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診療科別・医師別損益と医師人事制度に関するセミナーの報告

病院の診療科及び医師の業績や活動の適切な把握と医師のモチベーションを刺激し、行動を促す仕組みの構築が必要です。そこで、1月に診療科別・医師別の業績を可視化する方法及び可視化された実績に基づく評価・報酬の仕組みの構築をテーマとしたセミナーを開催いたしましたので、その概要を報告します。

セミナー開催の背景と趣旨

医療業界を取り巻く診療報酬改定も含めた昨今の環境変化に対応するためには、病院の進むべき方向性及び病院内の限られた資源を効率的・効果的に活用する戦略の策定と実行が重要です。
病院の経営・業績管理において診療科別損益を導入している病院は多く見受けられますが、診療科別の損益・方針を基に医師個人への落とし込みや当事者意識の醸成が十分に図られていない場合があります。診療科別の損益管理を用いているだけでは本来の目的である業績向上には繋がっていません。
また、診療科内でも病院の方針に照らして「頑張っている医師」と「頑張りが不十分な医師」が存在し、「頑張っている医師」への評価や処遇が十分に出来ていない事で、病院に留まってほしい人材が外部に流出してしまうケースもあります。

これらの課題を解決するためには、損益管理の目的を再確認し、診療科や医師の具体的なアクションに繋げるための効果的な損益管理手法の適用と可視化された診療科・医師の実績に対する評価と処遇への反映が必要と考えられます。

本セミナーでは、診療科別・医師別損益管理及び医師人事制度に関する考え方、留意点の解説とともに、実際に病院で導入されている管理手法や仕組みの事例をご紹介させて頂きました。
 

診療科別・医師別の損益管理の概要

診療科別の損益管理は、病院全体から診療科へと損益管理単位を細分化し、そこで可視化された診療科別の収益や費用の状況を踏まえて、収支改善や業績向上のために「何をすべきか」という方針や目標の策定・管理(評価)に活用します。また、作成した損益結果を診療に従事している医療従事者と共有し、診療だけでなく診療にかかる費用に対する意識を醸成する狙いもあります。

診療科別損益管理の導入にあたっては、特に(1)各診療科に対して費用をどこまで配賦するか、各診療科がどこまでの費用を管理対象と考えられるか、(2)費用の配賦基準が各診療科とコンセンサスが得られているか、(3)損益結果をどの様に共有するか、について慎重な検討が必要です。
(1)配賦の対象とする費用の範囲の決定
材料費、人件費、設備関係費(減価償却費・保守費用等)など、配賦の対象とする費用をどの範囲とするかについて、診療科など配賦対象者の同意が得られなければ、計算結果の有用性が低くなる可能性があります。
(2)費用の配賦基準の合意
費用を配賦する基準は、可能な限り、配賦対象者のパフォーマンスとの結びつきの観点で検討することが望まれます。配賦対象者が納得のいく配賦基準でなければ計算結果に対する信頼性を失う可能性があります。
(3)管理方法
診療科別の場合、診療科の特性によって収益性に差があるため、管理や共有の方法を十分検討した上で実施しなければ混乱を招く恐れがあります。

損益管理の対象範囲を診療科から医師個人にまで展開することで、診療科の損益を構成している要因を医師別に認識できるようになります。医師別に計算することでより詳細な管理が可能となり、更に医師別での目標値の設定や評価によって医師個人の目標に対する意識を高める効果が期待できます。

医師別の損益管理では、医師個人の貢献度合いに資するデータが病院情報システムで収集・把握されているか、医師個人の収益の貢献度合いに応じた費用配賦が可能となるか、がポイントです。医師個人の貢献度合いや診療実績が適切に把握できなければ、主治医にばかり収益が計上されるなど診療・活動の実態が個人別損益に正しく反映されません。また、費用においても医師別に紐づくデータの集計、配賦基準の設定や他部門の人件費を医師個人に配賦するための従事割合・業務量の把握が必要となります。

 

診療科・医師の評価と処遇への反映の概要

評価制度の構築にあたっては、大きく3点(1.損益・業績面以外の貢献の評価、2.診療科の特性を踏まえた評価、3.医師のコンセンサス)に留意する必要があります。
1.損益・業績面以外の貢献の評価(行動評価)
評価が業績や損益に偏ってしまう場合、医師からは本来求められる診療の質や患者への対応、チーム医療・連携を病院が重視していないと誤解を与え、却ってモチベーションの低下に繋がりかねません。そこで、業績や損益等の成果の評価だけではなく病院が医師に求めたい行動や意識、役割遂行を評価し、医師の多様な病院貢献を見る仕組みにする必要があります。


2.診療科の特性踏まえた評価
第二の留意点では、診療科によって異なる病院への貢献(役割)を評価に反映する事です。麻酔科や放射線科、病理診断科等の他科の診療の支援を主の役割とする診療科や、小児科・産婦人科など地域(政策)医療の側面が強い診療科を同じ指標で同じ様に測る事は出来ないからです。診療科の特性を踏まえた評価指標や評価ウェイト等を設定し、診療科間で評価の不公平が生じない様に留意する必要があります。

3.医師のコンセンサス
評価制度は設計すれば終わりではなく、制度を運用し本来の目的を果たす事がゴールになります。制度の導入にあたっては医師のコンセンサスを得られなければ多大な時間と労力を掛けて策定した制度は日の目を見ない施策となってしまいます。そうならないためには、医師に対するヒアリングやアンケートを通じて医師が評価してほしい事項や評価制度への不安を吸い上げ、可能な限り評価制度に取り入れる事によって医師の制度への理解や同意に繋がります。

診療科別・医師別の損益管理と上記で述べた評価の仕組みだけでは医師の行動や意識の変革への効果は十分ではないと考えられます。そのため、良好な実績を残す診療科および医師に対しては評価結果に基づいて金銭・非金銭報酬を含めた処遇の反映によって医師のモチベーションを刺激することが効果的です。

金銭報酬では本来の職務遂行の対価である基本給・年俸や業績反映の性格が強い賞与の変動、既存の報酬とは別にインセンティブを支給する方法等が考えられます。非金銭報酬では表彰や福利厚生等での処遇が考えられます。しかし、処遇への反映にあたっては、医師のモチベーション・満足に与える影響度合いも非常に大きいため。病院の目指す処遇の方向性や方針の再確認とともに慎重に検討する必要があります。
 

セミナー参加者の声(アンケート)

アンケートでは、効果的な診療科別・医師別の損益管理及び医師人事制度に対する強い関心を窺えるコメントが多数寄せられました。

「病院独自で診療科別の仕組みを構築したが十分に活用できていない。早期に改善を検討している。」
「診療科別・医師別の損益計算、医師人事制度は導入していないが、今後の検討課題だと思っている。」

デロイト トーマツ グループにおける今後の展開

デロイト トーマツ グループでは、病院の業績を確保・向上させるためには、適切な業績・損益把握の手法と病院業績に直結する医師のモチベーションを高める施策の両面が必要であると考えております。

今後も定期的に病院の業績・損益管理手法及び医師人事制度に関して、最新事例を踏まえたセミナーの開催を予定しております。

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