ひきこもり支援における支援者支援のあり方に関する調査研究事業報告書

調査研究事業の背景・目的

ひきこもり支援の対象者が抱える課題は複雑・複合化していることが先行研究等において明らかになっており、それに伴い、ひきこもり支援者には、長期的な視点での支援が求められます。一方、支援の長期化により、支援者自身が疲弊し、大きなダメージを受けるといった課題もあります。

また、ひきこもり相談支援は、より住民に身近なところで相談ができ、支援が受けられる環境づくりを目指して、市町村において「ひきこもり地域支援センター」の設置やひきこもり相談窓口の明確化、市町村プラットフォームの設置が図られています。市町村におけるひきこもり支援の拡充を効果的に進めることを考えても、ひきこもり支援者自身の支援に資する仕組みづくりが必要不可欠です。

そこで、本調査研究事業では、ひきこもり支援の拡充を後押しすることを目指し、①ひきこもり支援業務において支援者が抱える困難さ（ストレス要因等）、②ひきこもり支援担当者への支援として行うことが有意義である取組の２点を各種調査により整理し、他分野の取組も参考にしながら、ひきこもり支援分野における支援者支援のあり方を検討してとりまとめました。

調査研究事業の内容

本事業においては、①検討委員会の設置・開催、②情報収集（文献調査）、③ひきこもり支援担当者へのアンケート調査、④ひきこもり支援担当者へのヒアリング調査、⑤報告書の作成といった５つの活動を行いました。

アンケート調査は、ひきこもり支援分野における支援者支援のあり方を検討するために、①ひきこもり支援業務において支援担当者が抱える困難さ、②ひきこもり支援担当者への支援に係る取組の実施状況、③支援者支援に係る取組のニーズ・課題等を把握することを目指して行いました。また、ヒアリング調査は、ひきこもり支援分野における支援者支援のあり方を考える上で参考にするため、ひきこもり支援担当者への支援に資する実際の取組を把握することを目指して行いました。

まとめ

本事業のアンケート調査やヒアリング調査の結果をもとに整理したところ、ひきこもり支援の支援者が業務上で抱える困難さの背景に、ひきこもり支援そのものが持つ難しさや大変さ、相談員の雇用の不安定さ、ひきこもり支援業務に関する社会や組織の不理解などがあり、その中で業務を行う結果、場合によっては背景にある要因が相互に作用しながら、種々のストレッサーが生じたり、資源やモチベーションが得られなかったりすることで困難さが生じていることが考えられました。そして、そのような困難さを軽減したり解消したりするための方策として、ひきこもり支援の難しさ等を組織が理解し、相談員が単独で負担や責任を抱え込まない体制・環境づくりや、研修やケース検討会、スーパービジョンを受けられる仕組みづくりが採られていることが分かりました。

なお、この体制・環境づくりと仕組みづくりを一体的に実施することで、更なる効果が出ることが期待できます。

今後は、ひきこもり支援の支援者が業務上で抱える困難さを軽減したり解消したりするための取組を更に整理することで、ひきこもり支援者への支援がさらに充実することが望まれます。その際、政策と実践の方向性が一致しない場合には失望感が蔓延し、現場は疲弊するといった点、また、支援者の雇用や生活の不安定さが基幹的なものとしてあるといった点に留意する必要があります。個人の行動変容を促すといったミクロの視点のみではなく、体制や環境、仕組みを変えるといったマクロ視点も持ってアプローチしていくことが重要であると考えられます。