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コンサル会社との上手い付き合い方のヒント

~医療情報システムの導入を例に~

コンサルティングサービスは、製造業や一般的なサービス業と比べてイメージがつき難いものだと思います。ここでは、有限責任監査法人トーマツ(以下「トーマツ」)がご提供している医療情報システム導入支援サービスを例に、具体的なコンサルティング事例をご紹介します。

医療情報システム導入時になぜコンサルタントが必要とされているのか

病院のシステムは、電子カルテ、画像や文書のファイリングシステムなど部門共通で利用されるシステムから、各種検査、給食のシステムなどの各部門の業務に特化したシステムまで、多数のシステムが組み合わさって構成されています。その数は、一般的な急性期の中規模病院で、およそ50種類以上にも上ります。さらに、これらのシステムは5~7年に1回入れ替えられることが一般的です。

システムの入れ替えには病院側で主に以下の作業が必要となり、実施には高い品質を担保できる労働力が必要になります。また情報部門の組織上の扱いや、正規職員数は病院によって様々で、同じ中規模の病院でも1~4名程度のバラつきがあります。近年の病院の経営環境から、日常的にゆとりを持った職員配置ができる病院は減っていますので、少ない人数で既存の業務と入れ替えに掛かる業務を両立することは、職員に大きな負荷を掛けることになります。また、病院職員にとっては5~7年に1回の出来事なので、システムの入れ替えに関する経験を積むことは難しいという事実があります。そのため毎回手探りで進むことになり、新システムが動きだした後に振り返るとベストな選択肢ではなかったと感じる点が出てくることもあるかもしれません。

これらの事情から、複数の病院でシステム導入を専門に行うコンサルタントにより、業務の一部を代替するサービスが生まれ、コンサルティング会社各社から提供されています。

◆ システムの入れ替えに掛かる病院側作業

  1.  システム会社の選定まで
    ・ 各システムに関する情報収集(資料収集、デモへの参加、病院見学など)
    ・ 各システムの利用に掛かる費用の把握(見積もりの提示依頼と比較整理、妥当性の確認)
    ・システム入れ替えに伴って解決したい課題の洗い出し、および今後取り組みたい医療の方向性の確認(各部門へのヒアリング)
    ・各システムに求める機能の一覧化(要求仕様書の作成)
    ・システム会社へ提示する提案要項の作成
    ・病院職員がシステム会社各社の提案を評価する際の基準の作成、評価委員の選定
    ・ 公示(公的病院の場合のみ)
    ・システム会社からの質疑に対する対応
    ・システム会社からの提案資料の整理、比較のための基礎資料作成
    ・システム会社からのプレゼン日程の調整、運営(選定にプレゼンを含むとした場合)
    ・評価委員の意見のとりまとめ、各システム会社の評点の算出
    ・契約手続き
    ・システム会社が利用する場所の確保(院内に適切なスペースがない場合プレハブ建築等)
  2. . システムの構築段階
    ・ プロジェクトを実施するための計画書の確認・承認
    ・打ち合わせメンバーの選定、場所の確保
    ・システム会社との打ち合わせ実施、議事録確認(各オーダ、部門システム毎に平均4、5回の打ち合せ)
    ・部門間での運用調整
    ・端末やプリンタの配置確認
    ・新システムで利用するマスタの作成
    ・操作研修の計画作成、周知、受講
    ・現行システムから新システムへのデータ移行範囲の確認
    ・新システムでの運用リハーサルのシナリオ作り、参加メンバー選定、必要備品の準備、実施と反省会
    ・システムの切り替えを行う際の詳細スケジュールの確認、システム停止前後の運用確認、周知
    ・システム切り替えが失敗した場合のリスク確認・管理
  3. システムの利用開始後
    ・問い合わせや不具合の情報の管理、対応方針決定
    ・システム会社選定時に作成した要求仕様書を満たすシステムが構築されているかのチェック
    ・システム会社への費用の支払い 

サービス提供の例

ここからは、実際の事例を挙げて、コンサルタントが各病院の課題に対してどのように関わったかを具体的にご紹介したいと思います。

ケース1:病院職員のマンパワー不足
◆病院プロフィール
中規模の一般急性期の病院です。情報部門は用度課の所管で、独立組織ではありません。部門の長は用度課課長が兼務しており、システム関連の実務を行う正規職員は1名です。現行システム保守のためのルーチン業務や、職員からの問い合わせの一次受けは、委託業者に任せています。
院内の約50システムのうち殆どが入れ替えの対象になっています。現行システムの構築時に対応した職員は課を離れており、当時の話を時折聞くことは出来ても、実務は難しい様です。

◆課題
前述のとおり、システムの入れ替えに掛かる情報部門の作業は、システム会社の選定前だけに限定しても意外と多いものです。対応する職員にシステム構築のひと通りのプロセスの経験があり、かつシステム範囲が限定的でない限り、1名での対応はかなり職員に負荷を掛けることになるため、病院としてもリスクを抱えることになります。

◆コンサルタントとの業務分担
病院側の要員が不足しているため、トーマツからはシステムの入れ替えに掛かる経験豊富なスタッフ2名と、その管理を行うマネージャーの3名体制で対応致しました。スタッフがそれぞれ週1.5~2日程度、マネージャーが週1日程度の実務を行う想定です。またこの例では、システム会社決定後の各部門システム会社の管理は電子カルテシステムの会社に行わせる想定とし、トーマツはシステム会社との契約締結までのご支援をさせて頂きました。構築業務は電子カルテ会社のプロジェクトマネージャーを中心に行われる予定です。
情報部門の長
病院幹部への報告や橋渡し、職員への周知
情報部門職員
打ち合わせの日程調整、現行システムの資料準備、トーマツ作成資料の確認・議論
トーマツ
手数と知識が必要な作業(各部門へのヒアリングとまとめ、新システムの候補となるシステム会社とのやり取りや見積徴収・まとめ、各種資料案の作成、主要な会議の進行・助言・議事録作成、情報部門職員に対する大規模なシステム展示会のアテンド etc)


ケース2:職員にノウハウを移植して欲しい
◆病院プロフィール
同じく中規模の一般急性期の病院です。情報部門は独立部門ですが、室長は医事課の課長が兼務しています。システム調達に向けてシステム専任の職員を1名補充し計3名にしましたが、システムの入れ替えに掛かる業務の経験がある職員はいません。現行システム保守のためのルーチン業務や、職員からの問い合わせの一次受けは委託業者に任せていますが、現場の医療職からは情報部門の職員指名で電話が掛かってくることも多々あります。コスト削減の指示が院内に出ており、システム入れ替えに掛かる費用を圧縮したい希望もあります。

◆課題
作業面については病院職員でカバーできるため、コンサルタントには、何をどう進めると良いか職員に対してアドバイスを行うことが求められていました。また実務を若い職員が行うことで、プロジェクト費用を安価に抑えかつ腹落ち感のあるノウハウを蓄積したいとお考えでした。また公的病院であることから、プロジェクトを公正に進めていることを、第3者の監視の下とすることで対外的にアピール出来るメリットも感じられていた様です。

◆コンサルタントとの業務分担
この例では一部の部門システムを電子カルテと分けて調達したため、別調達のシステム会社の管理は病院側に求められていました。トーマツからは、プロジェクト開始からシステム稼動までの約2年間、マネージャーとスタッフの計2名体制で対応し、業務の進め方やポイントを随時お伝えしながら進捗管理をしていく関わり方をさせて頂きました。具体的には、重要な会議・イベントへの参加、事務局会議での進捗確認に加え、電話/メール等での問い合わせサポートなどで、平均それぞれ週2日程度の業務実施になりました。また、現場の医療職からシステム専任職員に突発的な依頼が入ったためにシステム更新業務の作業時間が取れない場合にも、柔軟にフォローが出来る体制を取りました。

最後に

コンサルタントとの付き合い方は、病院の課題に応じてオーダーメードです。コンサルタントは色々な病院や役所に出入りしていますので、数ヶ月に1度くらいの頻度で情報交換することは、お互いに組織内にない視点の違う話を聞く良い機会になるかと思います。もっと気楽にお声掛け頂きたい、というのが我々の思いです。
本記事が皆様のプロジェクト成功に少しでもお役に立てれば、幸いです。

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