調査レポート

緊急アンケート:高齢者の保健事業と介護予防の一体的な事業が受ける影響

高齢者の保健事業と介護予防の一体的な事業推進への影響と今後の感染症対策を見据えた事業取組に係るWeb アンケート調査

COVID-19が全国市区町の「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な事業推進」にどのような影響を及ぼしているかについて、緊急Web アンケート調査を実施しました。自治体職員が住民に向き合いながら提供する公的医療福祉サービスの課題が見えてきました。

調査概要

我が国政府は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、本年4月、全国に緊急事態宣言を発出しました。緊急事態宣言はその後解除されたものの、感染拡大が第2波に移行し、現在においても政府及び地方自治体は止まらぬ感染者数増加と社会活動・経済活動の再開との間で翻弄され続けています。

こうした中、COVID-19は各地域の公的医療福祉サービスに様々な影響を与えており、特に感染リスクが高い高齢者への保健事業に支障が生じ始めています。Withコロナ社会では、感染対策のために積極的にテクノロジーを活用することで、安全かつ効果的に事業を継続する方法を考案することが急務となっています。

今回、デロイトトーマツヘルスケアでは、COVID-19が全国市区町の「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な事業推進」にどのような影響を及ぼしているかについて、第1波の最中に緊急Webアンケート調査を実施しましたので、結果の一部をご報告します。

※調査レポート詳細版は、回答にご協力頂いた自治体に限定してフィードバックさせて頂いております。

調査方法

調査対象自治体

村を除く1558市区町の高齢者福祉部門

調査項目

高齢者の保健事業と介護予防の一体的な事業推進に係る取組のうち、新型コロナウイルス感染症対策により影響を受けている事業(上位3つ)を挙げて頂き、以下項目について回答頂いた

影響を受けている事業の運用状況
  • 今後の事業方向性
  • 今後の事業推進におけるツール活用の方向性
  • 課題認識
  • 産官学連携状況

 

調査実施方法

Webアンケート回収方式

調査実施期間

令和2年6月(依頼状発送)~同年7月



アンケート回収結果

アンケート発送総数及び有効回収率は以下の通りでした。

  • 発送数 :全国市区町1558団体
  • 有効回収数 :204団体
  • 有効回収率 :13.1%

回答自治体の市区町の内訳

回答頂いた自治体団体の内訳は、
「政令指定都市」が3団体(1.5%)、「中核市」は18団体(8.8%)、「その他市」が110団体(53.9%)、「町村」が73団体(35.8%)でした。

高齢者の保健事業と介護予防の一体的な事業推進を実施している自治体は149団体(73.0%)、実施していない(今後実施予定)自治体は55団体(27.0%)でした。

 

 

調査研究事業のまとめ

 COVID-19により事業実施に影響があった事業の上位3つは以下の通りとなった。
1位
 通いの場等を活用した健康/普及啓発活動事業 
2位
 健康診断関連事業
3位
 フレイルや認知機能低下(MCI等)予防/早期発見関連事業

 

1位:通いの場等を活用した健康教育/普及啓発活動事業が受けた影響として、「交流要素が大きく3密を回避できない」が挙げられた。


2位:健康診断関連事業への影響として、「事業の延期」に加え「3密を避けて人数制限を行うことによりスケジュール調整が困難になる」「健康上の問題」「早期発見や治療が遅れる」が挙げられた。


3位:フレイルや認知機能低下(MCI等)予防/早期発見関連事業が受けた影響として、「高齢者の通いの場が中止されたことによりフレイル・認知機能低下となる高齢者が増加する」が挙げられた。


 事業の主管課の約半数は「高齢福祉課関連部署」で、うち約15%が「健康増進課と連携する事業に影響が出ている」と回答がみられた。

最も影響を受けた事業への対応については、約5割の自治体が「当該事業を延期している」という結果が示された。

 また同じく最も影響を受けた事業への対応について、約5割の自治体が「今年度の事業完了を見込んでいる」と回答した。

 最も影響を受けたと回答した事業において、見直しが必要だと感じている項目上位3つは「1位 実施体制」「2位 サービス提供方法」「3位 対象人数」であった。

 今後高齢者の疾病対策・健康増進事業を推進するうえで関心や重要性が高まっている内容としては、「既存事業のサービス内容の見直し」「医療職人材の増員」「ITツールの導入」等が見られた。


 医療職人材の不足については、「一体的事業に取り組むための医療専門職増員が必要であるが人材確保が難しい」ことを挙げる自治体が見られた。


 その他、「3密を防ぎつつ予防接種や検診を行う方法」「第2、3波が来た場合に再度事業の中止・延期・指示の連携を行う方法の検討必要性がある」との回答が見られた。


 予防接種に関して、成人用肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの一部公費負担の検討や新型コロナウイルスに関するワクチンが供給された場合に実施される「住民接種の予約・受付システムの導入検討」について挙げる自治体も見られた。

 IT活用に関して関心が高まっている内容は、「オンライン市民講座の導入・実施」「住民台帳・健康・医療・介護情報の一元化」であった。

 来期以降の事業計画策定にあたり予算の見直し等を考えている事業として、「通いの場等を活用した健康教育/普及啓発活動事業」を選択する自治体が最も多く、具体的な事業内容として、「可能な限りICTを導入し、接触感染のリスクを下げる」ことが挙げられた。

新型コロナウイルス対策による新たな取り組みとして、「住民に向けてラジオ・YouTube・ケーブルテレビ等を活用した自宅でできる体操番組の配信」「独自の学習プリント配布」「大学との官学連携事業協力により自宅でできる運動についての情報共有」を行う自治体が見られた。

デロイト トーマツ ヘルスケアでは、本年度も社会アジェンダについて自主企画調査を行い、タイムリーにフィードバックして参ります。
今後もご協力の程よろしくお願い申し上げます。

本調査研究に関するお問合せ先

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

柚木 大介|シニアマネジャー
湯澤 あや

E-mail : dthc_surveyinfo@tohmatsu.co.jp

 

※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。2020/08

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