分化と役割分担の推進
新型コロナウイルス感染症の感染拡大において果たした医療機関の役割等を踏まえ、手術や救急医療等の高度かつ専門的な医療及び高度急性期医療の提供に係る体制を十分に確保している場合の評価として、急性期一般入院料1に急性期充実体制加算が新設されました。当該加算については、療養病棟又は地域包括ケア病棟の届出を行っていないことや、救命救急入院料等の治療室を届け出ていることが要件とされています。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、集中治療室等が日本において不足している現状を浮き彫りにしたことからも、特定集中治療室等における重症患者対応体制の強化に係る評価として重症患者対応体制強化加算が新設されるなど、集中治療領域における評価も充実が図られています。
一般病棟用の重症度、医療・看護必要度についても、急性期入院医療の必要性に応じた適切な評価を行う観点から心電図モニターの管理が除外され、急性期割合が低い医療機関においては急性期一般入院料1を継続することは年々厳しくなってきています。
地域で急性期・高度急性期医療を集中的・効率的に提供する体制の構築に向けて、自院の役割を改めて見直し、地域における医療機能の分化と役割分担を推進し、生産年齢層の減少、高齢患者が急増する時代に対応できる体制へと改革していかなければなりません。
執筆
有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部 ヘルスケア
※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2022/4
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