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医療機関でのスマートデバイス導入にあたっての留意点

医療機関におけるマートデバイス導入時のポイント

我々の生活に普及したスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスは、医療機関でも活用が広がっています。患者情報の即時参照、患者急変のアラート受信等をはじめとして多くの活用可能性がある一方で、モバイルネットワークの整備、セキュリティ上の問題など多くの留意しておくべき点があります。医療機関におけるスマートデバイスの位置づけ、モバイルネットワークの整備、運用上の留意点を解説します。

医療情報システムにおけるスマートデバイスの位置付け

最初に、医療情報システムの中でスマートデバイス(「スマートデバイス」の定義は定まっていませんが、本稿ではスマートフォンやタブレット端末を総称するものとして用います。)がどのように位置づけられるかをスマートデバイスの特徴から考えたいと思います。

皆さんがお手持ちのスマートフォンの特徴を考えていただくとわかると思いますが、スマートデバイスの特徴として次の点が挙げられます。

【スマートデバイスの特徴】

◆向いていること
 • 持ち運びしやすく携帯しやすい。
 • 情報をすぐに参照できる。
 • 短い文字数ならば手軽に入力できる。
 • データ通信だけでなく音声通話も可能である。
 • 個人のログを取得しやすい。

◆向いていないこと
 • 長文を書くのには適していない。
 • 大量の情報を閲覧するのには適していない。

こうしたスマートデバイスの特徴から病院情報システムにおけるスマートデバイスの役割を考えると、診療情報や複数のオーダ等の長文・大量・複雑な情報をデスクトップから入力・閲覧するのに適した電子カルテやオーダリングシステム等の基幹システムに対して、スマートデバイスは少量の診療情報を即座に伝達・確認できる点がすぐれています。

つまり、病院情報システムにおいて、スマートデバイスは電子カルテ等の基幹システムを補完し、さらなる情報活用を図るためのツールとして位置付けられます。

 

図1 基幹システムとスマートデバイスの関係イメージ

スマートデバイスの主な機能

スマートデバイスは、各医療機関で様々な活用がされ機能も様々ですが、主に下記のような機能をもっています。

(1)会話・連絡:

通話、ショートメッセージ、メール、チャット等の会話や連絡。

(2)入力:

バイタル情報等の現場での入力、褥瘡等の観察部位の撮影、生体モニタ等の医療機器からの自動入力。

(3)閲覧:

診療記録やオーダの確認、診療ガイドラインや薬剤の効用の閲覧。

(4)安全管理:

リストバンドやバーコード読み込みによる患者・薬剤・オーダの確認、医療機器と連携することで患者急変のアラーム受信。

(5)その他:

医療機器の使用状況・所在管理、患者への外来待ち時間や順番等の案内。

導入タイミング

前述したようにスマートデバイスは電子カルテ等の基幹システムを補完するものであるため、基幹システムの整備後にスマートデバイスの導入が検討されることが多いです。

特に大学病院や専門病院、先進的な中核病院から導入され始めていると感じています。また、スマートデバイスの導入は無線環境の整備や病院情報システムの変更が伴うことから、建て替え時やシステム導入・更改のタイミングでスマートデバイスを導入する医療機関様が多いです。

 

必要となるシステム・ネットワーク環境

スマートデバイスの導入にあたっては各種インフラ環境の整備が必要となりますが、利用する機能に応じて整備が必要となるシステム・ネットワーク環境が異なってきます。スマートデバイスの機能に対して整備が必要となるシステム・ネットワーク環境は大きく次のように分類されます。

【スマートデバイスの機能分類と整備が必要となるシステム・ネットワーク環境】

(1)グループウェア:

メール、スケジュール管理、文書管理、掲示板等の組織内での情報共有を行うグループウェアの機能を利用する場合、診療情報を扱う医療系システムとは異なる内部システムをスマートデバイスで利用できるよう整備することが必要となります。

(2)ナースコール連携、診療情報の入力・参照、患者状態モニタ、その他アプリ:

ナースコールや医療機器モニタからのアラート受信、診療情報の入力・参照する機能等の看護情報や診療情報を扱う場合、看護支援システムや電子カルテ等の医療系システムの整備が必要となります。

(3)内線通話:

内線通話を行う場合は、電話線を用いて電話と電話を接続する構内電話交換機(PBX:Private Branch Exchanger)を、データ通信と音声通信の両方をIPネットワークで接続するIP-PBXに置き換えて内線通話ができるようにする場合が多いです。

(4)外線通話:

外線通話を行う場合は、携帯電話網を利用するため携帯電話通信事業者と協力して院内に基地局を設置する等の整備が必要となります。

スマートデバイスを利用するにあたって上記のようなシステム・ネットワーク環境を整える必要がありますが、いずれにしろ無線環境の整備が必要となってきます。次に無線環境の整備について述べたいと思います。

図3 スマートデバイスの機能と関係するシステム・ネットワーク環境

無線環境の整備

医療機関における無線LANや携帯電話網の整備・運用については、電波環境協議会より公開されている「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き」(以下、「電波利用の手引き」とする。)が参考になります。

医療機関では、X 線検査室やMRI検査室等で内装壁や天井に電磁シールド等の電波を遮へい率が高い部材が用いられることが多いため、無線環境の整備では医療機関の建物の特徴を考慮することが特に必要となります。

無線LANの導入にあたっては、無線 LAN 利用者の動線等に基づく AP(アクセスポイント) 配置、配線、遮へい物の位置等の確認が必要となります。また、病院の建築・改修では、無線LANが適切に使用できるよう建築設計・施工がなされることが必要となってきます。そのため、システム導入計画より以前の病院基本計画や建築設計の段階からネットワーク事業者による無線環境の調査・検討を行うこともあります。

携帯電話網の導入にあたっては、医療機関内の基地局設計を適切に行うことが必要となります。その際、携帯電話端末は受信レベルが低いと送信電力を多く使い医療機器へ影響する可能性が高まるため、携帯電話端末の受信レベルを一定以上に調整することが必要になってきます。

無線LANと携帯電話網のどちらにおいても、無線環境の整備においては事前に無線LANネットワーク事業者、携帯電話通信事業者、病院建設業者、医療機器設置事業者等との間で調整・検討が必要となります。

電波利用の手引きでは、無線環境導入の際の対応フローを下記のように示しています。

スマートデバイスの導入・運用における留意点

スマートデバイスの導入・運用は、端末およびシステム・ネットワーク環境を整える以外にも規定類の整備、不具合時のサポート体制等の様々な準備が必要となります。当法人のこれまでの調査・経験から、スマートデバイスの導入・運用の際に主に検討・確認すべき点を下記に示します。

図5 スマートデバイスの導入・運用にあたり検討・確認すべき事項

最後に

スマートデバイスを活用している医療機関は徐々に広がっていますが、いまだ導入実績が多くないため様々な課題が存在している状況です。

スマートデバイスを導入したいが何から始めればいいのか分からない、日常業務の中でここまで考えるのは難しいといったお悩みや、最新の知見を取り入れて導入を進めたいといったご希望がありましたらぜひ一度お声がけ下さい。

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