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令和3年度介護報酬改定の展望及び経営改善への活用

介護報酬改定

令和3年度介護報酬改定の骨子にあたる「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告」が12月23日に公表されました。本稿では、この報告に基づいて、経営へ影響を与える可能性が高い項目をピックアップしてご紹介します。

令和3年度介護報酬改定の基本的な考え方

令和3年度介護報酬改定は、(1)感染症や災害への対応力強化、(2)地域包括ケアシステムの推進、(3)自立支援・重度化防止の取組、(4)介護人材の確保・介護現場の革新、(5)制度の安定性・持続可能性の確保、という5つの柱で実施される見通しです。

これまでの改定との一番の違いは、昨今の新型コロナウイルス感染症への対応や大規模災害への対応のため「感染症や災害への対応力強化」が第一の柱に位置付けられたことです。一方、その他の柱は、これまでの議論の流れを汲んだ形となっています。内容は、「医療・介護連携」、「魅力的な職場づくり(≒働き方改革)」、「ICTの活用」等、診療報酬改定と共通したテーマが多くあります。

改定の内容

1.感染症や災害への対応力強化

通所系サービスにおいて、感染症や災害の影響により利用者が減少した場合の報酬区分の要件が緩和される見通しです。

通所系サービスは、規模の経済が働くという観点から利用者が多い事業所ほど利用者一人当たりの介護報酬が小さいという特徴があります。現在、事業所別の報酬区分は、「前年度の平均延べ利用者数」で決定されていますが、感染症・災害が起きた場合は突発的に利用者が減少することから「当該事象が発生した月の利用者実績」を基礎とすることができる見通しです。

2.地域包括ケアシステムの推進

認知症への対応力向上に向けた推進、看取りへの対応の充実、医療・介護連携の推進に対して、評価がなされる見通しです。

(1) 認知症への対応力向上に向けた推進

訪問系サービスにて、認知症ケア専門ケア加算が新設される見通しです。また、当該加算に係る専門研修はe-ラーニングでも受講が可能となる見通しであるため、既に当該加算が設定されているサービスでも体制整備が容易になりそうです。

(2) 看取りへの対応の充実 

介護施設での看取り対応の充実のため、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組を行うことが必要となります。また、現行の看取り介護加算やターミナルケア加算は死亡日前の30日前からしか算定ができませんが、それ以前より看取りに係るケアを行っている実態があります。そのため、死亡日30日以前の一定期間の対応について評価が新設される見通しです。

(3) 医療・介護連携の推進

利用者が在宅にて、有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう医療職とケアマネージャーとの連携が推進されています。具体的には、医師・歯科医師等が居宅療養管理指導を行った際の様式が変更となる見通しです。
また、医療ケアが必要な利用者の在宅での受け皿を増加させるためにも、訪問看護の看護体制強化加算、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の医療連携体制加算(Ⅱ)及び(Ⅲ)の要件が緩和される見通しです。

3.自立支援・重度化防止の取組の推進

介護サービスの質の評価と科学的介護の取組の推進に向けた、CHASE・VISIT情報へのデータ提出・収集・活用(PDCAサイクルの推進)が一番のトピックスです。

 

出所:介護給付費分科会191回「自立支援・重度化防止の推進(検討の方向性)」

令和3年度からのCHASE/VISITの一体的な運用に伴い、リハビリテーションマネジメント加算(Ⅳ)が廃止となるとともに、定期的なリハビリテーション会議によるリハビリテーション計画の見直しが要件とされているリハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)及び(Ⅲ)それぞれにおいて、CHASE・VISITへデータを提出し、フィードバックを受けPDCAサイクルを推進することが評価される見通しです。

4.介護人材の確保・介護現場の革新
 少子高齢化の進展による介護人材不足は、人材の確保および介護現場の革新の両輪で対応していくことが必要と言われています。そのため、介護職員の更なる処遇改善に向けた環境整備やテクノロジーの活用、人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化が推進される見通しです。

(1) 処遇改善

リーダー級の介護職員に対し、他産業と遜色のない賃金水準の実現を図るために設けられた介護職員等特定処遇改善加算の賃金改善額の配分ルールが変更となる見通しです。現在、「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の2倍以上の賃金改善額が必要となっていますが、この水準がより高くなる見通しです。
また、事業所のサービスの質や職員のキャリアアップ制度の構築を評価したサービス提供加算及び特定事業所加算に対し、上位区分が新設される見通しです。具体的には、職員の勤続年数10年以上の割合や介護福祉士の割合に応じた評価となる見通しです。

(2) テクノロジーの活用、人員基準・運営基準の緩和

見守りセンサー等のICT導入および各種体制の整備により、夜間帯の人員配置及び夜勤職員配置加算も見守りセンサーの導入割合が緩和される見通しです。
また、運営基準や加算の要件等において実施が求められる各種会議等について、ICTの活用によるリモート会議が認められるようになる見通しです。

 

改定を見据えたアクション

介護サービスの質は、ストラクチャー(構造)、プロセス(過程)、アウトカム(結果)の3つの視点で評価されています。介護報酬制度を上手く活用するためには、人材が退職することなく定着し(ストラクチャー評価)、教育することでよりよい介護を提供でき(プロセス評価)、結果として利用者の状態が改善する(アウトカム評価)という好循環を生むことが大切です。この循環を生むと、介護報酬収益が増加するため、ICT関連への投資が可能となります。それによって業務効率化及び人員基準の緩和が可能となり、少ない職員で事業所を運営することが可能となります。そうすると、事業所に入ってくる処遇改善加算の一人当たりの分配金額は増加するため、職員の賃金も増加⇒人材の定着という好循環を構築することができます。

出所:介護給付費分科会185回「令和3年度介護報酬改定に向けて(自立支援・重度化防止の推進)」

介護報酬は年を経るごとに複雑化しています。そのため、事業者の皆様は「制度への対応」に奔走させられ、経営ビジョン実現に向けた「制度の活用」という視点を持ちづらい状況となっていると拝察いたします。2021年の今、介護後業界が抱えている問題や課題に対応しているのが報酬改定であるという視点も持ちながら、2021年の介護報酬改定を「活用」していただければと存じます。

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は掲載時点のものとなります。2021/1

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