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2020年診療報酬改定の概要と増収ポイント

2020年診療報酬改定の本丸は「働き方改革」です。2018年の診療報酬改定と比較して、インパクトは小さいと言われていますが、随所に重要なマイナーチェンジが施されています。本コンテンツでは、改定内容を(1)働き方改革、(2)地域医療構想の実現、(3)ICT活用の3点で整理しながら解説しています。また、今回の改定から病院が増収できるポイント、及び、今後の医療政策を見据えた診療報酬改定の方向性について考察をしています。

2020年診療報酬改定の概要(1)

  • 2020年の診療報酬改定における全体の改定率は▲0.46%であり、2016年から3回連続のマイナス改定になっている。
  • 診療報酬本体の改定率+0.55%に「救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応」+0.08%が含まれている。改定率に用途が明記されている例はこれまでの診療報酬改定で初めてと言われている。
  • 診療報酬本体の改定率内訳として、医科は+0.53%、歯科は+0.59%、調剤は+0.16%、薬価は▲0.99%であり、消費税財源と薬価の引下げ分で医科・歯科・調剤のプラス改定を保っている構図は2018年の改定と同様である。

 

図1:診療報酬改定率の推移(医科・薬価・全体改定率)
出所:厚労省保険局医療課「平成30年診療報酬改定の概要」(2018年3月5日)、第447回中央社会保険医療協議会「令和2年度診療報酬改定に係る検討状況について(説明)」(2020年1月14日)より作成

2020年診療報酬改定の概要(2)

  • 近年の診療報酬改定においては、4つの基本方針が定められている。基本方針の中でも1番目が重点課題と位置付けられており、その時々で重要な政策が掲げられている。
  • 「働き方改革」は2018年に基本方針として新設され、2020年には重点課題に格上げされている。
  • 2016年~2018年の重点課題は「地域包括ケアシステム」であったが、2020年は「働き方改革」と入れ替わった。まさに働き方改革元年の診療報酬改定と言える。

 

図2:診療報酬改定における基本方針の変遷
出所:社会保障審議会医療保険部会「平成28年度診療報酬改定の基本方針」、「平成30年度診療報酬改定の基本方針」、「令和2年度診療報酬改定の基本方針」より作成

2020年診療報酬改定の概要(3)

  • 2020年の診療報酬改定の内容を3つの視点(1.働き方改革、2.地域医療構想の実現、3.ICT活用)に整理しているが、いずれの視点においても2018年診療報酬改定の延長線上で細部が見直されたと言える。
  • 働き方改革については、2018年改定に引き続いて、医師・看護師の補助者配置を評価する点数が一律で引き上げられた。また、2018年からカンファレンス等で情報通信機器(ICT)の活用が認められるようになったが、2020年の改定では、より活用し易くするために要件が見直された。さらに、人員配置の柔軟化、業務の簡素化等、医療現場の声に応えるような改定内容となっている。
  • 地域医療構想の実現については、2018年改定の目玉であった入院料改革の続きとして、アウトカム評価による施設基準(重症度、医療・看護必要度、在宅医療に係わる実績、リハビリ実績指数等)のハードル引上げや見直しが行われた。また、総合入院体制加算における施設基準緩和の条件として、「地域医療構想調整会議の合意」が導入された点は注目するべきである。
  • ICT活用については、2018年に新設されたオンライン診療料の算定要件が見直された(対面診療期間の短縮、30分以内に受診可能な体制の緩和、慢性頭痛・ニコチン依存症の適応)。また、2020年からオンラインによる服薬指導も解禁されたため、外来患者は受診から薬の受け取りまで、完全に自宅で行える環境が整備された。

 

表1:2020年診療報酬改定の要点
出所:第451回中央社会保険医療協議会「答申について 総-1」(2020年2月7日)より作成

2020年診療報酬改定の増収ポイント

  • 2020年診療報酬改定における増収ポイントとして、救急医療管理加算に注目する。救急医療管理加算とは、入院時に重篤な状態の患者に対して算定が可能であるが、これまでは重篤な状態の判断基準が明確ではなく、査定を受ける水準も地域差があるため、算定の積極性は医療機関(又は地域)で大きく異なっていた。2020年の改定において、重篤な状態に数値的な基準が定められたことにより、適正な患者に対して、適正な算定ができるようになると期待されている。加算1・2ともに点数が引き上げられているため、漏れなく算定できる体制が求められる。
  • 新設された加算や指導料は、厚生労働省が推進したい医療政策と密接に繋がるために、積極的な算定を目指すべきである。

 

地域医療構想の実現に向けた診療報酬改定の方向性

  •  医師の時間外労働規制の開始は2024年、地域医療構想を実現する期限は2025年であり、2022年以降も暫く診療報酬改定の方向性は変わらないと予測される。また、今年から情報通信技術5Gが導入されることにより、ICT活用はテクノロジーの牽引によって、飛躍的に進む可能性がある。
  •  2018年~2020年の診療報酬改定は「地域医療構想の実現に寄り添う改定」と言われているが、2022年・2024年の診療報酬改定もコンセプトは同じであろう。今回の改定によって、高度急性期~慢性期の入院機能を担う医療機関に求められる役割がより明確化されたが、今後もアウトカム評価による施設基準のハードルは引き上げられる方向に動くであろう。また、医療機関の統合再編にあたっては、診療報酬上における要件緩和の範囲が拡大される可能性がある。これからも地域医療構想で求められる役割に沿って、経営努力を続けられる医療機関が診療報酬で報われるだろう。
  • 2020年初から流行した新型コロナウィルスは、オンライン診療の初診の取扱い等で、既に診療報酬改定に影響を及ぼしている。今後の診療報酬改定においても、感染症対応・有事の事業継続等で様々な影響を及ぼすことが予測される。

 

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は掲載時点のものとなります。2020/05

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