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医療RPA導入とリスク管理

リスク管理を見据えたRPA導入検討のポイント

RPAを先行導入している民間事業会社では、効率化を最優先するが故に導入後のリスク管理が行き届かず、RPAの統制が効かなくなってしまう状態、いわゆる「野良ロボット」化現象が問題となっています。今後導入を予定されている医療機関が同じ轍を踏まないためには、導入時の段階で導入後のリスク管理体制を見据えた計画策定が重要と言えます。そこで、今回はリスク管理を見据えたRPA導入検討のポイントを整理します。

はじめに

民間事業会社に続き、医療分野におけるRPA(Robotic Process Automation)の導入事例が増えています。しかし、先行導入している民間事業会社では、効率化を最優先するが故に導入後のリスク管理が行き届かず、RPAの統制が効かなくなってしまう状態、いわゆる「野良ロボット」化現象が問題となっています。そのような状況を鑑みると、今後導入を予定されている医療機関が同じ轍を踏まないためには、導入時の段階で導入後のリスク管理体制を見据えた計画策定が重要となります。そこで、今回は、リスク管理を見据えたRPA導入検討のポイントを整理します。

RPAの特徴及び医療機関での導入について

まず、RPAというものは、設定された業務処理方法に従って、正確・迅速、かつ24時間365日対応できるという特徴を有しています。コスト面でも既存のシステム改修と比較すると、安価で専用のソフトウェアを購入できる場合が多くみられます。そうした特徴を理解し、親和性の高い業務(とりわけ、従前から存在する「定型的だが時間を要する仕事」)に適用すれば、職員がより付加価値の高い仕事に集中でき、生産性が高まるとして、民間事業会社では導入が進んでいます。

医療機関では専門スキルを持った様々な職種の職員が大勢働いています。昨今、医療従事者についても長時間労働が課題となっており、職員が「定型的だが時間を要する仕事」から解放され、より付加価値の高い仕事に集中することが求められていますが、民間事業会社ほどにはRPA導入が進んでいないのが現状です。その理由として、RPAが適用できない紙媒体を介する業務が多く存在することやRPAに関する理解が浸透していないことが考えられます。

 

民間事業会社でのRPA導入後の状況について

さきほど、医療機関でのRPA導入は民間事業会社ほどには進んでいないと申しましたが、理解については徐々に浸透してきており、今後はRPAの特徴を踏まえ、導入する医療機関が増えると予想されます。その際に、先行して導入している民間事業会社で生じている導入後の課題を理解しておくことは非常に有益なことと考えます。

RPA導入は工数削減による業務効率化に主眼が置かれることが多く、適用できる業務をRPAが代替し、工数削減できた時点で目的を達成したと考えるケースが多くあります。この場合、人が実施していた業務をRPAが代替することで、従来は業務のダブルチェックを実施していた部分についてもRPA代替で完結してしまい、業務が適切になされているかのチェックを怠ってしまうといったことが多く生じています。また、RPA導入後に複数の関与者がRPAへの業務のプログラミングを実施することで、どの業務をRPAへの置換えを進めているかの整理が行き届かなくなってしまう事態も生じています。このようにRPAの統制が効かなくなってしまう状態が「野良ロボット」化現象という言葉で表現され、問題として顕在化しています。

 

リスク管理を見据えたRPA導入検討のポイント

そうした「野良ロボット」化現象によってRPAの統制が効かなくなる事態はもとより、RPA導入がどのような影響をもたらすかという観点から、言い換えると、リスク管理を見据えたRPA導入の検討はどうあるべきでしょうか。ポイントは、「業務の見える化」と「RPA管理の集約」の2点です。

1.業務の見える化

1つ目のポイントは、RPAに代替する業務を見える形で整理することです。この整理に関しては、周辺業務も含めて業務フロー図を作成し、見える化することを推奨します。ただ単に対象業務を抜き出すのではなく、その前後の業務やチェック体制、システムとマニュアルの業務の流れを俯瞰して見ることで、対象業務をRPAに置き換えた場合にどのように内部統制を効かせるのかが明確になりますし、RPA導入後に「野良ロボット」化していないかをチェックするにも有効です。さらに業務フロー図を作成するメリットとして、RPAに代替する業務の選定段階で、RPAに置き換えた方が良いのか、そもそも業務改善が必要なのか、システム改修まで実施した方が全体では効率的なのか、といった整理にも有用であることが挙げられます。

例えば、経理業務で担当者が仕訳伝票を起票して、上長が承認する一連の業務が存在するとします。この場合には、担当者が仕訳伝票を起票する際に、誤った金額で計上するリスクや重複して計上してしまうリスク等があります。上長がチェック・承認することで、このリスクを軽減するというのが、内部統制の考え方になります。仮に、担当者が仕訳伝票を起票する業務をRPAに置き換えるのであれば、担当者が起票の元資料を入手する過程も含めた一連の業務を業務フロー図で見える化することで全体像を把握できます。この場合、置き換えた後に誤った金額で計上するリスクは低い(∵通常、RPAでは元資料からの転記は正確に実施されます)ですが、重複して計上してしまうリスクは依然として高い(∵元資料が2回提出されれば2回計上してしまう可能性があります)ため、重複計上のリスクに重点を置いて、上長によるチェック・承認は残すべきといった検討が可能になります。

2.RPA管理の集約

2つ目のポイントは、RPAのプログラミングや管理を行う管理者を絞ることです。前述のように、先行している民間事業会社では、複数の関与者がRPAのプログラミングや管理を行うことで、RPA対象業務を管理することができなくなり、「野良ロボット」化する事例が生じております。その意味において、全体を統括するIT部門と各業務部門でそれぞれRPA管理者を固定し、必ず管理者を通して管理・チェックをする仕組み作りが重要であると考えます。推奨される各部門・担当者の役割は下記のとおりです。

IT部門:RPAガバナンス担当を設置し、全社共通のガバナンスルール・体制を整備し、各部門への教育を実施する。RPA運用担当者は、各部門から上がった申請も含め、全社のRPA機能を台帳管理する。

各業務部門:部門毎にRPA管理者を選定し、その管理者の管理のもとで、部門内でのRPA機能の実装と運用を行う。各部門でRPAの実装を行う場合は、必ずIT部門の運用担当者に申請する。

最後に
以上のように、RPA導入時にその後の管理体制も構築することで、よりRPAと長く上手に付き合っていくことができると考えます。

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